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第47話:斎藤一、北へ
永倉や原田も去り、屯所は火が消えたように静まり返っていた。近藤は一人、影のように現れた斎藤一に向き合った。
「斎藤君、僕はもう局長という役目を終えようと思う。君は会津へ行きなさい、そこで君自身の士道を貫くんだ」
近藤はただ、死地へ向かう自分から斎藤だけでも遠ざけようとしたのだ。だが、その揺るぎない瞳を見た斎藤は、それが新選組の誠を託すという究極の密命だと確信し静かに一礼して北へと去った。
独り残された近藤の前に土方が現れる。包囲網が狭まる中、近藤は土方の肩を叩き穏やかに笑った。
「トシ、僕が出頭するよ。大久保大和という偽名で時間を稼ぐ。その間に君は生き延びて、僕たちの生きた証をどこまでも運んでくれ」
土方は「馬鹿を言うな」と詰め寄ったが近藤の顔には、もはやハッタリではない友を守るための強固な意志が宿っていた。
「最後位は、近藤勇に任せてくれ」
近藤は、泣き出しそうな土方を背に静かに敵陣へと歩き出した。それは、小心な男が初めて新選組局長として親友の為に踏み出した勇敢な一歩であった。




