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12

どうして彼がここにと思うと同時に、ここは彼の実家であることに気づく。


とにかく私はこの場を立ち去る為、無表情を取り繕って令嬢のお辞儀を取る。


「お邪魔しております、フェルナンド様。御前を失礼します」


久しぶりの動作は上手に出来たか不安だが、履きなれない高さの靴で足早に彼の脇を過ぎ去ろうとした。


しかし、左足の踵が着地したとたん、ヒールのが左に傾いた。

ぐきりと音がしそうな状態に足首が曲がり、フェルナンド様の胸に体が倒れこむ。


「ローザリア!」


勢いよくぶつかった私をフェルナンド様は受け止めてくれ、それ以上倒れないように片腕を取って支えてくれた。


「申し訳、ありません」


そっと彼の胸を自由な手で押し、自立しようと試みるがそれは叶わなかった。

痛みで左足に力をかけることが出来ず、再度よろめいて彼の腕の中に体を預ける形になる。


足を挫いたらしい。

困ったことになったなと考えるより先に、体が急にふわりと中に浮く。


気づけば、彼の手が私の背中と膝裏に当て、私を持ち上げていた。


あまりの驚きに声も出ず、落とされたら怖いという恐怖から、私を抱いて歩く彼のシャツを握り締め大人しくしていた。


部屋の中央に設置されている2人は雄に座れるソファに優しく降ろされる。


そして、フェルナンド様は私の左足の靴を脱がし、そっと足首に触れた。


「いたっ」


私が反応を示すと、彼も同じ痛みを感じるような顔になる。


「ちょっと、待っていてくれ。冷やすものと薬を持ってくる」


こくりと私が首だけを動かすのを見た彼は、そのまま部屋の外に出て行った。


彼がいなくなると、急に色々なことが頭を駆け巡る。


会いたくないとか言って会ってしまえば、こんな状況になるなんて、とても気まずい。

どんな顔をして彼に接すればいいのだろう。

今の状況で、彼の行為を無碍にはできないし、かといって嬉々として頼るのも憚られる。


そして、部屋に戻ってきた彼の処置を、複雑な気持ちのまま黙って受けた。


包帯を巻く為か、彼の太股の上に私の足が乗せられた。

つまり、フェルナンド様の太股を私が足で踏みつけているような形になる。


あまりの自体に、おもわず足を持ち上げようとするが、彼の手が私の膝に触れ、そっと押さえつけた。


「君は怪我人なんだから、大人しくしているんだ。いいね」


そういわれてしまうと私は、頷くしかなかった。


優しい手つきで薬を塗られ、包帯が巻かれていく。

その間、フェルナンド様も私も一言もしゃべらなかった。


治療が終わったと感じてからも、彼は私の足を触ったまま動かない。


「あの、そろそろ放していただけませんか」


遠慮がちに声を掛けてみる。


「なぜだ?」


ええっ?!

なぜって言われても。


「わ、わたしは、先日お伝えした通り、あなたにもう会いたくなどないし、こうして触れられるのも」

「俺は、会いたかった。君に触れたくて堪らなかった」


その言葉に、私の胸が跳ねる。


「でも、そうすることで君に更に嫌われるのが怖かった」


彼が恐れる?

私に嫌われることぐらいで?


だって、私たちは、傷つけた彼の治療する側とされる側というそんな関係だった。

私は会いたくて苦しかったが、もう繋ぐものがない私に嫌われたとして、何か問題が彼にはあるのだろうか。


「こうして会えて分かったんだ。ローザリア、俺には君が必要なんだ」


思わず見たフェルナンド様の顔は苦しげに歪んでいた。


「胸が、痛いんだ」


胸が、痛い?


そう頭の中で復唱して、はっと思いついた。

もしかして、さっき私が勢いよく倒れこんだから?


「あの、どういう風に痛むのですか」


恐る恐る聞いてみる。

するとフェルナンド様は苦しげに握り締めた拳を胸に当てた。


「酷く締め付けるように痛むんだ。苦しくてたまらない」


……大変だ。


これはもう、治療を必要として頼ってくれる彼には悪いが、私の手には負えない事態に達している。今すぐにでも、お医者様に見てもらった方がいい。


「フェルナンド様、病院へ行きましょう」

「びょういん?」

「あなたはご自身で思っていらっしゃるより、胸の傷は重症です。今すぐ、お医者様へ行ってください」


私の言葉を聞いたフェルナンド様は暫らくぽかんとしていたが、途端叫びだした。


「っああああ! もう、君という人は!」


彼は、太股に乗っていた私の足をそっと下ろし、座っている私を囲むように、両手を背もたれに置いた。


「そうじゃない。胸が痛いのは君のせいだが、違うんだ」


ぐいと顔が近寄る。


「いいか、今度はちゃんと聞いてくれよ。わかったら、首を振るなり頷いてくれ」


私はこくこくと頷いた。


「俺は胸が痛いと言ったね」


こくり。


「それは、君を想うと痛いんだ」


ん?

私は首を傾げる


「わからないか?君が、好きなんだ」


え?


「もしかして、聞こえなかったのか?」


彼の言葉に動けない。


「好きだなんだ、ローザリア」


これは夢なのだろうか。

だとすれば、とても自分に都合のいい夢だ。


目の前の彼は、不安そうに私を見つめている。


「わかってくれるまで、諦めない。俺は君が好きだ」


そういって、彼は私の額にキスをした。


「今日の君は落ちかないくらい、特別綺麗だ」


再び、別の場所にキスが落ちてくる。


「この大きな瞳も好きだ」

「妖精みたいな銀の髪も神秘的で好きだ」

「赤く染まる頬も可愛いくて好きだ」

「耳だって食べてしまいたいくらい好きだ」

「首筋にキスしてもいい? 好きだよ、ローザリア」


睦言の度にその場所へ優しいキスが落ちてくる。


「なぁ、全部ちゃんと聞こえていたか?」


私は夢うつつでこくりと頷く。

フェルナンド様がよかったと微笑む。


「じゃあ、復唱だ。俺は、ローザリアが好きだ」

「フェルナンド様は、私が好き」


よく出来ましたというように、頭部にキスをされた。


「君の答えを聞かせて欲しい。君は、俺のことをどう想っているのか」


真剣な表情のフェルナンド様が私を見下ろす。


「フェルナンド様、わたしは・・・」


その瞬間。

バンっと入り口の扉が勢いよく開く。


「フェル! 愛しのレオナルド叔父さんが来た、ぞ。って、あっ、悪りぃ、邪魔しちまったか?」


突然の訪問者の、王立騎士団の総団長であるレオナルド様が、私たちを見てニヤリと笑った。


「叔父様、待ってくださいと、あっ」


続いて、やって来たキャロル。

極めつけにフローラが、ひょっこり顔を覗かせる。


「キャロルお姉様どうしたのです? あっ」


三者三様のなんともいえない雰囲気のまま、ひと時、私たちは一枚の絵のように固まったのだった。

ローザリア劇場

************

◆レオナルド meet おじさん嫌いフローラ

フロ:「始めまして、私フローラ。好きなタイプは25歳以下。

     25歳以上の男性は半径1Mは、進入禁止です」

レオ:「おっ、可愛い嬢ちゃんだな」(なでなで)

フロ:「警告、進入禁止です」

レオ:「よーしよしよし」(なでなで)

フロ:「排除モード移行。目潰しっ!」

レオ:「ぐぉほっ!?」

キャ:「叔父様?!」

レオ:「俺は、永遠の20歳だZE・・・ガク」

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