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黎明の空  作者: 綴樹
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境界線8


さっぱりした後十分に時間をとってからスオウさんの扉をたたく。

どうぞ、という声が返ってきたことにほっとしながら扉を開くと、部屋のソファでスオウさんがくつろいでいた。


「うう、やはり久しぶりの生スオウさんは目に痛いですね・・・。」


ついでに胸の動悸も激しくなる。

こちらに流し目を送るのはやめてください。

それにしてももう少し豪奢な部屋にすればよかった。

自分に合わせて質素な部屋を選んでしまったが、師匠の屋敷にはもっと美しい部屋がいくつもある。用意された服もそれに合わせて豪奢になっていくから、きっと絢爛豪華なスオウさんが見れたはずなのに。


「この部屋で十分だよ。」


スオウさんが苦笑。なにやら心を読まれるのにも慣れてしまったなあと達観する。




手招きされて傍に寄り、どうぞと手首を差し出すと、そっと片手で腕を取られた。

ソファに座ったままのスオウさんを自然、見下ろす形になる。

そのままスオウさんは動かない。

何やら少し考え込んでいるようでもある。

どうしたんだろう。

やっぱりまずそうだった?

考え込んでいると先ほど師匠との会話の時に猛烈に気になった質問が浮かび上がってくる。



「あの・・・。」



不思議そうにスオウさんが見上げてきた。

なんと言えば良いのかわからず、思わず口ごもる。

いやでも何も言わなくても多分心が読めるのならば構わないのかな。

まあいいや、そのまま聞こう。



「サクラ姫はスオウさんのツガイだったんですか?」


「・・・・・・・リンシャ、嫉妬?」


「!!!!!?????」



爆弾発言が返ってきました。


「ちちちちちがいますよそんな恐れ多い。いやあの恋人とかそういう意味でツガイならばそういうこともあるのかなあとちょっと気になったぐらいでいえ別に決してそんなことは」


「リンシャって混乱すると饒舌になるよね。」


その様子を観察していたらしいスオウさんは冷静にお言葉を述べてくださった。

混乱するようなことを言ったスオウさんも悪いと思いますが。

狙ってましたよね狙ってましたよね?


・・・うわあ笑顔で頷かれた!


私がスオウさんの仕打ちに打ちひしがれているとソファーに座っていたスオウさんが立ち上がった。


「・・・?血は吸わないんですか?」


「せっかくだからご褒美頂戴。」


「ご褒美・・・。」


はて。

そういえば別れる前にそういう話をしたような。


『放棄はしないから、後でご褒美くれる?』


確かそうおっしゃってましたよね。

しかし先ほどの問いは無視ですかスオウさん。


まあ良いか、と半ば投げやりで承諾する。


「了解です。肩叩きでも腰叩きでも足マッサージでも食料買いだめでも対応可能ですよ~。」


「・・・胡散臭いキャッチセールスのようだよ、リンシャ。」


失礼な、と睨もうとしてやめておいた。

うう、すでに最上級のこの御方に馴染みすぎている私が辛い。

普通妖魔族かつキラキラ美形のお兄さんを睨むなんて度胸私にはなかったはずなのにスオウさんのせいでどんどん図太く。

図太いのは元からだって顔してますよね私だって心読まなくてもわかりますよそれくらい!

気を付けますよすみません!


「別に謝らなくていいよ。もっと慣れてくれてもいい。」


・・・・・・・。

ス、スオウさん。何故そのような表情でこちらを見ていらっしゃるのでしょうか。



「それでね、ご褒美なんだけど。今までのもすごくおいしいんだけど、もっとおいしい血が飲みたいな。」


「そ、それは私に美女狩りをして来いと・・・。」


「違う違う。」


ふふ、と妖艶に笑ったスオウさんは目を細めて言った。





「もっとおいしいところから血を飲みたいな。」





・・・・・・・・・・・。


もっと。

おいしいところ。


どこでしたっけ。


確か血管が太くて心臓に近いところ。


首か胸。



「うぇえええ!?」


声にならなかった。手首だけでも緊張と緊張と緊張と・・・とにかくいろいろ強いられるというのに!!!



「だめ?」


小首をかしげて懇願されれば否とは言えず。奇妙な唸り声を発しながら脳内でいろいろ考えてみる。

これはあれだ。他意はないはず。そう。スオウさんはおいしい血が飲みたいのだ。ギブアンドテイクだ。よし。女は度胸。

考えすぎて訳が分からなくなったので拳を作って気合を入れた。


「どうぞ!」







境界線は次で終わりです。

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