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第25話:抜かずの名刀虎徹

近藤は、屯所の縁側で愛刀虎徹を前に途方に暮れていた。あまりの緊張で柄を握る手に力が入りすぎたのか、あるいは刀の反りと鞘が噛み合ってしまったのか物理的に刀が抜けなくなってしまったのだ。

「……ぬ、ぬぬぬ……っ」

顔を真っ赤にして踏ん張る近藤の元へ、若手隊士が人生の悩みを相談しにやってきた。「いかに生き、いかに死すべきか?」という重い問いに対し近藤は刀を抜くのに必死で生返事すらできない。

近藤はあまりの情けなさと抜けない絶望感から、天を仰いで深く長い溜息をついた。

「……はぁ」

すると隊士はボロボロと涙を流し、その場に平伏した。

「分かりました! その溜息、言葉を超えた真理です。そしてその、一寸も刀を動かさぬ構え。抜く直前の殺気をすべて内に封じ込め、生死を超越しておられる!」

近藤はただ「抜けないんだよ誰か助けてくれ……」と半べそで鞘ごと刀を振ったのだが、その鈍い動きは神速すぎて見えない居合いとして神格化された。土方はニヤリと笑い、隊士たちに告げた。

「いいぜ勇、お前の抜かない決意が今や新選組の最強の刃だ」

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