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第32話:油小路の変(後編)

伊東の遺体を引き取りに来た藤堂平助らに対し、土方は待ち伏せを仕掛けた。空腹に酒を流し込み、すっかり泥酔した近藤は屯所の外へ這い出し「平助、逃げろ!」と叫んで彼を救おうと両手を広げて突進した。

だが、酔った近藤の動きは予測不能で凄絶な泣き顔は平助には裏切り者を自らの手で裁きに来た鬼の形相に見えた。

「先生……わざわざ僕を葬りに来てくれたんですね。かつて見たあの殺気の指先を……今、両手に広げて……」

平助は近藤の叫びを覚悟を決めろという最期の慈悲と受け取り、穏やかな笑みを浮かべて刀を収め敵の刃の前に身を投げ出した。

「……ありがとう、先生」

近藤が差し出した手は空を切り、平助は崩れ落ちた。近藤の絶叫は、周囲には裏切り者に報いを与えた鬼の局長の凱歌と聞こえ、土方がその横で「さすがは鬼の局長だ」と冷たく喧伝した。

翌朝、道端で寝ていた近藤は激しい二日酔いの中で「……平助どこ行っちゃったの?」と腫れ上がった目で虚空を見つめるばかりであった。

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