21.謝罪
(でも、確かにお父様の言う通り実家にずっといるのは嫌だわ…)
と、馬車に乗っている最中にユーミアは思った。
父は途中で馬車から降り、ユーミアは1人で護衛と共に乗って帰ってきていた。すると、もう実家でありユーミアは馬車から降り邸宅に入ろうとする。すると、
「…ユーミア」
ユーミアは突然名を呼ばれ振り向いた。
「バルコニー、王様」
ユーミアの名を呼んだのはバルコニーだった。何もかも失った、バルコニーはボロボロの格好で髭が生えており、そんな姿でユーミアの所に来たのだ。
「…近付かないで下さい」
と、ユーミアはバルコニーに警戒した。ユーミアはバルコニーを睨んだ。
「…違う、俺はユーミアに危害を加えようとして来たわけではない。…俺は、ユーミアに謝りたかったんだ」
と、バルコニーは言った。
「…すまない。ユーミア」
と、バルコニーはユーミアに頭を下げた。
ユーミアはその間口を開かなかった。すると、
「…謝られても私を蔑ろにした事実は変えられませんわ」
と、はっきりユーミアは言った。
ユーミアがバルコニーにそう言うとバルコニーは黙った。
「私は相当傷付いた。私は何度もバルコニー王…いえ、バルコニー様に何度も何度も何度も、…私と共に政務をして欲しいと私は言った。しかし、バルコニー様はそれを無視し、私を捨て、ミセスの元に走った。それがどれだけ辛かったかわかりますか?」
「……」
「…いえ。仕事の事なんて本当は建前よ。本当に、私、…貴方の事を愛していた。だから、…私を無視して、ミセスの所にいかれて本当に、辛かった。最初から最後までミセスの味方だった!…それがどれだけ辛かったか!…今だって苦しいままよ」
「…ごめん…」
ユーミアは心の内をバルコニーにぶつけた。すると、ユーミアは突然涙を流した。
「つっ」
ユーミアは自分でも涙を抑えられなかった。ユーミアはやっとバルコニー王のことを忘れられると思っていたのに、今更目の前でのこのこ現れ、謝罪をされるとは思ってはいなかったからだ。
だからって、そのまま失踪して欲しかったわけではなかったが。
ユーミアは王妃であり、国のトップに立っていた為、感情を煩わせないと、いつも自分の感情を抑え込んでいた。
すると、バルコニーは驚き、しどろもどろとする。
(不味い)
と、ユーミアは自己内省をする。しかし、彼女は涙は止まらなかった。彼女は本当は思い切って泣いて喚きたい気持ちを持っていたのだ。
(本当、ミセスはずるいし、バルコニー様もずるいのよ)
と、ユーミアは思った。
都合の良い時だけすり寄って、相手を思うようにこき使おうとする所がユーミアは反吐が出る程嫌いだった。そして、こきつかったあげく、屁でもない態度をとる。そんな2人がユーミアは心底不愉快だと思っていたのだ。
「ユーミア、泣いているのか?」
と、バルコニーは聞く。
「いいえ。泣いていません」
と、ユーミアは、悟られないように言った。
「…今更何しに来られたのかは知りませんが、…私はもう二度と貴方とは会いたくない。それが答えですわ」
「…そうだよな」
と、バルコニーは言った。
「…でも、聞いてくれないか。俺の気持ちを…。最後だから。それに、もう政務の世界には戻らないから」
と、バルコニーは言った。
「…分かりました。…バルコニー様はどうして、私の元から離れたのか聞きたいですわ」
と、ユーミアは最後だからと思い、言った。
「…俺は、ユーミアの事は好きだった。…だけど、…ユーミアが多忙になってきたあたりから、俺の元から離れていくようになる、と、思ってしまった時から、…ミセスの事が大事になってしまったんだ。何でも出来るユーミアに嫉妬があった。…だから、…ユーミアから離れたくなったんだ。…愚かなのは分かっていた」
「…」
「…俺は弱い人間だ。…誰かに依存しないと生きていけないから…。それは、自覚しているつもりだ。謝りたいのは俺のエゴだ」
と、バルコニーは言った。
「…それを私に言ってくれたら、良かっただけではないですか」
と、ユーミアは言う。
「…ユーミアは何でも出来るから、頼りづらかったんだ」
と、バルコニーは言った。
「……私はそんな事で見下したりしませんわ。バルコニー様が私に甘えたいなら、私はいくらでも甘えさせますわ」
「………」
すると、バルコニーは顔を真っ赤にさせた。
「…いや、何か変な想像してませんか?」
「ち、違う…。でもやはり、何言っても言い訳になるな」
と、バルコニーは鬱々とした様子で言った。
「…別に言いたいことがあるなら言えばいいだけ。だから、私の元に来たんでしょう?」
「……」
「…でも、やはり、…謝りに来たという事実は、私、…とても嬉しいですわ」
と、ユーミアは言った。すると、バルコニーはユーミア…と言う。
「…貴方が自分のやっていた事を分かってくれて、そうして私に謝ろうとしてくれた事は、…私は受け止めますわ。…有難うございます」
「…ユーミア…」
「しかし、もし反省しているなら、もう二度と私の前に現れないで欲しいの。それがお互いの為だと思うわ。貴方は、私に暴力を奮った事があるのだから。きっと又同じ事をなさると思うわ」
「…そうだな」
と、バルコニー王は言った。
「…本当にすまなかったユーミア。…」
と、バルコニーは言い、それだけだ。と言ってバルコニーは踵を返した。すると、ユーミアはバルコニーに返したいものがあった事を思い出した。
「…ちょっと待ってください。バルコニー様」
「?」
そういうと、バルコニーは立ち止まる。そして、暫く待って貰い、又来ると、ユーミアはバルコニーに受け止めて下さい。と言うと、バルコニーに向かって袋を投げた。バルコニーは袋を受け止める。
そして、バルコニーは袋の中に入っているものを取り出す。
「…これは、俺がユーミアにあげたネックレス?」
「ええ。…お金に困っているのならこれを売るなりなんなりして生計を立て直されればいいと思いますわ」
「…その為にこれをずっと持っていたのか?」
「…私がそんなことすると思いますか?」
ユーミアはどす黒い声で返すとバルコニー王はい、いや…と萎縮した。すると、バルコニーは懐かしいなと思いながら呟く。
「…これ凄く高かったんだ」
「そうでしょうね。質屋に一回持っていったら相当高くて、鑑定士様が興奮なさってましたわ」
「…やっぱり売る気満々じゃないか!?」
「でも、ずっとしまっていましたの。それくらい大事なものでしたから。つけたくなかった。なくしたくなかったから」
「…つけないから要らないかと思っていた」
と、バルコニーは言った。
「…これは、俺が、学生時代にこっそりと身分を隠して働いたお金で買ったものなんだ。王族は働けないからな」
「これは王宮の財政ではないのですね」
「…………俺はそれぐらいユーミアに真剣だったんだ」
「へえ」
ユーミアはバルコニーに対して空返事をする。そして、
「…ありがとう。もう間違えない。そして二度と会わない」
と、言うと
「すまない。本当にすまなかった。ユーミア」
と、彼は頭を下げた。
「…シリス様が心配していましたよ。だから、私ではなく彼に会ってあげてください。大事な御兄弟なのですから。シリス様は私と比べて優しい方ですわ。…頼られたら何かしら助けて下さると思います」
「…そうだな」
「あと、病院にもいかれた方が良いですわ。顔色が悪いので」
「………そうだな」
「…そういえば、ミセス様とラビア宰相は?」
「…二人共連絡が取れてないな。…俺はずっと酔っ払ってたから良くわからないんだ」
「…そうですか。そうだ。なら、今からクロード家から馬車を出して、シリス様の元までバルコニー様を送りましょうか?」
「…いや。良い。自分で行くから」
「…では、シリス様に連絡しておきます」
「…有難う」
「…それではさようなら。バルコニー様」
「…ああ。…もう二度と会わない。じゃあな」
と、バルコニー王は謝ると、去っていき、暗闇の中に消えた。
「さようなら。バルコニー様。愛してましたわ」
と、ユーミアはつぶやいた。
しかし、ラビア宰相とミセスはどうなったのか。
でも、それはユーミアが知ることではないと、ユーミアは思った。




