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第38話:源さんの盾

一時的な勝利も束の間、新政府軍の圧倒的な物量を前に新選組は総崩れとなった。降り注ぐ弾丸の雨にで近藤は恐怖で理性を失い、腰を抜かしながら泥の中を這うようにして後退していた。

「……ひ、ひいっ! 源さん、逃げて! ここは地獄だ、今すぐみんなで多摩に帰ろう!」

近藤は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、必死に源さんの裾を掴んで叫んだ。

しかし試衛館時代から近藤を見守ってきた井上源三郎は、その姿を全く別に解釈した。彼は近藤が自分を突き飛ばして逃がそうとしているのだと思い込み、温かい微笑を浮かべた。

「……勇さん、無理をしちゃいけません。あなたは試衛館……今は新選組の看板だ。あなたが生き残れば、新選組は負ける事はありません」

源さんは、近藤の逃げ腰を自分を犠牲にしてでも仲間を救わんとする最後の教育と受け取った。源さんは近藤を安全な物陰へ突き飛ばすと刀を抜き、敵軍の前に立ちはだかった。

「新選組を倒したくば、この源三郎を斬ってゆけ!」

近藤が「……違う、源さん戻って!」と絶叫した瞬間、銃声が響いた。源さんは、仲間の囮となって立派に死ねたと信じ満足げにその生涯を閉じたのである。

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