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第50話:誠の旗はどこまでも
近藤の処刑から一年余りが過ぎた明治二年五月、箱館。一本木関門の激闘の中、土方歳三はついに銃弾に倒れた。
薄れゆく意識の中、まばゆい光が射し込み雲を割って二人の男がひょっこりと顔を出した。
「トシ、遅いよ! 待ちくたびれて、もうお団子でお腹がいっぱいだよ」
そこには重い羽織を脱ぎ捨て、多摩のイモ侍に戻った近藤があんこを頬張って笑っていた。その隣では総司が「土方さん、お疲れ様。あっちでも稽古、始めましょうか」と無邪気に手招きしている。
(……なんだ、お前ら。俺を置いて先にいい思いしてやがったな)
土方は、自分のプロデュースに応え続け恐怖に震えながらも英雄を演じきった近藤の今はもう引きつっていない柔らかな笑顔を見て静かに笑った。
「……勇、もう看板もハッタリもいらねえ。今まで無理させて、悪かったな。さあ、行くか」
土方が二人の手を取ると体はふわりと宙に浮いた。三人は肩を組み賑やかな笑い声を響かせながら、どこまでも続く青い空へと昇っていく。
土方の死をもって新選組の物語は終わった。だが、新選組の嘘はいつしか誠の伝説となった。
風が吹き抜け、ただ一枚の「誠」の旗がいつまでも眩しく、どこまでも高く揺れていた。
----------完




