8.決別
「ラビア宰相。私、バルコニー王様の正妃を辞めようと思いますの」
「え?」
ユーミアは、ラビア宰相にそう言うと、ラビア宰相はすっとんきょな声を出した。
「…別に特段辞めなくても良いと思いますが。そうしたら、どうされるのですか?次の正妃は」
「次の正妃は、バルコニー王の愛人、ミセス様を正妃に据えようと思いますわ」
「ミセスを?」
すると、ラビア宰相は眉間に皺を寄せる。
「…ミセス様は、ここに来て日が浅いですし、王妃として足り得ぬと思いますが」
「ええ。だから貴方がミセス様を育てて欲しいのです」
「私が…?」
と、ラビア宰相は言った。すると、わかりました。という声が聞こえる。
「ユーミア王妃も、何か感じることがあったのでしょう。貴女がそう決めたのなら私は何も言えません。受け入れましょう」
と、
「ええ。宜しくね。後日お話するわ」
「はい」
と、あっさりラビア宰相は引き下がった。
(…ラビア宰相って正直どこから何処まで本音で喋っているのかしら?)
ユーミアはラビア宰相に対してそう思った。
☓☓☓
そうして数日経ったある日ユーミアはラビア宰相と、バルコニー王、ミセスを一室に呼び出した。
バルコニー王はまだ来ておらず、ユーミア、ラビア宰相、ミセスがその場に居る。
「どおしたんですかあ。ユーミア王妃様。こんな所に人を集めて」
と、ミセスは自分の爪を見ながらユーミアに向かって言った。
「今から皆様と大事な話をしようと思って」
「大事な話い?」
「…私、王妃を辞めようと思ってます。そして代わりに、ミセス様が、正妃としてバルコニー王を今後支えて欲しいのです」
「え!?私が正妃!?」
すると、ミセスは体を乗り上げ喜んだ。
「それ、本当なの?」
「ええ」
「やったあ。じゃあ、もっと良いネックレスとか指輪が買えるのね」
と、ミセスは喜んだ。
ユーミアは、ミセスの言うことに顔を顰めた。
(…物品なんて、私はそんなもの要求なんてしていないし、バルコニー王から貰ったこともない。この方、王妃というものを勘違いしてるわ…。やはり、この方には責任というものはない。しかし、自分はそれでもこの女を王妃に据えようとしている)と、ユーミアは思った。
ーどうして。自分は、こんなにも王妃の立場を辞めたいのか。と思う。
そのまま王妃としての立場を存続し、バルコニー王を諦めてでも、国の事を考えていた方が良いに決まっているのに。
ーどう訴えても、ミセスを追放しない周囲を遺憾に思っているから?
(…いや、只、ミセスを追放すれば立場を悪用した悪女のレッテルが貼られるから。ただ。それだけのことよ)
すると、ユーミアは段々悲しくなった。バルコニー王に求められていないだけなのに。他人を下に見て悦に浸ろうとする自分が情けなかった。
(私だって、ミセスやバルコニー王と全然本質は変わらない。何かから逃げたくてしょうがない馬鹿な女だ)
ユーミアは泣きそうになったが、もうとっとと終わらせてしまおうと思い、ラビア宰相に事の経緯を説明してもらった。
ラビア宰相は王妃の仕事の事などざっくり話して貰う。
「わかりましたか?ミセス様」
「うーん、ううん?うん!うん!わかったわ!」
ミセスは資料を見ながらそう言った。
すると、
「ユーミア!」
と、慌ててバルコニー王がドアから入ってきた。
ユーミア!と、慌ててバルコニー王がドアから入ってきた。
「あ、バルコニー王さまあ」
と、ミセスが言った。
そしてバルコニー王はユーミアに近付く。
「先王から聞いた。王妃を辞めるって本当か!?」
「ええ。今からその会議をしていますわ」
と、ユーミアが間髪入れずに言うとバルコニー王は芋虫を噛み潰したような表情を繰り出した。
「…。本当の事なのかユーミア。何故だ。お前が居なくなったら、誰が王妃の仕事をこなすんだ?」
「ミセス様に任せれば良いですわ」
「いや、だから!ミセスは仕事が出来ないだろう!?」
「そうですよお…てっえ!?ひどおい!」
「お願いだ。王妃を辞めないでくれ。ユーミア…」
すると、懇願する瞳でバルコニー王はユーミアを見た。
ユーミアはそんなバルコニー王の様子を一瞥する。
「はっきりおっしゃられたらどうですか?私を都合よく扱いたいと。私を奴隷にしてこき使いたいだけだとね」
「え?」
すると、バルコニー王は目を瞬きさせた。
「そ、そんな!私はそういうことを言ってるわけではない!?ユーミアは王妃として頼りになるから、私はユーミアを頼っているだけだ!」
「ああ。それはなぜだと思うのでしょう?バルコニー王様」
「えっ!?」
「お分かりになられないですか?…それもそうでしょう。貴方は人の心がわからないんでしょうし。私が何度も掛け合っても何もしない。何度言ったってはぐらかす。そうして誤魔化してばかりの貴方の元になんかいたくないのです。もう、私は貴方に疲れ果てました」
「な…」
「だから貴方とはお別れしたい。只、それだけですわ」
と、ユーミアはバルコニー王に向かって言った。すると、
「…このクソ女がッ!」
と、バルニー王が机を叩く。
すると、周囲がざわついた。
傍に居たユーミアの護衛はユーミアを守り、その傍らにいるミセスや侍女達は、バルコニー王にびくついた。
ユーミアとバルコニー王に視線が集まる。
「っ…あ」
「まあまあ、バルコニー王様、落ち着いて下さい」
と、ラビア宰相が宥めた。
「ではお二人共破談ということで宜しいですか?ユーミア王妃。バルコニー王様」
「ええ」
「……」
「では、そう、ユーミア王妃も言っている事ですし、バルコニー王、ここはユーミア王妃の思いを汲んであげましょう」
「……」
バルコニー王は大人しく座った。
その後、どのように王妃を代わるか説明した。
☓☓☓
そうして、王妃を辞めたユーミアは荷物をまとめ、王宮から出ることになった。
すると、王宮に居る侍女や給仕係など、私を見送ってくれた。
「今まで有難う…皆」
そうしてお別れすると、ユーミアは父が用意してくれた馬車に乗って、ユーミアの実家に戻った。




