1:喫茶店が出た
それはある晴れた日の中学校の帰りの事だった。
いつものように鍵を使い家の扉を開けた、そしてそこにあったのは玄関……ではなく喫茶店だった。
(……………うぇ。)
僕は一度扉を閉め、家の扉である事を確かめた。
間違いなく家の扉だった。
もう一度扉を開ける。
やはり木製の机が並んでいる喫茶店だった。
だが人が居るようには感じられない。
混乱しながらもその喫茶店に足を踏み入れた。
そのまま少し奥の方へ進んだ。
その瞬間にもっと衝撃的な場面に出くわした。
殺人現場だった。
3人の血だらけな男達が倒れていた。
(うわあああああああああ。)
声を出そうとしたが出なかった。
ガチャ
右奥の方で何か物音がした、そちらを向くとそこには包丁を持った男がいた。
幸い男はまだこちらに気がついていないようだったので僕は咄嗟にそばにあった机の下に隠れた。
ここまで異常事態が続くともう逆に冷静に成りかけていた。
今出て行くと男に気づかれるのでとりあえず警察に通報しようと考えて携帯電話を取り出す。
しかし運悪くその携帯電話を落としてしまった。
カーン
(やばい)
その音を聞いた男はこちらへと歩いてきた。
そして机の下に思いっきり蹴りを入れてきた。
僕は寸前でよけ、男の蹴りは空振りに終わった。
「っち。」
男は舌打ちをすると今度は机に手をかけると引っくり返した。
ガッターン
そして手に持っていた包丁を僕目掛けて振り下ろそうとした。
(もう駄目だ。)
そう思い目を瞑った。
しかし痛みは感じなかった恐る恐る目を開けると包丁は僕の頭の上で止まっていた。
男は驚いたような表情で固まっていた。
そのまま1分ほど時間が過ぎた。
すると男はカウンターまで歩いていき包丁を置くと、そこにあったコーヒーを一口飲み、
「お前も何か飲むか?。」
と聞いてきた。
ここまできて僕もようやく落ち着いてきた。
そして声も出るように成ってきた。
「あ、え、さ、殺人犯。」
僕はそう叫んだ。
それを聞いて男はコップを落としそうになっていた。
「え、いやまあ確かに包丁は持ってたけど、まだ誰も死んでないし。さっきのは人違いで…。」
「嘘だ。現にあそこで人が死んでるじゃないか。」
僕はそう反論し、倒れている男達を指差した。
「いやあれ死んでないからな。」
男は衝撃的な事を言った。
「え!。」
ガタ
倒れていた男のうち1人が起き上がった。
「あー、痛かった。」
男は血だらけの割には普通に喋っていた。
さらに残りの2人も起き上がった。
「ふわ。君は少し譲る事を覚えた方が良い。」
「ふざけるなお前が俺様に譲れ。」
なぜか起きて早々に揉めていた。
「もう、2人とも冷静になってくれよ。」
それを最初に起きた男が止めていた。
この時点でもう僕の理解できる範囲を軽く超えていた。
「な、なんなんだ、ここは一体。」
「「「!?。」」」
僕がそう呟くと男達はやっと僕に気がついたらしい。
「君、何時からそこに?。」
「なんだお前は?。」
「へー、新しい人か。」
「え、いや、ぼ、僕は。」
それから10分後、僕と男4人は6人がけのテーブルに座り出されたコーヒーをイスに座って飲み、落ち着いていた。
「まず、聞きたい事が色々有るんですけど。」
「よし、俺が答えよう。あ、まず俺の名前だけど烈 力だ。」
一番最初に出会って包丁を持っていた男、烈 力がそう言った。
落ち着いてから見るとこに男は身長165cmの僕より背が数cm高く、がっしりとした体系だった。
「えーと、僕は 早 猛っていいます。それでここは何処なんでしょう。」
「喫茶店。」
「いや、そうじゃなくて家の扉を開けたらいきなりここ繋がってって。」
「ああ、それな。実はこの喫茶店は時空を超えられるんだよ。」
「え、時空。」
「その通りだ。だから君の家の扉とこの喫茶店が繋がったんだ。」
「う、信じられないけど。」
「おい、力、コーヒーおかわりだ。」
僕達の会話を遮ってさっき倒れていた男の1人がコーヒーのおかわりを烈さんに要求してきた。
「だあ、今話してるだろ。少しは空気読め。」
「は、さっさと終わらせろよ。あーもー、猛だっけ信じられないもなにも現に起こってるんだから信じろ、深く考えるな、これでいいな。そして俺様は坂出 林馬だ、覚えておけ。というわけで力、俺にコーヒーのおかわり。」
坂出林馬と名乗ったその男は180cmくらいでこれまた烈さんよりさらにがっちりとした体系だった。
「ははは、何が深く考えるなだ。ただ単に君が理解してないだけじゃないか。あ、猛君こいつ馬鹿だから相手にしない方がいいよ。ここの仕組みは高電磁破の影響で加速した素粒子を使い高エネルギーでワームホールを発生させて移動しているんだよ。このくらい分からない奴は人生をやり直した方が良い。ああ、それと僕は幕箸 虎樹、よろしくね。」
そう言ったのはさっき坂出さんと言い合っていた男だった。この男は先の2人と違い僕と同じくらいの背で少し痩せてメガネをかけていた。ちなみに今の説明は僕は全く持って分からなかった。
「話が逸れていきそうだから次の質問にいってくれ。それと林馬、そんなにコーヒー飲みたきゃ自分でやれよ。」
「っち。」
舌打ちをしつつ坂出さんはカウンターの方に歩いていった。
「なんで僕を包丁で殺そうとしたんですか?。」
「あー、それは人違いだ悪かった。」
「人違い?。」
「そうだ。実は田場って奴を探していてな。」
「その人は何をしたんですか?。」
「あいつは…俺の甘栗を食ったんだ。」
「そんな事で!。」
「いや、田場は毎回そんなんなんだよ。ま、包丁で刺したって死ぬような奴じゃないからな。」
「……………あ、もういいです。それについては考えるのやめます。それでさっきなんで坂出さん達は倒れてたんですか?。」
「ああ、それはきっと…。」
「俺様フライドポテトを虎樹が盗ったんだよ。」
新しいコーヒーを持ってカウンターから帰ってきた坂出さんが烈さんに代わり答えた。
「何言ってるんだ。まず最初に君が僕のを盗ったんじゃないか。」
「ちょ、2人とも喧嘩はやめてくれよな。さっきだって2人を止めようとして俺が巻き込まれたんだから。」
幕箸さんが坂出さんを挑発した所で今までずっと黙っていた男が口を開いた。
「あ、あのあなたは。」
「ああ、俺はまだ名乗ってなかったな。俺は弛目 灯等。俺達が倒れていたのは林馬と虎樹が喧嘩になって俺がそれを止めに入って結局相打ちになったんだよ。」
倒れていた内の最後の一人の男、弛目 灯等は身長170cmくらいの真っ黒な髪で真面目そうな男だった。
「ん、じゃああの血は?。」
「血!ああ、あれはケチャップだよ、フライドポテトを食べていたからね。」
「そう…ですか。はああああぁ。」
一気に疲れが出てきた。
「烈さん、僕帰ってもいいですか?。」
「そんなにもここがいやなのか。」
「そりゃそうですよ。命が幾つ有っても足りない気がしてきましたもの。」
「いや、ここに来れるってことは凄い事なんだ。誰でもここに来れるわけじゃないんだ、それに今はいない奴もいるがなかなか変わった人も来るし、面白い物も沢山あるし。」
「面白い物ですか?。」
「そうだ全自動練り消し機とか乾電池発見器とか。」
「……なんかあまり役に立ちそうもない物ばかりですね。」
「物質転送装置とか。」
「いきなり世紀の大発明!。」
「紙幣印刷機とか。」
「犯罪じゃないですか。」
「爆破装置付き食器洗い機とか。」
「なんでそんな物ついてるんですか。」
「まあ、ほとんどこの喫茶店の倉庫にあった物を虎樹が修理や改造をした物なんだがな。」
「色々凄いですね。幕箸さん。」
「だから言っただろ、ここに来れるのは凄い人なんだよよ今までも数える程度の人間しか来ていない。だから君の家の扉を他の人が開けてもこの喫茶店には来れない。」
「でも僕にそんな凄い力はありませんよ。」
「君が気づいていないだけだ。」
「そうなんですかねえ。まあ、疲れたんで結局帰りますね。コーヒーごちそうさま。400円でいいですか?、お金ここに置いときますね。」
「いや、金はいらないコーヒーの材料は実質タダだからな。」
「何でです?。」
「ここは良い暇つぶしになるんでまた来いよ。それとその答えは長くなるから今度話そう。」
「命がけで暇つぶしする気も無いんでもう来ないと思います。さようなら。」
そう告げると僕は喫茶店を出た。
見慣れたいつもの道だった。
僕は振り返り家の扉を開けた。
喫茶店だった。
「おお、結局帰ってきたか。」
烈さんが出迎えた。
「いや、そうじゃなくて家の扉を開けるとここのなるんで家に入れないんですけど。」
「ほー。」
「ちょ、僕どうすればいいんですか。」
「ここに泊まってったら。」
「宿泊できるんですか、ここ。でもここに宿泊したら朝、ダイイングメッセージ残して死んでそうなんで止めときます。」
「安心しろ、大丈夫だ。」
「あ、そうですよね。言い過ぎました。流石にそんな事は有りませんよね。」
「犯人は俺が必ず見つけ出す。」
「すいません、野宿するんで寝袋貸してくれませんか?。」
「爆破装置付きで良ければ。」
「だからなんでそんな物付いてるんですか!。そうだ、友達の家に泊めてもらうんでもういいです。」
「そうか君は俺よりその友達を選ぶんだな。」
「当然の選択です。第一あなたとは今日会ったばかりでしょ。しかも出会ってすぐ包丁向けてきたし。」
「ああ、そう言えばそんな事も有ったな。」
僕は切りがないので無視して出て行こうとした時、ずっとその話を聞いていた幕箸さんが口を開いた。
「他の入る方法を考えればいいんじゃないかな。」
「他の入る方法?。」
「そう、猛君が 猛君の家 の扉を開ける事さえしなければここには来ないんだから、裏口から入るとか家族に扉を開けてもらうとかすればいいんじゃない?。」
「なるほど。じゃあその手で行きますね、それでは今度こそさようなら。」
僕はそう言ってまた喫茶店を出た。
そしてインターフォンを押し、母に家の中から開けてもらった。
家に入るとすぐに自分の部屋のベッドで横になった。
ふと時計を見ると5時だった、しかし体感的にはもっとあそこにいた気がした。
「………不思議な体験だったな。」
疲れたので目を閉じようとした時、ある事を思い出した。
「しまった!。携帯電話忘れてきた。」
さっき落としてそのままだったのだ。しかし取ってくる元気はもう僕には残っていなかったのでそのまま倒れるように寝てしまった。