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第46話:長倉、原田への優しい嘘
組織の再編を巡り、永倉新八と原田左之助が近藤に詰め寄った。近藤は度重なる敗北と恐怖で心が折れており、ついに逆上して本音をぶちまけた。
「……もう局長なんて辞めてやる! 君たちも勝手にしろ! 僕はもう一歩も歩きたくないし、戦いたくもないんだ。どこへでも好きなところへ消えてくれ!」
近藤は顔を真っ赤にし、子供のように駄々をこねて二人を部屋から追い出そうとした。
だが、近藤の岩石顔から放たれるその言葉を永倉と原田は驚愕の表情で受け止めた後、共に熱い涙を流した。
「……そうか。局長は自分ひとりが逆賊の汚名を被り俺たちを生き延びさせるために、あえて悪役を演じて突き放してござるのだな!」
原田は拳を握りしめ、永倉は深く頭を下げた。
「その優しい嘘、痛み入ります。近藤先生、あなたの男気この新八は一生忘れません!」
近藤は「……嘘じゃない! 本当に嫌なんだよ!」と絶叫しながら二人の裾を掴もうとしたが二人は「俺たちがいたら先生に迷惑がかかる!」と近藤の手を振り切って屯所を飛び出していった。
静まり返った部屋で近藤は「……行かないでよ」と虚空に手を伸ばし、ただ一人取り残されるのであった。




