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黎明の空  作者: 綴樹
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山脈の村2


目の前には感謝を示す涙ぐんだ目と歓喜に沸く村人たちと。


・・・・ついでに黒く焼け焦げた、家の残骸。


「そうですか、あなた方が助けてくださったんですね。村を代表してお礼を言わせて頂きます。」

「いえいえ・・・。」



村長の、村人たちの感謝の目が、とても、痛い。

「やけどを負った村人はいますが、幸いにも死傷者は出ませんでした。なんとお礼を言ったらよいのか・・・。」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。泣きそうだ。

「この事態、何か原因が?」



罪悪感に首をどんどんうなだれさせている私を大変面白そうに見ながら、スオウさんは村人たちに尋ねる。ちなみに今のスオウさんの目は髪と同じ藍色。人間に扮装しているものの、美形なのは変わらず・・・ああ、村の娘さんたちが卒倒してる・・・。

「原因、というか・・・」

自分のことが言われるのでは、と身構えたが、村人さんたちは虫のときの記憶が無いらしく、おそらく虫になったであろう経緯を話し始めた。とりあえず一安心、と思いつつ、そう思ってしまう自分にさらに罪悪感。・・・ああなんて小市民な私。



「この、刹下村から北へ向かった先に、雪花村、と言う村があります。私たちの村と同じ名称なのですが、書き方が異なります。さらにその東にまっすぐ行くと、『雪花遺跡』と呼ばれる遺跡があるのですが・・・。」

「そこになにか原因が?魔術具とか・・・?」

虫になる、という魔術具があるのかは謎だが、古の魔術師たちが作ったそれらはこの世界において非常に貴重なものである。言ってしまえばお宝だ。それを狙って暗躍する人々も少なくない。或いはその魔術具を隠すべく何かしらの罠が仕掛けてあり、それにひっかかった、とも考えられる。


「いえ、魔術具どころか、ただの古ぼけた古代の石造物が建っているだけです。その建物の中も特に宝と言った宝はありません。」

む、つまらない。


「じゃあそこに何か住み着いた、とか?」

「そうなんです。巨大な鳥の羽を持つ妖魔族が・・・。その日から一日に一人ずつ、雪花村の人が消えてゆくようになりました。」

「ああ・・・悪食だね。死体まで食べるタイプか。」

え、そんなタイプいるの!?

「知らないとまずいよ、リンシャ。」

わかりましたけどこころ読まないでください。



人型の妖魔族は、高位のみだということは知っていた。しかし主食は血だが、低位の中には人肉までも好んで食べるものがいる、ということは知らなかった。・・・というより不思議とあまり妖魔族にあったことがない。



「雪花村がギルドに要請しましたが、このような田舎の村、我ら刹下村と雪花村を合わせても5万ガルドしか・・・・。」

「ごまんがるど!?」

「そんなに驚くような金額?」


不思議そうに尋ねるスオウさんの首根っこを思わず引っつかみました。


「当たり前ですよ!!!わたしなんて一仕事1000ガルドあったら良いほうなんですよ!!??」

「そんなものなのか・・・。」


ふむふむと頷くスオウさん。ついでに熱のこもる村人たち。



「しかしそれで雇える魔術師たちでは歯が立たなかったのです!」



この展開からするに、なにやら嫌な予感がする。

最低位の魔術師に妖魔族に対抗できる術があろうか、いや、ない。



「泣く泣く退治することを諦めた雪花村はなんとも悲しいことに皆虫の姿にされ、彼らの食料として倉庫へ保管されていったのです・・・。そして次は私たちの番・・・遺跡の方から閃光がわれらの村を襲いました。その時に、あなた方が現れたのです。」

「何で虫。」

「それはあれだよ、鳥だから?。」

「と言うわけで、どうかあの魔物を退治してやってくれませんか!!!」



ほら来たほら来たほら来た!!!



「すいません無理で「かまいませんよ、いくらで?」」



私が平身低頭、電光石火でお断りする言葉にかぶせ、あっさりとスオウさんが答えてしまった。

なんてこと。


「引き受けてくださるのですか!?ありがとうございます・・!それはもう、この5万ガルドを!どうぞお持ちください!!!」


熱意のこもった村人たちから離れ、スオウさんはついと私に近寄って来る。


「リンシャ、これからはお金が結構入用になるでしょう?」

「そ、それはそうですが・・・。」

「大丈夫、僕がいるし、そんなことはありえないとは思うけどリンシャのレベルアップにもなるかもしれないし。」


いちフレーズ余計である。


「それに、それ多分あいつの部下。」

「あ、あいつって妹をたぶらかした性悪妖魔王!!!」

「うーん・・・妖魔王ははっきり言って皆性悪なんだけどね、そうだよ。」


貴方も含めて、ですよねーーー。


「何か悪いこと思わなかった?」

「いいえ何も思っていません!!!・・・・あ、あと、お願いが・・・。」

「わかってるよ。もらうのは2万ガルド。残りは村の復興に使ってもらおうね。」


私の顔色からスオウさんは言いたいことを汲み取ってくれたようだ。つくづく良い妖魔王様だと感心する・・・と言いたいところだが、そこで良い妖魔族の人だと期待すれば即座に期待を裏切られること請け合いなので何も言わない。


とにもかくにも、私たちは遺跡へ向かうこととなったのである。


誤字脱字あったらすみません。

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