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黎明の空  作者: 綴樹
25/28

境界線5


「ええと、つまり好きな男の方に振り向いてほしいサクラ様と、白いお方が同調してしまって、スオウさんを閉じ込めてしまった、と。」

「そうなるね。まあ、出れないわけじゃないんだけど、そうなるとサクラ姫の精神が壊れてしまう可能性があってね・・・。」


僕そういう細かい作業苦手だし。


スオウさんはにこにこにっこり。

大技メインですかスオウさん。

なんだか前に私の時もそんなことがあったような。


「知り合いに頼んでサクラ姫の精神をあの女と切り離してもらってるんだ。仮にもあの女は王のうちの一人だし、下手に切り離すと反撃を食らうからね。少し難航してるみたいだけど。」




「それで、その姿なのは・・・。」


「彼女やあの女が知ってる姿だと居場所がばれてしまうからね。さすがに僕はあの男たちみたいな姿になりたくない。もし見つかったらサクラ姫ぐらい壊しちゃってもいいかなと思ってたんだけど・・・。どうやら見つかっていないみたいだね。」



にこにこ恐ろしいことを告げるスオウさん。

サクラ姫のことは一応気を使ってるみたいだけど最終的には見捨てる方針ですか。

そうなんですか。

なんて恐ろしいこと。


「ええと、もし仮に見つかって・・・彼らと同じ状態になったらどうなるんです?」

「どうやら彼女のことが好きになって、永遠に夢の中で生き続けることになるようだね。好きな風景にできるのは、自分の世界との境界線を曖昧にして違和感をなくすためのようだし。」

「げ。」


なんだその恐ろしい設定。


「・・・でもなんで私はこの空間に?」

「リンシャ、この空間に来る前はどこにいた?」

「魔術の塔です。」


ああやっぱり、という風にスオウさんはこちらを向くと、私の胸のあたりをす、と指差した。



「魔術の塔は異界とあの世界の境界だからね。夢の世界もある種の異世界。そこでこの結界石と僕の魔力が反応したんだろうね。」


胸元には師匠の結界石。


「スオウさんの、魔力っていうのは・・・。」

「うん。ちょうどリンシャに会いたいなあって思ったところだったから。おそらくそれに反応したんだよ。それ、カメリアの結界石でしょう?」

「師匠とお知り合いですか!?」



なにやら私に会いたかったなどという言葉が聞こえたような気がするがそれよりなにより師匠の名前に反応する。



「あれ?もしかしてリンシャ知らなかった?」



カシャーーーーン



なにを、と尋ねようとしたところで甲高い音が響き渡った。


急速に空間がゆがんでいく。


「え、なに、なにごと」

「ああ、カメリアの切り離しが成功したみたいだ。」



周りの風景が漆黒に代わり、とっさにスオウさんに手を伸ばす。

平衡感覚がなくなったところで差しのべられた腕にしがみつき、スオウさんの「大丈夫」という声とともに意識がブラックアウト。


よくわからなかったがなんとなく助かったのだということだけは理解した。




*************




「ああ起きましたか認めたくありませんが一応妹弟子のリンシャ・R・ファラン。まったくあなたときたらカメリア様にご迷惑をかけるだけに飽き足らず「おはようございますおきました一応兄弟子のラヴクラフト様!!!!!」



起きた途端嵐のようにまくしたてられ、必死で言葉を遮った。

起きたばかりで頭がくらくらする。

どうやら師匠があの空間から私たちを救い出してくれた様子。



周りを見回すと、なんとなく見覚えのある・・・・師匠、カメリア様のお抱え屋敷の一室だとわかる。

なぜなら修業時代寝込むとよくこの部屋に寝かされていたからだ。

守りの防壁と癒しの魔術のかかったこの部屋は傷や精神的な疲れの治りが4倍速。

医療機関生唾物の部屋である。


「起きたのならさっさと身だしなみを整えてください。カメリア様がお待ちですよ。」

「あ、はい。」


ラヴクラフトに急かされてとりあえず髪やら何やらを手櫛でなおし、後を追う。

それにしても相変わらず気遣いのできない兄弟子である。

まあ、彼の場合何をおいてもカメリア様が第一。

魔術の徒の間でもその性格の悪さととっつきにくさは天下一品。敵もかなり多かった。

その並外れた容姿と毒舌と驚異の魔術で誰にも文句は言わせなかったが。


廊下の突き当たり、師匠の部屋の前で声をかけて入室する。


そこには豪華絢爛な、食事が。


湯気を立てているとろりとしたスープ。

みずみずしい野菜のしゃきしゃきサラダ。

油がぱちぱちはじけている牛肉。

まるっとした

「リンシャ。食事の前に僕らもいるからね。」


しまったついうっかり目の前にいるスオウさんやら師匠やらを通り越しおいしい料理に目が釘付けになってしまった。

それにしても美形美人<<<食事。本能とは恐ろしいものよ。

「それにしてもあのデザートおいしそいたたたたたたた。」


目の前が暗くなったと思ったら両頬をつかまれてスオウさんの方へ向かされる。

今首変な音したような。

っていうか捻られた首が地味に痛い。


スオウさんがにっこり笑っている。

相変わらず神々しい。

顔が近い、と若干怯むがこの笑顔の意味を考えてがっくりしてしまった。


『本当に学習能力がないよねリンシャは。どうしてくれようか。』

って思ってますよね絶対。

ああ笑顔で頷かないでください!


スオウさんの肩越しには師匠が苦笑しており、ラブクラフトは・・・師匠しか見ていなかった。



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