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第35話:大政奉還
慶応三年。徳川慶喜が大政奉還を行い、ついに幕府が消滅した。このニュースを聞いた近藤は、屯所の中でこれまでにない晴れやかな笑顔を見せた。
「トシ! 終わったよ! 幕府がなくなったんだから、もう戦う理由がない。新選組も解散だ、多摩に帰って皆でお団子屋さんでも始めよう。僕は立派な看板親父になるよ!」
近藤は、重荷を下ろした安堵感から鼻歌交じりに荷造りを始めた。
土方は冷たい手つきで近藤の荷物を箱に戻し、その耳元で悪魔のように囁いた。
「……何言ってるんだ、勇。まだ俺たちの野望は終わっちゃいねえ。幕府がなくなった今こそ、お前を旧幕府軍の象徴という名のカリスマに仕立て上げる最高のチャンスなんだよ」
土方は、絶望して固まる近藤を無視し隊士たちの前で宣言した。
「いいか、お前ら! 局長は、幕府が消えてもなお徳川への義を貫く覚悟だ! この笑顔を見ろ、時代が変わる程度では揺るがぬ不敵な笑みだ!」
近藤は「……違う、これはやっとお団子屋さんになれる喜びなんだよ!」と叫びたかったが土方の放つ執念のオーラに笑顔のまま固まるしかなかった。




