表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

自重しない少年。

俺は、五歳になった。

目の前には、俺の学友として付けられた同い年の少年が四人、DOGEZAしている。いや、させたんだが。


「なぁ。」


「はっ。」


「なんで、持って来てないの?ユニコーンの鬣。」


ユニコーン。

一角を持つ白馬。

処女にしか心を開かず、また触れる事もできない。

強力な魔力を身に宿し、その美しさもあって割りと人気のある魔物である。

ちなみに、角と血液は様々な薬の材料に、毛皮は魔術師のローブに、鬣は弓の弦や杖の芯に使われる。


宮殿の宝物庫目録に、ユニコーンの角があったので、鬣も揃えちゃおうと、この四人に持って来いと命じたのだ。


昨日の夜に。


今は、早朝である。

楽しみで寝れなかったのだ。


「申し訳ありません。当家では所有しておらず」


なんか言い訳を始めた少年。

シルクが生地なのはもちろん、金糸や銀糸で繊細な刺繍が施された極上の礼服を来た、将来は爽やか系イケメンになりそうな少年である。

確か、現宰相の公爵家嫡男だったかな。

もちろん、蹴っ飛ばした。

ボールみたいに跳ねながら、ぶっ飛んでいく。


「次。」


ピクピクしてる少年を見届けて、残りの三人に視線を戻す。

脳みそ撒き散らさずに済んだのだ。感謝して欲しいね。

皆、顔を上げず、プルプル震えている。

ちょっと可愛がってやっただけなんだけどな。

いやさ、初対面でタメ口だったのよ。皇太子の俺に。

やっぱ、いくら法律とかそうゆうのが緩い異世界でもさぁ、上下関係って大事じゃん。

五歳だし、ちょっと早いかなぁって思ったんだけど、言葉って早い方が覚えが良いって言うじゃない?

地下牢でじっくり調教してやったよ。


「も、申し訳ございません!ただいま臣下総出で調達しております故」


少年の一人が、震える声で必死に弁明している。

蹴っ飛ばしても良いが、ちょっと遊んでやろうか。

蹴るとか殴るとか、そういうのは理由いらないし、いつでも出来るからな。


「いつ?いつ持ってくんの?」


「は、はっ!」


少年が滝のように汗を流している。

泣いてるんじゃないかってぐらい、顔からポタポタ水滴が落ちていた。

あ、ちなみに泣いたら問答無用でサヨウナラである。

俺は泣くガキが嫌いなのだ。


「聞こえなかったか?いつ、と俺は聞いたぞ。」


「あ、明後日には、必ず。」


あらー。まぁ無理だろうな。

ユニコーンが生息する最寄りの森まで、最速の飛竜で、極限まで荷物減らしても片道半月はかかる。

帝都の商人の手元にないのも、確認済みだ。

世界各地を旅する隊商が、偶然持ち込まない限り、明後日と言うのは難しいだろう。


「待てん。今日中に持って来い。」


まぁ、お約束ですよね。やっぱ大事だよね。お約束。


三人が一斉に顔を上げた。

皆、老けたなぁ。それに、なんか青褪めてるし。

五歳っぽくないぞ。もっと純真無垢に生きなきゃ。


「し、しかし。」


「あぁ、時間が足りんか?なら、今すぐ探しに行って来い。顔を上げたのも、不問にしてやる。良かったな。ほら、さっさと行ってこい。」


プライスレスなスマイルで言ってやると、ピクピクしてた少年を担いで、三人は出て行った。

さぁ、どうするつもりなんだろな。

四人共、使えないクズだが、一つだけ俺が評価している所がある。

四人それぞれが、チームワークを理解しているのだ。

公爵嫡男はリーダーである。何事にも率先して動き、成果を最大限に、被害を最小に収めるべく行動する。


俺と話していた少年は、内政官を輩出する重鎮貴族の息子だ。

彼はモノに関する知識があった。

帝国の主要農作物や、産出する鉱物や宝石、魔物から採れる素材、果てはそれらを扱う商人、著名な職人や冒険者など、まるで辞書の如き記憶力を持っている。


もう一人は、代々優秀な将軍を輩出する名門貴族の長男。

厳格な父親に、三歳から手解きを受け、他にも著名な剣豪などに師事している。

書見も欠かさず、戦略や戦術に関しても蓄積を続けており、幸いな事にその方面に優れた才覚を持っていた。


最後の少年は、特にこれと言った才覚はない。

出身も、地方の小さな領主の三男である。

では、何故俺の側に侍る事を許されているかと言うと、俺の『魔眼・鑑定』に引っかかったからだ。

ちなみに、俺の魔眼で彼を見ると、こんなのが出てくる。


【マルコ・ヤドヴィック】(5歳)


HP 6/6

MP 12/12


力 4

体力 4

敏捷 5

賢さ 31


『幸運の申し子』『皇太子の奴隷』



このステータスの解説をするならば、めちゃくちゃ運が良い俺の奴隷。

あ、賢さが高いのは、俺の教育の賜物な。

運は運だけではどうにもならないが、なんせ他の三名がそこそこ動けるからな。こいつがいれば、たいていの事はなんとかなる。


ん、奴隷ってのが気になるって?


地下牢で教育したんだぜ?そんぐらい当たり前だろ。むしろ俺との絆に狂喜して、靴を舐めてもらいたいね。


まぁ、そんな感じで、この四人はなんだかんだで俺の命令を実現できなかった事はない。

それぞれの能力や伝手を、常に連携しながらフルに使っている。中々良い傾向だ。

こいつらは、将来俺の側近になるんだからな。

多少の事は、難なくクリアしてもらわないと困る。





彼らは、夜になって、やっとユニコーンの鬣を持って来た。

帝都中を駆け回り、使える人間は全て使い、商人ではなく、冒険者を片っ端から訪ねて回ったそうだ。

その中で、偶然、ユニコーンの鬣を使った杖を持っている高位の魔導師を見つけ、相場の三倍の金貨を積んで買い取り、職人に分解させたそうだ。


「ふーん。よくやったな。」


揃って跪く彼らにそう言うと、彼らの緊張が解けるのを感じた。

まぁ、大変だったろうしな。時間制限もあったし、今までの命令の中でも、中々の難易度だった。

一人が、跪いたまま安心したような溜息をついた。


「あと、これを十本な。明日の朝までに。」


もちろん、俺は笑顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ