転生悪役令嬢おじさん、美容学院で初授業する件
王都の朝。
真新しい看板には大きく刻まれていた――
「王都公認・淑女美容健康学院」
校門前には色とりどりの馬車がずらり。
絹のドレスに身を包んだ令嬢や奥方たちがざわめき、まるで舞踏会のような賑わいだ。
「本当に学院になったのね……!」
「ここで正しい美容法を学べるなんて!」
「砂糖パック卒業できるかしら」
そんな声に混じって、どこか不機嫌そうなリリアーナの姿。
「ふん……どうせ砂糖水に勝るものはありませんわ」
――大講堂の扉が開き、壇上に王妃が姿を現す。
「本日より、この学院は開校いたします。
健康と美は国の未来を支える柱。ここで学んだ知識を広め、王都を、そして国を輝かせましょう」
拍手が広がり、場内は期待に満ちる。
そして次に登壇したのは――俺、エレナ=フォン=クラウス(中身はおじさん)だ。
ドレスの袖からタオルを取り出し、額を拭って高らかに笑った。
「おーっほっほ! 淑女の皆さま、本日よりわたくしがこの学院の主任講師――“健康学部・美容科”の担任を務めますのよ!」
ざわめく受講生たち。
「ほんとに悪役令嬢が先生なの!?」「タオルがトレードマーク?」
俺は扇子を開き、ずらりと並んだ血圧計・スキンチェッカー・体組成計・日焼け止め壺を指し示した。
「本日の授業テーマは――“美と健康の黄金律”!
砂糖パックでも断食でもなく、科学と習慣で築く基盤を学んでいただきますわ!」
会場「おぉぉぉぉ!」
リリアーナだけは腕を組み、そっぽを向いていた。
壇上に並ぶはずらりとした「異世界健康器具セット」。
血圧計、スキンチェッカー、体組成計、そしてセバス特製日焼け止め壺。
俺は胸を張って高らかに宣言した。
「おーっほっほ! 淑女の皆さま、まずは“現状把握”から始めましょう。
健康も美容も、数値を知らずして語ることはできませんのよ!」
セバスが令嬢たちを誘導し、順番に機器へ。
最初に測ったのは血圧。
「上……180、下……110」
表示が出ると会場は騒然。
「ひぃぃ!」「砂糖水サロンに通いすぎたんだわ!」
俺はタオルで額を拭いながら扇子を打ち鳴らす。
「おーっほっほ! 砂糖で潤うどころか、血管が爆発寸前ですわ!」
次はスキンチェッカー。
油まみれ貴婦人の頬にピッ。
「油分値……290%」
俺「これは保湿ではなく“油田開発”。顔で天ぷらが揚げられますわ!」
場内「ぎゃははは!」
続いて体組成計。
ダイエットを名目に断食した令嬢が乗ると――
「筋肉量:激減」「体脂肪:逆に増加」
俺はタオルを翻し、観客に向かって笑った。
「おーっほっほ! 極端な断食は“美やせ”ではなく“筋肉破壊”。つまり――倒れるために頑張っているようなものですわ!」
会場「わぁぁぁ!」「こわい!」
ユリウスが唐突に壇上へ飛び乗り、胸を張る。
「ならば俺の筋肉で証明しよう!」
彼が体組成計に乗ると――
「筋肉量:過剰」「脂肪量:不足」
俺「おーっほっほ! これは“貴族のボディ”ではなく“闘技場のゴリラ”。授業の教材にはぴったりですわ!」
会場「ぎゃははは!」
セレーネは冷静にメモを取りながら補足。
「数値の把握こそ改善の第一歩……なるほど」
場内が笑いと驚きで満ちる中、リリアーナだけが腕を組み、冷たく言い放った。
「……数値など飾りですわ。伝統と気品こそ美の証」
俺はタオルを肩にかけ直し、次の教材――セバス特製の日焼け止め壺を手に取った。
「おーっほっほ! ではリリアーナ様、実際に“紫外線の力”を見ていただきましょう!」
壇上に置かれたのは、セバスが持ち込んだ奇妙なランタン。
「こちら、“魔導紫外線照射器”でございます」
貴婦人たちがざわめく。
「まぁ……紫外線?」「そんなものが見えるの?」
俺はにやりと笑い、扇子をひらめかせた。
「おーっほっほ! 紫外線こそ最大の老化因子。シワ、シミ、たるみ――その大半は“光老化”によるものですわ!」
セバスが照射器を灯すと、紫の光がじんわり広がり、特製の「感光板」が壇上に設置される。
裸のまま触れた板はすぐに黒ずみ……観客から悲鳴が上がった。
「ひぃぃ!」「こ、これが日光の正体!?」
次に俺は、セバス特製の日焼け止め軟膏を片手にすくい取り、板の半分へ塗布。
再び照射――
「……あっ! 塗った側だけ黒くならない!」
会場「おぉぉぉ!」
俺は勝ち誇ったようにタオルを翻した。
「おーっほっほ! 砂糖水など不要! 日焼け止めこそ最大のアンチエイジングですわ!」
令嬢たちは大興奮。
「今日から毎日塗りますわ!」「砂糖パックよりずっと信頼できる!」
……そのとき。
リリアーナが突如、壇上に歩み出た。
「くだらない! 紫外線など、気品とドレスの裾で防げますの!」
そう言って照射器の前に立ち、わざと軟膏を塗らずに両手を広げる。
セバスが慌てて止めようとするが、俺は扇子で制した。
「おーっほっほ! では、リリアーナ様の“気品”とやら、数値で見せていただきましょうか」
ピピッ――感光板に映し出されたのは、リリアーナの手の甲に浮かび上がる濃い影。
会場「ひぃぃぃ!」「シミ予備軍が丸見えだぁ!」
リリアーナ「な、なんですのこれぇぇぇ!」
大講堂が爆笑と悲鳴で揺れた。
俺はタオルを肩にかけ直し、きっぱり言い放った。
「紫外線対策なくして美はない! 日焼け止めは淑女の正装と心得よ!」
会場「おぉぉぉぉぉ!」
感光板に残るくっきりとした影に、場内はどよめきと爆笑の渦。
王妃は扇を優雅に閉じ、微笑みながら言った。
「……やはり、知識と実践こそ真の気品。今日の授業で皆が学んだことは大きいですわね」
受講令嬢たちも口々に叫ぶ。
「日焼け止め、毎日塗らなくちゃ!」
「断食なんてやめて、ちゃんと食べます!」
「油田顔ともおさらばだわ!」
セレーネは冷静に板書をまとめ、
「今日の講義を要約すれば――“測定・節度・予防”です。美容の核心はここにあります」
と淡々と補足。
ユリウスはスクワットを披露しながら叫んだ。
「筋肉にも日焼け止めを! これぞ真の防御力!」
……直後に脚をつって転倒、大講堂がさらに笑いに包まれる。
俺はタオルを翻し、ドレスの裾を払って壇上中央に立った。
「おーっほっほ! 本日の授業をもって、美容健康学院は堂々と幕を開けました。
砂糖水も断食も、もはや時代遅れ。
淑女の美は科学で守り、習慣で磨く――これが新たな常識ですわ!」
大喝采。
……だが一人、リリアーナが真っ赤な顔で叫んだ。
「ま、まだ負けませんわ! 砂糖こそ気品、美は伝統!
日焼け止め学院なんて、わたくしが潰してみせますの!」
王子は隣で胃薬を握りつぶしながら、そっとつぶやいた。
「……もう、やめてくれ……」
こうして「美容学院・初授業」は笑いと喝采、そして新たな火種を残して幕を閉じたのだった。
おーっほっほ! 本日の学院初授業、皆さま爆笑しつつ学んでいただけましたわね!
ここで改めて、美肌と健康を守る“黄金律”を整理して差し上げますわ!
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1. 測定(知ることが第一歩)
•血圧・体組成・肌水分量など、数字を測ってこそ現状がわかります。
•砂糖水パックで「しっとりした気分」でも、数値はカラカラ――なんてことも珍しくありませんわ。
•「感覚」ではなく「測定」で判断する、それが真の淑女ですの。
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2. 節度(やりすぎは毒)
•断食のしすぎ → 筋肉減少&リバウンド。
•レチノール塗りすぎ → 赤鬼肌。
•ダーマローラー力任せ → 筋肉拷問器。
•美容も健康も、適量を守ってこそ最大の効果。
•おーっほっほ! 極端は倒れる令嬢一直線ですわ!
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3. 予防(最大のアンチエイジング)
•紫外線対策(日焼け止め):しわ・しみ・たるみの最大要因は光老化。
•睡眠・栄養:肌は夜に修復され、食事はその材料となります。
•ストレス管理:心の健康は肌へ直結。
•防げる老化を放置するなど、裸で舞踏会に行くようなものですわ!
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総括
測定で知り、節度を守り、予防で未来を築く。
――これぞ「美肌と健康の黄金律」!
おーっほっほ! この三本柱を忘れなければ、あなたも砂糖水姫ではなく“真の輝ける淑女”になれますわ!




