幕間 sideレオナルド 後編
当日連続投稿です。
まず、くじ引きの景品として、フェルナンドとの1日デート券を特等として用意した。
次に、姪のキャロルを巻き込む。
ダーランド本宅に上がり込んで、キャロルと茶を飲む。
「フェルのヤツが熱を上げてる女がいるんだって?」
「ええ、研究室の後輩なのですが」
「どうせ、下らないことをアレコレ考えちまって、手出しできてないんだろ」
キャロルは、なんとも言えない顔でうなずいた。
「あと、その子自身も、問題を抱えている、か?」
「もしかして、」
「悪いがちょっと調べさせてもらった。返済期限が迫った借金があるんだろ」
「ええ、わたくしも力になりたいんですが、彼女が頑として受け入れてくれなくて」
そこで、俺はニヤリと笑みを浮かべた。
「キャロル、兄貴の恋と彼女の問題。一気に解決したくないか」
キャロルに伝えたあらすじは、こうだ。
騎士団の祭りの余興でくじ引きがあって、そこに『フェルナンドとの1日デート券』を特等の品として用意する。そして、キャロルが、ローザリアをくじ引きの会場までつれて来て、くじを引かせる。
ローザリアが引く、くじ箱の中身は、全て『特等』だ。
フェルナンドは、デートを機に、婚約まで早急に仲を深め、借金をアイツが返済してやる。妻の借金は、自分の借金だってな。
それで、大円満。
いかにも、女子供が好きそうなシンデレラストーリーの出来上がりだ。
後半「デートを機に」ってところからは嘘だが。
「叔父様、天才だわ!」
キャロルは、嬉々として俺の話を受け入れた。
この作戦をフェルナンドに伝えることを、キャロルにお願いする。
ローザリアを会場までつれてくる役もだ。
ここで俺が出ると、フェルナンドが不振がるからだ。
キャロルに気持ちよく本宅を送り出された後、オークションを取り仕切る貴族に接触した。
ある少女からデート券が出品される旨を話し、デート券入手後は、貴族の間にある噂を大々的に流させる旨も言い含めた。
『フェルナンドと甘い一夜を過ごせるデート券が、オークションに出品される』という噂だ。
フェルナンドとダーランド家が大好きなお嬢様達やその親たちが、食いつくこと間違いなしだ。
上手くいけば、デートをきっかけに、その二つを手に入れることが出来るんだ。
まぁ、欠片だってやるつもりは毛頭ない。
特上の美味しい餌をぶら下げて、オークションの値段を吊り上げるためだ。
そして、最後の最後に俺が、法外な高値で購入する。
しかも、限界まで昇った金額より、ぎりぎり仕方ないと思われる程の上乗した値で手に入れる。
そうすればいくら法外な金額でも、誰も不振がらないはずだ。
『この俺が』アイツを苛めれる券を入手出来る上に、『この俺が』未来の家族であるローザリアを助ける一端となれる。
実に愉快じゃねぇか。
数千万ペンドなんて安いもんだ。
思惑通り、キャロルに伝えた作戦は成功し、ローザリアが、特等を引き当てた。
そして、別室で、レイに券の受け渡しを担当させ、それとなく提案させる。
「こんな珍しいものが、オークションに出品されれば、それはいいお金になりますよ」
「そういえば、近々、私の知り合いの屋敷で、オークションがあるんです」
「もしよろしければ、出品されてみませんか」
少しでも金が欲しい彼女なら、必ず引っかかると踏んでいた。
ローザリアは、少し渋る様子を見せたようだが、次の言葉で頷いたという。
「そうですね、フェルナンド第2団長が欲しい親なら、最低でも200万は硬いでしょうね」
翌日、オークションを開く貴族から、デート券が手に入ったと連絡が入った。
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オークションでは、愉快なほど値が上がっていった。
最終的に残ったのは、最近成り上がったウッドピース家の娘と、中堅所のダグラス家の令嬢だった。
長い貴族社会にれば、暗い会場でベールをかぶっていたとしても何処の誰くらい大体わかる。
ダグラス家のお嬢さんは、特に盲目的にフェルナンドにお熱だったはずだ。
「300万の他はいませんか」
オークションの進行役が、告げる。
「400万」
そういって、ダグラス家の令嬢がご丁寧に舞台前まで出てきた。
忍び笑いが出そうになるのを、手にしているワインを流し込んで紛らわせた。
そこからは、舞台に乗ったお嬢さんが、俺の計画通りに値を吊り上げてくれた。
3000万ペンドの金額を伝えたときの顔は、見ものだった。
興奮冷めやらぬ人々の間を縫って、仮面をつけたオークション主催者の従者につき従い、去っていくローザリアとその妹を横目に、俺は勝利の酒をかっ込んだ。
足りない1000万は、キャロルにでも手助けさせてやればいい。
勿論、お楽しみのフェルナンドとの『デート』も大成功を収めた。
こんだけ愉快な噂になるとは、想定外だが。
苛めたがかいが有ったってもんだ。
「くくく」
そう笑う俺を、レイはまたも嫌そうな顔をして見た。
さて、次はどんな方法で苛めてやろうか。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
幕間のレオナルド視点のお話もお終いです。
次回から、話の中盤にあたる話に入ります。
コメディと、シリアスと、あまあまが交じり合う予定です。
シリアス回には前書きにご注意をと入れると思います。
引き続きよろしくお願いいたします。




