第20話:鉄の局中法度
山南の死後、土方は組織を統制するため極めて厳しい局中法度を正式に明文化した。これに背けば即、切腹。近藤はその草案を読み、恐怖でガチガチと歯を鳴らした。
「……トシ。これ、僕も守らなきゃダメかな? もし僕がうっかりお団子を食べに行ったりしたら僕も切腹なの?」
近藤は自分のうっかり癖を自覚しているだけに恐怖で顔を青ざめさせ、土方の袖を掴んで震えていた。
しかし、この様子を見守っていた隊士たちの解釈は真逆だった。
「見ろ、近藤先生のあの震えを。法度を読み上げる手が覚悟で武者震いしている。ご自身をも律しようという、凄まじいまでの厳しさだ」
近藤が(……怖い、誰かこんなルール反対してよ!)と訴えるような眼差しで一同を見渡すと隊士たちは「反逆は一ミリも許さぬ」という冷徹な眼光だと勘違いし、一斉に畳に額を擦りつけた。
「ハッ! 命に代えてもお守りいたします!」
土方は、怯える近藤の肩を叩き満足げに笑った。
「いいぜ勇。お前のその震えのおかげで、鉄の結束が生まれた。これでようやく、新選組も一息つけるな」
近藤は「……そうか。厳しい決まりさえあれば、もう変な人は入ってこないし平和になるんだよね」とようやく安堵の溜息をついた。
だが、その安心も束の間。この鉄の掟を聞きつけ、さらなる理屈と理想を引っ提げた者達が門を叩こうとしていることを近藤はまだ知らない。




