女の子と犬
初めて童話というものに挑戦してみました。力不足かもしれません。
その女の子は歩くことができません。
赤ちゃんのときから足に病気がありました。
だから、女の子は歩くことができません。車椅子にのって、ガタガタ、ガタガタと、車みたいに動くことしかできません。
そんな女の子に、お医者さんは言います。歩けるようにしてあげるよ。君は歩けるんだよ。
大きいめがねをかけた、優しそうなお医者さんの言うことを聞けば、女の子は歩けます。走れるようにだってなります。
でも、女の子はそれをしません。歩けるようになりたくないからです。歩けなくてもいいと思っています。だって、歩いたことがないからです。歩けなくっても、不便と思ったことはありませんでした。
下に物を落としたら、車椅子の側につけているなが~い棒で取ればいいのです。
階段を登れないのなら、エレベーターを使えば良いのです。
エレベーターがなかったら、諦めたらいいのです。
急いでいるのなら、早めに行動したらいいのです。
女の子は足の病気を治したいと思ったことはありませんでした。
でも、ちょっとだけ憧れていました。
女の子が大好きなテレビがありました。
ヒーローが悪い奴と戦う物語です。
飛んだり、撥ねたり、走ったりする姿が大好きでした。
だから、治そうとは思いませんでした。
そのヒーローに、ずっと憧れていたかったからです。
ある日、女の子は散歩をしていました。
車椅子の車輪を、ガタガタと腕で回しながら、お散歩です。
今日も太陽さんが空を跳んでいる。
お花さんは動けないのに、元気そうだね。
毎日合っているお花さん達とお話しながら、女の子は道を右に曲がります。
フワフワがありました。
女の子はフワフワを見つけました。
白いワタアメみたいで、モジャモジャの毛が生えた生き物。
女の子の手に収まっちゃいそうなほどちっちゃい犬でした。
女の子はすぐにその犬が大好きになって、家につれて帰りました。
女の子は犬と友達になりました。
毎日一緒に寝て。
毎日一緒に御飯を食べて。
毎日一緒に散歩に出かけて。
毎日が太陽みたいに明るくて、お花さん達みたいに綺麗でした。
でも、段々と楽しくなくなってきました。
犬は床に落ちたものをサッと拾います。
犬は階段をトントンと上がっていきます。
犬は走ったらとっても早かったんです。
女の子は犬が嫌いになりました。
毎日一緒に寝なくなりました。
毎日一緒に御飯を食べなくなりました。
毎日一人で散歩するようになりました。
毎日が雨みたいになって、お花さん達が姿を隠してしまいました。
女の子は犬と会いたくなって、家に帰りました。
フワフワをすぐに見つけて、抱きしめました。
ペロペロ。
犬は女の子の顔をなめてくれました。
とってもくすぐったかったけれど、女の子は犬をナデナデしてあげました。
それからの毎日はもっと明るくなりました。
寝るときも、御飯を食べるときも、散歩をするときも一緒です。
床に物が落ちたときや、階段を上がる犬を見たときは、ちょっとさびしくなります。
タッタッタッと走る犬は眩しかったです。
そんな犬が可愛くて、公園にまでお散歩に行きました。
ちょっと遠いけれど、犬と一緒ならへっちゃらです。
女の子はガタガタと、犬はタッタッタッと公園をお散歩しました。
犬が急に走り出しました。何か見つけたみたいです。
口にくわえて、戻ってきました。
女の子は、犬からそれを貰いました。
壊れた玩具でした。でも、女の子はとっても嬉しかったんです。
憧れのヒーローのお人形だったから。
嬉しくって、犬をナデナデしてあげました。
犬もペロペロしてくれました。
その日は、たっくさん、ナデナデとペロペロをしました。
それから何回か、お散歩しました。
女の子は犬とお散歩ができなくなりました。
犬が動けなくなっちゃったからです。
大きな穴の中に入った犬は、上から土をかけられても、動きませんでした。
女の子は、犬が眠っている場所から動きませんでした。
タッタッタッ。
そんな音が聞こえてくる気がしました。
犬から貰ったヒーローのお人形。
女の子は、それをギュッと握り締めました。




