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黎明の空  作者: 綴樹
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始まり


私は非常に困っていた。


刻は深夜。綺麗な綺麗なお月様が・・・出ているのかどうか見る気力も無い。

人間は、どうしてこんなに不便なものなのだろうかとこの身体構造に文句を言いつつ、足を進める。

・・・やばい、倒れそうだ。

否、もう膝が地面に付いた。


「・・・ぐ、もう駄目・・・。」


これで私の人生も終わりかと諦めかけていたとき、ふと頭上に影がさした。


「死ぬのかい?人間。」


・・・・・。人間、と問いかけられましたということはこの方人間ではないということでしょうか、とどうでもいいことが頭を過る。


「・・・どうでもいいけど、死ぬんならもう少し早く言ってくれれば食事の手間が省けたのに・・・。」


拗ねたような声が聞こえてきた。おい、それはどういう・・・。

最後の力を振り絞って頭上を見上げると、それはそれは美しい顔があった。

・・・・・・天使?・・・なわけないか。

美しい藍色の髪に・・・・・。

その一族の特徴を現す紅い、眼。


人の血を好む、超高位の魔物、妖魔族の御方ですか。しかもこの妖気・・・たぶん上級だ。ううむ、感無量・・・。


「わ~上級妖魔族。始めて見た・・・。」


「え、それだけ!?ってかほんとに死にそうだよ君。」


「うふふ、もう何週間もまともな食事にありつけていないのです・・・空腹です・・・はあでも致し方ありませんねここであったが百年目、貴女様にこの血を・・・差し上げても良いんですけど・・・その前にご飯食べたい・・・・!」


とりあえず叫んでみるも、もう身体は動かない。

「百年目って、使い方が違うと思うけどねえ・・・。」

それを面白そうに見遣っていた妖魔族の御方は微妙にずれた突込みを返してくれた。なんだかよくわからないが大変気さくな?妖魔族の人らしい。

「思えばそんな栄養価も何も無い血、飲みたくないし。僕は美女からしか血、とらないし。」

「どうせ私は美女じゃないです。」

どうやら血を吸われる心配は無いらしい。なら早くどっかに言ってほしいものだ。

「じゃあごきげんよう~。妖魔族の御方~私は夢の世界へランデブ~・・・。」

空腹のあまり頭がおかしくなってきたようだ。

目を閉じようとした私に目の前の御方の慌てたような声が聞こえる。


「あ、ちょっと!そこで寝たら君ヤバイから!もう少し生きる気力ってモノを・・・」


なにやらいい妖魔族の御方だな~世の中そう捨てたもんじゃなかった。なにやらがさごそ音がするけれど私は幸せだったよ・・・・・・・・・。おやすみなさい。





ブラックアウト・・・しかかったとき、おいしそうな燻製の匂いが。





「がぶり。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手までかまないでくれる?」


「あ、むみまめん・・むぐむぐ」


「・・・いや、いいけどね・・・。」



いかんいかん、かの御方・・・いやもう恩方か、が差し出してくれた燻製の数々を口に詰め込み、ようやく空腹感が一段落する。視線を感じて上を見上げるとなにやら観察されている様子。



「・・・ああ、えっととりあえずありがとうございました。」

「いやいや、困ったときはお互い様だよ。」


にっこり微笑んでおっしゃいました。

・・・・・・・・・この人本当に妖魔族なんでしょうか?天使様の間違いとか。宗教の関係上、妖魔族は悪ってことにしないといけないから、悪いうわさが多いだけとか。まあ、なにはともあれここはなにか恩返しせねば人としておかしいでしょう。



「ところで何故君はこんなところに?」



はて。何故だっただろう?





「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・?」





「・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」

「あ?」





そうだ。そうだった。

「あ、あの!このあたりを根城にしている最上級妖魔族のお一人様を・・・」

知りませんか、と言おうとして嫌な予感に苛まれる。

いや、まさか、そんな、だって。



「僕だけど?」



極上の笑顔で微笑まれてしまった。

・・・もちろん私は固まった。



「それで、僕を探してどうするの?」

「・・・・あー、なんといいますか、そのー。」



どうしようどうしようどうしよう。そればっかりが頭を回ってうまく事が出てこない。

そもそもこんな簡単に最上級の妖魔族と会えるっておかしくないデスカ!?



「ええと、フィラン家のエリナという少女を知りません、かー?」



間抜けです!なんて間抜けな質問なんでしょう私。しかも棒読み。問い詰めるんじゃなかったのかー!?



「ああ、有名だよね。」

「えええええ!?」



知ってる!しかも有名ってなんじゃそら!?←もはや言語崩壊。と、とりあえず下手に出て様子を窺うしか。



「ああああ、あの、何故に妹をご存知なのでせう・・・?」

「え、妹・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「?」

「・・・・・・。」

「?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」



まじまじと顔を見られる。



「・・・・・・・・・・・・似てないね。」

「放っとけーーーーーーー!!!・・・・ってうわああああああ怒鳴ってごめんなさい違いますこれはちょっとした条件反射で謝りますから許してくださいマジごめんなさいいいいいいいいいいいいいいい!」


やばい反射的にまた怒鳴ってしまった。いくらなんでも最上級妖魔族にこの態度は死んでくれってなもんだろう。妖魔族はプライドが高いからなとへいこらし、おそるおそる様子を窺うと・・・・。




「あははははははは―――――――――!」


爆笑されていた。

なんですかこの妖魔族は。


「はは、ああおかしい。気にしなくて良いよ。僕は妖魔族の中でも変わり者だからね」

それは見ればわかります。


「そ、それよりも妹!妹のことを教えてください!」

「ああ、シュオルの新しい愛人だよね。」

「あいじん!?・・・てかシュオルって誰ですか!?」


「5人の最上級妖魔族の一人だよ。僕とはそりが合わなくてねえ・・・。でもこの前あったときになにやら上機嫌でさ。連れていた子が誰か、彼の部下に聞いたらそう言ってたよ。」

「・・・・てことは!い、生きてるんですかそんな馬鹿な!死体はちゃんと棺桶に!」

「死体を細工するなんて僕らにとっては児戯にも等しいよ。」


さらりと言われて言葉に詰まる。そうでした。この人も最上級なのでした・・・。


「で?探し出してどうするの。」

「・・・・・・・・・え、どうする・・・ん、で、しょう?」

「え、考えてなかったの?」

またもや驚きと共にさらに面白そうな顔をした上級妖魔族一名。というよりも、現実問題がせっぱつまっていたため、とりあえず妹のことが好きだった最上級を探すというわけのわからない状態に何の疑問も持たなかったのだ。

あとは・・・本当は、ちょっとだけ、見てみたかった。

妹が惚れたと言うその妖魔族を。

そして、あわよくば。

自殺も出来ず、かといって仕事も出来ず飢死寸前の私を。

妹を殺したように、とまではいかずとも、楽にしてくれるのではと・・・・・。

「駄目だよ。」

「うわ!」


いいいいま何について駄目って言ったのこの人・・・じゃなかった妖魔族???

なにやら自分の思っていたことを読まれてしまったようで落ち着かない。



「なんでもないよ。それで、どうするつもりだったの?」

「ええと、復讐・・・なんて大それたことができるわけもなくいやでもあの、ああそうだ生きてるっていうんなら一度でいいから家に帰って」

「無理だろうねえ・・・。」

「なんでですか?」

「シュオルは妖魔族らしい妖魔族だからだよ。独占欲が強くて自分が一番タイプ。人の気持ちはわからないだろうね。もしも妹さんが帰りたいと思っていたら逆に束縛するタイプかな。」


む、うちの妹は駄目男に惹かれるタイプだったんですか・・・。ごめんなさいお姉ちゃん甘やかしすぎました。


「・・・・・・・・・・。そういえば貴方様のお名前は?あ、私リンシャと申します。」

「僕?・・・スオウだよ。ふふふ、自分から名前を聞いてきた人間は初めてだ。いきなり攻撃してくるかうっとりするか逃げる人しかいないのに。」


いやそりゃあそうだろう。世の中の妖魔族に対する評価は畏怖と敵対心がほとんどだ。

それでもスオウ・・・さんがなにやら嬉しそうなのでそっとしておくことにした。

何でこんなに人間くさいんだろうこの人・・・じゃなくてこの妖魔族・・・。


「まあ、僕は半妖魔族だからね。半分人間。」


・・・こころよみやがった

じゃあさっきのももしかして。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・って、え?


「・・・・半妖!?」


リンシャ・R・フィラン。希少生物と遭遇する。


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