22.ユーミアとシリス
「…で、何故私が王宮に呼び戻されなければならないのかしら」
と、ユーミアは若干怒りながら隣のシリスに言った。
現在ユーミアは馬車に乗って、シリスと2人で王宮に向かっている最中だった。
「…それは、俺が王になるから、あの俺の拠点をどうするか?という話が出ててな、ユーミア元王妃に任せたらどうか?という話になったのだ」
「………何故そんな突飛な話が…?私孤児院の経営もありますのよ…?」
「いや。たぶんアラブが先王に話して、手を回したんだ。ユーミア王妃を又王宮に戻そうと…」
「アラブ…。あの方本当に策士ですわよね」
と、ユーミアはやれやれという風にアラブのことを言った。
「でも、私が行った所で何もならないと思いますけどね」
「そんなことはないさ」
「…しかし、シリス様の拠点の事は確かにどうしたら良いか…。それは気掛かりですわ」
「だろう?」
「…シリス様」
すると、じとっとユーミアはシリスを見た。
「…私が居なくても、彼処を何とかするのがシリス様の役目では??」
「…はい。そうです。仰る通りです…」
「でも、本当に、私は孤児院の経営があるので、そこを頑張りたいんですよ…。」
「でも、彼処から1人優秀な人間を出してしまったじゃないか。ユーミアは…。…だから実績があるんだよな。」
「だから私が呼ばれましたの?もしかして、あの兵士様の事ですか?」
「ああ。短期間で合格して、貴族になっているぞ」
「す、凄いですわね。あの方、優秀だったんですね」
「まあな。素直だからな」
「確かに可愛がられそうなタイプでしたわ」
「…じゃあ、あいつに任せるか?」
「それはまだまだですわよ。もう少し任せられそうな人が良いと思いますわ。しかし、それで良いのですか?シリス様は」
「別に。優秀だったら、平民だろうが、貴族だろうが。あの拠点を任せたいと思うぞ」
「そうなんですね」
と、ユーミアは言った。すると、
「…あの兵士気になるか?」
と、シリスが聞いてきた。
「いや、別に…何故そう思いますの?」
「いや、あの兵士、ユーミアに好意抱いていたし」
「…そうでしたね」
「…それに、最近、プロポーズをすると言っていたと報告があった」
「…え?冗談ですよね」
「本当だ。俺は、あいつの言うことは本気だと思っている」
「そ、そうなんですか?」
最近の若い人って怖いわ…。と、ユーミアは呟いた。本当に本気なのか?とユーミアはやはりその疑念が拭えないが。
「…でも、ユーミアも放っとかれないタイプだからな。…若干バルコニーの気持ちもわかる」
「…ああ。バルコニー様は無事シリス様の元に辿り着いたのね」
と、ユーミアは言った。
「……バルコニーの本当の気持ち知りたいか?」
「いや…もう終わったのでもう良いです」
「…そうか。ならいいか」
「…やっぱり聞きたいです」
「…バルコニーは、ユーミアが自分に構ってくれなくなって淋しくなったと。だからってさ」
「ああ。…でも、わたしに嫉妬させたかったってことですか?」
「そんな感じらしい」
「…そうなんですね。でも、その割にはミセスに入り浸っているから逆効果だとは思いますが」
「俺もそう思うよ」
と、シリスは切なさそうに笑った。
「まあ、でも伝えベタな所はあったかな。とは。そんな所かな」
「…そうですわね。…はあ。私、男心は良くわからないですわ…」
と、ユーミアは言った。すると、シリスがユーミアを見た。
「ユーミア。俺のことはどう思っているんだ?」
「シリス様のことですか?シリス様は気が合う友人です…」
「違う。男としてだ」
「あ、あの近いです。…シリス様」
すると、シリスは、ユーミアに顔を近づかせ、頬に手をやった。
「もう、はぐらかされたくないからな…いやか?」
「…別にいやでは、ないです、けど」
「…俺はユーミアの事を男として、愛しているんだ。だから、俺の妻になって欲しい」
と、シリスは言った。
すると、ユーミアは下を向く。
「…でも、又王妃になるのも違うと思うのです」
「そうだよな…」
「…あの、シリス様は王になりたいのですか?」
「…俺は可能なら降りたいな。ユーミアと一緒になりたいから。ユーミアがならないなら、俺もなりたくないんだ」
「じゃあ誰が王になるんですか?」
「うーん…。先王にでも任せるか」
「もう先王様は歳なんですよ…」
「でも、俺はユーミアじゃないと嫌なんだ」
「そ、そこまで…?」
「うん」
ユーミアは犬みたいに目を潤ませるシリスに困惑する。
「…又同じ事になるのは嫌ですの」
「俺は、バルコニーみたいな事はさせない。…先王にも愛人制度を廃止して欲しいと言ったしな」
「…そうなんですね」
「…ユーミアが王妃になりたくないなら、俺も王にはならないから」
「……」
ユーミアはシリスの言う事に黙った。
「…それでも、ごめんなさい。今は、考えられないわ」
と、ユーミアは言葉を絞り出した。
「…うん。…そうだよな。でも、俺は、ずっと前からユーミアのことを好きだったのを…伝えたかった」
「…いいえ。有り難う御座います。シリス様」
「…でも、それでも、…ユーミアの元へ来ても良いか?」
「ええ。孤児院に是非いらしてください。シリス様」
「ああ」
そうして、二人は王宮に向かった。




