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第19話:山南敬助の覚悟

新選組の理論派、山南敬助が突然の脱走を図った。近藤はショックのあまり、屯所の奥でボロボロと涙を流していた。

「山南さん……どうして、あんなに優しくしてくれたのに。僕を置いていかないでくれよぉ……」

近藤は大好きな親戚の兄さんがいなくなるような寂しさに耐えかね、引きつった泣き顔で追っ手に捕まった山南と対峙した。

だが、山南の目にはその顔は全く別のものに映った。

近藤の寂しくて歪んだ表情は、法を犯した友を許さぬ冷徹な処刑人の怒りに見えた。あふれる涙は、武士の情けで流す最後の慈悲と解釈されたのである。

山南は悟ったような微笑を浮かべ、静かに頭を下げた。

「……近藤さん、そのお顔で分かりました。私を斬ることで、あなたは組の規律を完成させようとしているのですね。その覚悟、お見事です」

「えっ!? いや、山南さん、僕はただ……っ」

近藤が引き止めようと手を伸ばすと山南はそれを介錯の宣告と受け取り、潔く死を覚悟した。

近藤の「行かないで!」という悲痛な叫びは、周囲には「生きぬことで法を全うせよ!」という厳格な号令と聞こえ、屯所全体が深い静寂に包まれた。こうして、山南敬助の切腹が新選組を最も非情な組織へと変えてしまったのである。

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