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第17話:池田屋パニック
不逞浪士が潜伏する池田屋へ突入する夜、近藤は恐怖で膝の震えが止まらなかった。土方に背中を蹴飛ばされるようにして建物へ入ったものの階段の前でついに足がすくみ、石のように固まってしまった。
「……ダメだ、一段も登れない。上がったら最後、僕は斬られて死ぬんだ……!」
近藤は真っ青な顔で階段を睨みつけ、凄まじい脂汗を流しながら立ち尽くした。
だが二階で会合をしていた浪士たちは、階下から放たれる異様な沈黙と殺気(実は極度の恐怖)にパニックを起こした。
「……おい、下を見ろ。あの近藤が階段の出口を完全に封鎖しているぞ。一歩も動かず、我らが降りてくるのを今か今かと待ち構えてやがる……!」
逃げ道を塞がれたと思い込んだ浪士たちは、近藤の足のすくみを一人も逃がさぬという鉄の包囲網だと読み違えた。彼らは勝手に絶望し、窓から飛び降りたり腰を抜かしたりして次々と自滅。近藤がようやく一歩を踏み出した頃には、敵は一人もいなくなっていた。
土方はそれを見て、満足げに頷いた。
「一歩も動かずに敵を壊滅させるとはな。お前のすくみは天下一品だ」




