第22話:板挟みの藤堂平助
合流したばかりの伊東甲子太郎の弟子であり、試衛館以来の身内でもある藤堂平助は二人の師の板挟みとなり隣で生きた心地がしなかった。
「近藤先生、これからの日本は……」
伊東が難しい政論を滔々と説く中、近藤はさっぱり話が理解できず脳が完全に停止していた。
(コウギセイタイって何だっけ?難しい言葉だなぁあ?伊東さんの鼻の横に小さな米粒がついている。取ってあげたいけど、失礼かな)
近藤は米粒をじっと見つめ、悩み、深い沈黙に陥った。
その様子を横で見ていた平助は、一人で冷や汗を流した。
「近藤先生のあの目……伊東さんの論理の綻びを突くどころか、もはや殺す機会を伺っているのか?!」
近藤が「よし取っちゃえ!」と決意して伊東の顔へ手を伸ばした瞬間、平助は「伊東先生が斬られる!」と勘違いし叫びながら間に割って入り平伏した。
「お、お許しください先生! 全力で尽くしますから……今は、この場をお収めください!」
何もしていない近藤は「えっ、あ、うん……」と驚いて手を引っ込めた。だが平助の目には、その指の動きが二人まとめて葬る死の宣告にしか見えなかった。今のは喉元を狙った突きだ、一瞬でも気を抜いたら殺される。
平助は、勝手に近藤の指先の残像を恐怖として脳裏に刻み込むのであった。




