その祝福に、さよならを
初めてのAI使用作品です。習作がてらガッツリ使いつつ、あえて苦手分野にチャレンジしてみました。
七転八倒しつつも、とりあえず『違和感少なく読めるレベル』にはなったので投稿。普段の投稿作品と毛色やクオリティは少々違うと思います。
プリス・リーストは、幼い頃から『母に似た娘』と言われ続けてきた。
それは本来、誉れのはずだ。
何故ならば、リースト家は代々、上級聖職者を輩出している名門であり、亡き母もまた敬虔かつ清廉な女性として語り継がれていたから。
だが、それはプリスにとって氷のように冷たい足枷。
母の死因は自分を生んだ際の事故だという。いなくなった彼女の代わりに、プリスが産まれた。
それゆえ屋敷の者たちは、プリスの仕草ひとつに亡き母の影を過剰に重ねた。
「その微笑み、お母様もきっとお喜びになります」
「今日はお母様もきっとお嘆きでしょうね」
悪意のない、慈悲深くさえある……けれど「プリス」という存在を塗りつぶしていく言葉。
さらに彼女には、季節の変わり目ごとに寝込む原因不明の病弱さがあった。薄暗い寝室で、氷のような指先を胸に当て、浅い呼吸を繰り返しながら彼女は何度も自分に問いかけた。
(私は……『死んだ母』の代わりに息をしているだけなの?)
跡目を分家の男が継ぐことが決まった頃。彼女にひとつの婚約が持ち上がる。
相手は呪術師、ジノ・ブラック。原因不明の病を「呪い」ではないかと疑った実家が、病の解明を条件に結んだ政略結婚だった。全ては、亡き母親の忘れ形見である彼女を生かすために。
初めて対面した日、ジノは屋敷を一通り見回し……吐き捨てた。
「歪だな。皆、君を見ていない。死者の影を拝んでいるだけだ。呪いよりタチが悪い」
冷徹な言葉だったが、今になって思えば彼の瞳だけが真っ直ぐに自分を――「生きている、プリスという本人」を正確に捉えていたように思う。
婚約後、ジノは献身的に彼女の傍に寄り添い、病の正体を追い続けた。
そしてある夜、彼女の細い手首に触れ、冷えた肌を撫でていた彼は『そうか……』と低く呟く。
「……やっとわかった。これは呪いではない。強力すぎる『祝福』だ。それが君の身体を蝕んでいる」
「祝福……ですか?」
「ああ」
ベクトルは違うが『強い念が身体に影響を及ぼす』という意味で祝福と呪いには親和性がある。双方は薬と毒のようなものであり……使い方によってはどちらにも転ぶ。
「君にかけられている祝福はきっと、対象の魂を『あちら側』へ送る類のものだ」
背筋が凍りついた。一体、何故?
自分を慈しんでいるはずの家が、環境が、すべてが自分を死へ誘っていたとでもいうのか。
「真相を確かめる」
ジノはプリスを連れ、屋敷の開かずの間――亡き母の旧書斎へと向かった。
「おそらく、ここに『因果』がある」
錠を破り、奥の暗がりからジノが引き出したのは、一冊の古い日誌と、木箱だった。
箱を開けると、中には小さな二つのロザリオとーー陽の目を見なかった純白の手縫いの洗礼衣が収められていた。
「……やはりな」
ジノは見せた紙面と遺品を示しながら、静かに語り出す。
あの日、正妻である母と、使用人の女が同時に産気づいた。正妻の子は死産。そして二人の大人も命を落とした。
生きて残されたのは、『使用人の産んだ赤子』だけだった。
「その後、家の体面のため二人の子はすり替えられた。息絶える直前、産婦だった使用人の女は『この子に明るい未来を』と涙を流してすり替えを受け入れたそうだ。そこまでは問題ない、だがーー」
ジノは日誌のページを指でなぞる。そこには、正妻が事切れる直前に遺した言葉が記されていた。
『愛しい我が子、プリス・リースト。無事に楽園へ行けますように――』
プリスは小さく震える手で、箱の中の小さな洗礼衣に触れた。
冷え切った布地の感触。それは、死んだ本物のプリスに与えられるはずだった「正妻の深い愛」の形だった。
「……正妻は、死んだ我が子のために最後の力を振り絞って『安らかな死』を祈り、それが強い祝福として授けられた。だが、すり替えられた君が亡子の名を受け継いだことで、その祝福は君の魂を楽園へ連れて行こうとし続けている」
部屋に重い沈黙が流れる。
正妻の愛も、生みの母の祈りも、屋敷の者たちの優しさも、すべて本物だった。けれど、そのすべてが「プリス」という偽りの名の中で、彼女の首を絞める無慈悲な毒となっていたのだ。
「誰も……悪くなんて、なかったのに」
溢れそうになる涙を堪え、プリスは小さな手で洗礼衣を固く握りしめた。
ずっと、誰かの影として死を待つだけの人生だった。だが真実を知った今、彼女の胸の奥に小さな光が灯った。
命の炎の種火が。
「……怒らないのか?」
ジノの問いに、プリスは首を横に振った。
「怒りません。みんな、優しい人たちだったから……。でも――」
プリスは瞳に強い光を宿し、ジノを真っ直ぐに見つめ返した。
「もう、死んだ誰かの代わりに殺されるのは嫌です。私は……私のために生きたい」
頬を一筋の哀しみが伝う。
その言葉は静かだったが、初めて、己の口から放たれた魂の叫びでもあった。
ジノは一瞬目を見張り――やがて、その唇を微かに和らげた。
「……俺はな、呪術師として今まで見苦しい嫉妬や怒りに塗れた人間ばかりを見てきた。『なんで自分だけがこんな思いを、許せない』とな。だがーー」
プリスの頬にそっと触れる。
「君だけは違った。死の影に苛まれながらも、誰かを恨むことすらせず、静かに立ち向かおうとしている」
その手は、冷え切ったプリスの肌とは対照的に、驚くほど温かかった。
「そんな君を、死なせたくはない。だから俺の手で救うと決めたんだ」
ジノは差し出した。それは「母の娘」ではなく、「プリス」というひとりの人間を求めて差し出された、唯一の手だった。
「祝福を解く方法はひとつ。俺と結婚し、その名を捨てろ。リーストの家名と縁を切り、君が『プリス・ブラック』になれば、祝福は導くべき対象を見失う」
プリスは迷わず、その温かな手を強く握りしめた。
「はい。私は……あなたの妻として生きます」
数ヶ月後。
ブラック家の庭園には、眩しいほどの陽光が降り注ぎ、色鮮やかな花々が咲き誇っていた。
プリスの頬にはやわらかな赤みが差し、その足取りは軽く、しっかりと温かな大地を踏みしめている。
かつての息苦しさは、もう感じない。
今、彼女の胸を満たしているのは、自分自身の意志で深々と吸い込む、誇らしい空気だった。
「プリス」
低く穏やかな声に振り返ると、ジノが日傘を手に立っていた。
「あまり無理をするな。……まあ、顔色はすこぶる良いが」
「フフ、あなたのおかげです」
「違うと言っているだろう。君が自らの意志で『生きる』ことを決めているからだ」
ジノは日傘を差し掛け、包み込むように彼女の手を握った。重ねられた体温が、じんわりと心まで伝わってくる。
亡き母の影でもなく、偽りの名誉でもない。自分自身の足で歩む、温かな未来がここにはあった。
「帰りましょう、ジノ様」
プリス・ブラックは、満開の花々の中で、晴れやかに微笑んだ。
ちなみに、AIに批評させたら『君の他の短編作品より、点数落ちてるで(100点満点で言うと本作が約60点、他作品は80〜90点くらい)』とのこと。
ほとんどお前が書いたくせに……いやまあ、道具を上手く使いこなせない私の問題なんですけどね。




