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第28話:岩石男の恋煩い

「勇、お前には色気が足りないな。英雄色を好むというだろ」

土方は勝手に島原の売れっ子芸妓との設定をセッティングした。近藤は「僕にはおつねがいるし……」と拒絶したが、土方は「これは広報活動だ」と無理やり豪華な着物を着せ座敷へ放り込んだ。

近藤は緊張のあまり顔面が硬直し、深海魚のような目つきで目の前の美女を凝視した。

(……どうしよう、何を話せばいいんだ。お天気の話か? それとも虎徹の磨き方か?)

近藤が口を開こうと「……あ、あの」と身を乗り出した瞬間、その凄まじい眼力に圧された芸妓は「ひいっ! 殺される!」と悲鳴を上げて逃げ出した。

廊下で待機していた土方は、逃げてきた芸妓を捕まえてニヤリと笑う。

「……見たか。うちの局長はあまりに高潔すぎて、女が気圧されてしまうのさ。これぞ、真の武士の風格だ」

土方は翌日、京の街に「新選組局長は島原の花魁を眼力だけで失神させるらしい」という噂を流した。

近藤は屯所の片隅で「僕、そんなに怖い顔かなぁ……」と鏡を見ながら人生最大の自信喪失に陥っていた。

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