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第8話『小さな犠牲』
放課後の実験室。試験管がずらりと並ぶ棚の前で、リョウが足を滑らせた。未来音が鋭く響く。
「危険…!」
カイは即座に手を伸ばし、リョウを支える。倒れる寸前、二人の体がぶつかり合い、棚の一角に置かれた試験管が倒れる。ガラスが割れる音が響き、危機は最小限で回避された。
リョウは息を整え、少し笑いながら言った。
「お前、本当に頼れるな…」
カイも微かに笑う。しかし心の奥には不安が残る。小さな犠牲を防いだだけで、この先の大きな波を思えば、胸が重くなる。
ユナは少し距離を置き、冷静な目で二人を見守る。
「小さな変化も見逃さない…それが生き残る秘訣よ」
未来音が再び囁く。「波は連鎖する…次はもっと大きな波」
カイは深呼吸をひとつ、決意を固める。
「守るんだ、仲間も、街も…」
遠くの廊下で、黒瀬の低い声が風に乗る。
「小さな犠牲は、大きな未来を生む」
小さな波紋は、確実に広がり始めていた。




