表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶オジーマ  作者: 黒王
2/2

2:崩壊双六

 僕が烈さん達と出会った次の日の学校の帰り。

僕は再びあの喫茶店に行こうとしていた。

理由は置いてきた携帯電話を取り戻すためだ。

意を決し家の扉を開くとそこは喫茶店だった。

「やはりまた来たか。」

烈さんと幕箸さんがいた。

「携帯電話を取りにきただけです。」

「携帯電話?。そんな物あったっけ。」

「僕が落とした銀色の携帯電話です。」

「え、あの携帯電話君のだったの?。」

「知ってるんですか。」

「なんだ虎樹、心当たりがあるのか?。」

「う、うん、僕が持ってるんだけど。」

「それで、僕の携帯電話は?。」

「いやあ、また倉庫から出てきたガラクタの1つかと思って今作っている巨大侵略ロボットの材料にしちゃった。」

「なに作ろうとしてんだぁ。返してください。」

「しょうがないなぁ、ばらして持ってくるから。」

そう言って幕箸さんは奥の方に歩いていった。

僕は待っている間、制服のジャケットをイスかけて座りながら出されたコーヒーを飲んでいた。

ギー ガシャン バタン グシャリ

おそらく幕箸さんが出しているであろう機械音が聞こえてきた。

しばらくすると奥の方から誰かの足音がした。

幕箸さんかと思って見たがそこにいたのは坂出さんだった。

それはまだいい、その隣にいたのは四角い箱を持った金髪で小学生くらいの女の子だった。

「あ、あの坂出さん、その子は?。」

「ああ、こいつは…。」

その時、奥の方から幕箸さんが僕の携帯電話を持ってきた。

「猛君、携帯電話取ってきたよ。」

「幕箸さん良い所に来てくれました。早く携帯電話返してください、変質者の誘拐事件に遭遇したんで警察に電話しなきゃいけないんです。」

「ちょっと待てええええええ。お前は今、俺様に対して何か勘違いしてないか。おい、通報するの止めろおおおおおお。」

「あ、自首するんですね。」

「それがいいな。」

「僕からも自首を進めるよ。」

「お前ら2人は知ってて言ってんだろ。」

幕箸さんがそう叫んだ瞬間、今まで黙ってきた女の子が口を開いた。

「あの、ワタシは別に誘拐されて来たわけじゃないです。」

「「「ええええええ!。」」」

「だからお前ら2人は知ってんだろ。」

「ワタシはアンス・ララーと言います。あなたは?。」

その子、アンスちゃんが喋りかけてきた。

「僕は早 猛。ところで君は外国人?。」

「え、と、ハーフです。」

なんか他の人と比べておとなしそうだった。

話を聞くと僕と同じくある日自分の部屋のロッカーを開けたらここに繋がっていて、烈さん達に推されて1年ほど前からここに来るようになったらしい。

「それにしてもイメージと違って少し驚きました。」

「え、僕がイメージと違うって?。」

「いえ、それはそれは禍々しく全てを飲み込む闇のような人ってイメージでしたから。」

「なにそのイメージ。」

「だって烈さん達がそう言ってたんですよ。」

「ちょっと烈さん。なんて事を。」

烈さん達の方を見るとそこでは坂出さんが烈さんと幕箸さんに説得されていた。

「林馬、お前とうとうやってしまったんだな。」

「やってない。つーかお前らアンスと初めてあった時もこのやり取りあったよな、いや15回目だよな。」

「話をそらしても誤摩化されないよ、いつかやるとは思ってたあんだけどね、誘拐。」

「だから俺様はやってない。」

「よく言うな、前科900犯のくせに。」

「なんなんだその前科は。」

「まあ、このトンカツジュースでも飲んで落ち着けよ。」

「断る、そんな気色悪いもの。」

「ガムシロップと自白剤とホウ酸入れておいたからさ。」

「余計飲まねえよ。」

「飲まないってことはやはりやったのか。」

「ちげえよ、ホウ酸入ってるからだよ。あーもーこの話やめだ。」

「逃げた。」

「そんな事よりもアンス、あれはいいのか。こいつらとあれやるんじゃなかったのか?。」

「あ、そうでした。」

そう言ってアンスちゃんはさっき持っていた箱を開けた。

そこには紙とサイコロが入っていた。

「これは…双六。」

「そうですよ。皆でやろうと思いまして、猛さんも一緒にやりましょう。」

「悪いけど携帯電話返してもらったし僕はもう帰るよ、それともう来ないと思うから。」

「そう…ですか。」

僕が立ち上がると幕箸さんが声をかけてきた。

「いいのかなあ、帰っても。」

「どういう意味ですか。」

「いやあ、その携帯電話僕が持っている時にコピーしておいたんだよ、中身は見てないけど。」

「え。」

「このデータを返してほしければ双六に参加するんだね。」

「なんですかその脅迫は。虚しいだけでしょ。」

僕は相手が年上な事も忘れて叫んでいた。

「どうなんだい、yesかokで答えたまえ。」

「選択になってないですよね、それ。しかも僕に全然メリットないし。」

「じゃあ、君が1位になったらここの喫茶店について詳しく教えてあげよう。」

「………まあ、双六くらいなら。」

そう言って僕は座り直した。

そして、アンスちゃんが双六を広げた。

コマはそれぞれ僕は茶色、烈さんは銀色、坂出さんは茶色、幕箸さんは紺色、アンスちゃんは黄土色だった。微妙な色ばかりだ。

順番はじゃんけんでアンスちゃん→烈さん→僕→幕箸さん→坂出さんだった。

最初にアンスちゃんが6を出した。

アンスちゃんがコマを6マス進めるとそこには【1回休み】と書かれていた。

次に烈さんが3を出したが何も書かれていないマスだった。

順番通りに僕がふった、5だった。

僕がコマを動かすと【6マス戻る】と書かれていた。

「…ん。6マスってことはスタートですか?。」

「いいや、スタートより前に戻ってもらう。」

そう言いながら烈さんは僕のコマをスタートよりさらに後ろの方に動かした。

「え、そんなのありですか?。」

「ありだ。マスに書いてある事には従え。」

よく見ると他にも【√3戻る】や【8分の3進む】、さらには【ゴールまで進む】なんていうマスまであった。

次に幕箸さんが3を出し烈さんに並んだ。

最後の番の坂出さんが投げようとサイコロを握った瞬間。

バキィ

サイコロが砕け散った。

危うく飛んできた破片が僕に当たる所だった。

「おい林馬、少しは手加減しろ。」

そう言いつつ烈さんが新しいサイコロを箱の中から取り出した。

ここではよくあることらしい。

坂出さんが手加減してようやく2が出た、そこには【你愚蠢】と書いてあった。

「読めねえええええええええ。」

坂出さんがそう叫んだ。もちろん僕も読めなかった。

「ああ、それは中国語で【あなたは愚かだ】って書いてあるんだよ。」

幕箸さんが解説してくれた。

「ふざけるなああああ、双六まったく関係ねじゃねかああああ。」

ジリジリジリジリジリジリ

当然のツッコミだった。だからといってサイコロを素手で粉状にするのはどうかと思ったが。


その後も双六は進み。

現在は僕、幕箸さん、烈さん、アンスちゃん、坂出さんの順だった。

今、烈さんが終わったところだ。

僕がサイコロを振ると3が出た、そして3マス進んだところには赤い文字で【game over】とだけ書かれていた。

「ゲームオーバーってなんだあああ。」

「ちょっと五月蝿いよ、猛君。」

幕箸さんにそう言われたがやはり納得がいかない。

しかし幕箸さんは僕のコマを紙の上から退け、サイコロを振っていた。


結局最終的な順位は1位烈さん、2位アンスちゃん、3位幕箸さんになった。

ちなみに坂出さんは【100穣戻る】というマスに止まりスタートのはるか手前に移動したのでリタイアした。

「やっと終わりましたね、しかしこんなにゲームバランスのおかしい双六をやったのは初めてです。」

「貴重な経験だったろ。」

烈さんがそう返してきた。

「ええ、ここまで時間を無駄にできるという意味では。あ、それはそうと幕箸さん僕の携帯電話のデータ返してください。」

「ああ、データね。ほら。」

そう言って幕箸さんはUSBメモリを投げてきた。

「まったく、やめてくださいよねこういうこと。」

「ん、あ、ごめんそれ違うやつだった。」

「え。」

幕箸さんが素早く僕の持っていたUSBメモリを奪い、自分の持っていたUSBメモリを僕に握らせた。

「危なかった、このインサイダーのデータでまた儲けるつもりだから。」

「今なんかいいました。」

「いや、サイダーでも飲もうかな、と。」

そんな事を言いながら幕箸さんは奥の方に走っていった。

「ま、僕は帰りますから。」

「え、もう帰るのか?。」

烈さんがコーヒーに砂糖を入れながら聞いてきた。

「もともと携帯電話取りにきただけですからね。」

「そうか、また来いよ。」

「いいえ、お断りします。」

「遠慮すんなって。」

「遠慮じゃありませんから。」

僕は立ち上がりドアの方へ数歩歩いた所で立ち止まった。

「ああ、それと烈さんさっきコーヒーに入れていたの砂糖じゃなくて坂出さんがすり潰したサイコロですよ。」

「ブ、ゴフォゴフォ、それを先に言え。」

「いや、烈さんだったら大丈夫かなと。」

「というか林馬、なんで砂糖の入れ物に入れたんだよ。」

「うっせー、ゴミ箱が見当たらなくて入れ物がそれくらいしかなかったんだよ。」

「第一何個すり潰せばこんな量できるんだよ。」

「だってマスに止まるたびにむかつく事が書いてあったんだぜ。しかも他言語で。」

そんなやり取りを尻目に僕は喫茶店のドアを開けた。

「さようなら猛さん。また来てくださいね。」

「さようならアンスちゃん。もう来ないからね。」

僕がそう言った瞬間、幕箸さんが奥の方から戻ってきてなんか言っいたが無視して喫茶店を出た。

「あ、…君……ケット…。」

周りの明るさが喫茶店に入った時とあまり変わってない気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ