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第43話:終の始まり
甲府城を目前にした勝沼の戦いは、最新鋭の銃火器の前に新選組のハッタリが初めて粉砕された日となった。近藤は、恐怖で馬を暴走させて誤突撃を敢行したが戦況は覆せず隊は壊滅。泥まみれで逃げ延びた近藤は、震える手でお団子を口に押し込んでいた。
「……トシ、もうおしまいだ。武士の時代なんて、最初からなかったんだよ」
絶望に沈む近藤の前に見慣れぬ黒い影が立つ。顔を上げると、そこにはだんだら羽織を脱ぎ捨てフランス製の軍服に身を包んだ土方が不自然なほど背筋を伸ばして立っていた。
「……勇。刀の時代は終わった。これからはこの姿でスマートに勝つ」
土方はシリアスな顔で語るがその手は落ち着きなく不慣れなサーベルの柄を弄っている。近藤には分かった。トシは、単にこの新しい格好を自慢したいだけなのだ。
「トシ……君、形から入るタイプだもんね」
近藤は、親友の相変わらずなカッコつけに少しだけ救われた気がした。
夕闇の中、新しい服の匂いをさせた土方と古びた羽織で泣き笑う近藤。二人の間を時代の終わりを告げる冷たい風が吹き抜けていった。




