転生悪役令嬢おじさん、社交界に呼び出される件
王都の上流階級に、妙な噂が駆け巡っていた。
「聞いた? 婚約破棄されたあの悪役令嬢……」
「ええ、“基礎代謝の女神”と呼ばれてるらしいわ」
「筋肉で魔族を黙らせたとか……嘘でしょう?」
……いや、嘘じゃねぇんだよなぁ。
俺はため息をつきながら、召使いから差し出された招待状を受け取った。
表には金文字でこう書かれていた。
「新婚約者ヒロイン主催・お茶会」
「……うわ、これは罠の匂いしかしねぇ」
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当日。
社交界の令嬢たちが色とりどりのドレスを揺らしながら優雅に談笑していた。
だが俺が会場に入った瞬間、空気がピシリと張りつめる。
「まぁ……来ましたのね、悪役令嬢さん」
主催の新ヒロインが、勝ち誇ったように微笑む。
「ここは筋肉ではなく、言葉と品位の場。あなたには分不相応ですわ」
令嬢たちがクスクスと笑う。
「そうよね、婚約破棄された身分で来るなんて……」
「今度こそ恥をかかせて差し上げましょう」
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俺は紅茶を一口すすり、ドレスの裾を整えた。
「……ふぅ。言葉と品位の場ね。わかったよ」
ざわつく令嬢たちを前に、俺はゆっくりと立ち上がり――
「姿勢を正せ!!」
「えっ?」
「いいかお前ら! 背筋が丸まってんぞ! それじゃ高級ドレスも台無しだ!」
「ひっ……!」
「椅子に座るときは骨盤を立てろ! 胸を開け! 腹圧をかけろ! そうだ、それが真のレディの姿勢だ!」
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会場の令嬢たちは次々と背筋を伸ばし始めた。
「こ、これが……本当の淑女の姿勢……!」
「すごい、腰の痛みが楽になったわ!」
「悪役令嬢おじさん、やはり侮れない……!」
新ヒロインは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ち、違いますわ! これは社交界での恥辱を……!」
だが周囲はすでに拍手喝采。
「素晴らしい!」「やはり女神だ!」
……こうして俺はまた、社交界ですら筋肉理論で無双してしまった。
新ヒロインは悔しさに唇を噛んでいた。
「くっ……! なぜ……なぜ誰もわたくしを見てくれないのですの!?」
俺はため息をついてティーカップを置いた。
「見て欲しいならな、まずは“血糖値スパイク”を抑えろ」
「な、なんですって!?」
「お菓子をドカ食いして紅茶で流し込んでっから、すぐイライラすんだよ。ここにいる令嬢たち、ほら顔色見ろ。砂糖過多で肌荒れしてんだろ?」
会場がざわついた。
「えっ、わ、私そんなに……」
「鏡……確かに……」
「悪役令嬢さんの言う通りだわ……!」
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俺はすかさず続ける。
「紅茶はノンシュガーで香りを楽しめ。お菓子は小分けにして、合間にナッツを挟めば血糖値も安定する」
「ナ、ナッツ……!? そんな庶民くさい……!」
「庶民とか関係ねぇ! 健康は平等だ!」
「ぐぬぬぬ……!!」
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ついに新ヒロインは机を叩き、立ち上がった。
「もう我慢できませんわ! わたくしと勝負なさい!!」
「おいおい……またかよ」
「今度は筋肉勝負じゃありません! スイーツ対決ですわ!!」
会場がどよめく。
「スイーツ対決……!」
「これは社交界の伝統……!」
俺は頭を抱えた。
「……なんでお茶会で筋トレの次はスイーツバトルなんだよ」
だが令嬢たちの視線は熱い。
もはや逃げ場はなかった。
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こうして俺と新ヒロインの「スイーツ決戦」が始まろうとしていた――。
「おーっほっほ! 本日のテーマは“血糖値コントロール”ですわ!」
お茶会で山盛りスイーツを口にすれば、美味しいけれど――その直後、血糖値は急上昇。
そして時間が経つと今度は急降下。
このジェットコースターが、イライラや眠気、肌荒れの原因になるのですの!
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◆ 血糖値スパイクとは?
・食後に血糖値が急上昇すること。
・体はインスリンを大量に分泌 → 脂肪蓄積しやすくなる悪循環。
◆ 改善ポイント
・GI値の低い食品を選ぶ(玄米、全粒パン、豆類など)。
・スイーツを食べるなら ナッツやヨーグルトと一緒に。
・よく噛むことで吸収スピードを緩やかにできる。
◆ 実用の工夫
・お茶会の紅茶は“ノンシュガー”で。
・スイーツは“一口サイズ”をゆっくり楽しむ。
・食後の軽い散歩や会話も、血糖値安定に効果的ですわ。
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「つまり――真の淑女は砂糖に飲まれず、自らをコントロールする者!