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第18話:清川暗殺の噂
池田屋事件の功績により、新選組は会津藩から盛大な表彰を受けることになった。だが、近藤はそれどころではなかった。江戸で清河八郎が暗殺されたという噂を耳にしたからだ。
「……トシ、聞いたか……あの清河さんが斬られたって。次は僕だ、次は僕の番なんだ……!」
表彰式の最中、近藤は恐怖と安堵が混ざり合いついに脳の許容量を超えてその場に卒倒してしまった。
真っ青な顔で倒れた近藤を周囲の藩士たちは畏敬の念で見つめた。
「見ろ……これほどの大手柄を立てながら、主君の前で緊張のあまり倒れるとは。己の功を誇らず、ただ職務の重圧に耐えていたのか。なんと謙虚な、真の士道をゆく男だ……!」
土方は、運ばれていく近藤の横で役人たちに神妙な顔で告げた。
「ええ、うちの局長は清河氏の非業の死を悼むあまり己の祝い事など上の空でして……これぞ武士の情けというやつです」
実際は恐怖で腰が抜けて気を失っただけなのだが、この失神によって近藤勇の名は手柄に溺れぬ謙虚の塊として京の街で不動の神話となったのである。




