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転生悪役令嬢おじさん、淑女の健康サロンで暴走を止める件

王都に再び静けさと賑わいが戻ったころ――。

王妃主催の新たな催しが告げられた。

題して「淑女の健康サロン」。


王宮のサロンホールは、磨き上げられた大理石の床と薔薇の香りで満ち、柔らかな絹のカーテンが揺れている。

招かれたのは、王都の貴婦人たちや若い令嬢、そしてなぜか最前列にはリリアーナが座っていた。


「……わたくしこそ、伝統と美の体現者ですもの」

彼女は顎を高く上げ、エメラルドの瞳をきらめかせる。


王妃は優雅に立ち上がり、集まった淑女たちへと微笑んだ。

「皆さま。本日は“美容と健康”の調和をテーマにいたしましょう。

 わたくしたち女性の身体は、家庭と国を支える礎。無理をせず、美しく、健やかに――」


会場からため息がもれる。

「まぁ素敵……」「さすが王妃様」


俺――エレナ=フォン=クラウス(中身はおじさん)は後方で腕を組み、タオルを肩にのせながら観察していた。

「おーっほっほ……。さて、今度はどんな“健康暴走”が飛び出すやら」


セレーネが横で冷ややかにささやく。

「……すでに噂は広がっています。砂糖を顔に塗れば美白になる、とか」

ユリウスは拳を握り、やる気満々で叫ぶ。

「美肌なら筋肉だ! スクワットで血流改善!」


俺は深い溜息をついた。

「……また一波乱ありそうですわね」


王妃の挨拶が終わると、早速「淑女の知恵自慢会」と称して、貴婦人たちが次々と立ち上がった。


「わたくしは毎晩、角砂糖をすり潰して顔に塗るのですわ! 翌朝はもう、真珠のような輝き!」

「まあ!」「素晴らしい!」と拍手がわく。


俺はタオルで額を拭いながら、思わず前のめりになった。

「おーっほっほ! それは“美白”ではなく“虫寄せフェイス”になる未来しか見えませんわ!」


続いて、別の令嬢がスレンダーな体を揺らして発表した。

「わたくしは七日間の断食を試しましたの。ほら、この細いウエスト!」

観客「まぁ〜〜!!」

だが彼女の声はか細く、すでに貧血でふらついている。


セレーネが冷静に手帳をめくり、淡々と囁いた。

「……鉄欠乏性貧血の症例ですね。倒れるのは時間の問題です」


さらにもう一人。

「わたくしは顔にバターを塗り込むことで、シワを寄せつけませんの!」

近くにいた小姓が床を滑りそうになり、慌てて支える。


俺は思わず頭を抱えた。

「おーっほっほ! それは美容法ではなく“油田開発”ですわ! 環境破壊かと思いましたわ!」


そして、極めつけはリリアーナ。

彼女は自信満々に立ち上がり、堂々と宣言した。

「わたくしは、砂糖水を一日三杯飲むことこそ高貴の証。肌つやも気品も、すべては甘美なる伝統にあり!」


「「おぉぉ〜〜!」」と一部から喝采が上がる。


俺は深いため息をつき、ドレスの袖からそっと血圧計を取り出した。

「……おーっほっほ。やはりこうなりましたか。では次は“数値の舞踏会”ですわね」


「おーっほっほ! 淑女の皆さま、言葉よりも“数値”こそ真実を語りますわ!」

俺はタオルを翻し、袖から次々と機器を取り出した。


まずは角砂糖パック令嬢。

「さぁ、お顔の水分量を測ってみましょう」

ピピッ――表示は 肌水分量20%。

俺は扇子を広げて告げる。

「おーっほっほ! 見事な“乾燥砂漠肌”ですわ! 白砂糖は保湿どころか水分を奪うのですの!」

会場「ぎゃははは! 砂漠のオアシス枯れてるぞー!」


次は七日断食の令嬢。

「血圧を失礼いたしますわ」

カフを巻いて、ピピッ――上85/下48。

「おーっほっほ! これはもはや気絶一歩手前。美しさより床に倒れる姿の方が印象的になりますわね!」

観客「ひぃぃ〜!」「倒れる美は嫌すぎる!」


バター塗布派の貴婦人には、皮膚脂質センサーを当てる。

ピピッ――油分値300%超。

俺はにっこり笑ってタオルを差し出す。

「おーっほっほ! これは“テカり”ではなく“油田”。顔でパンが焼けそうですわ!」

会場「ぶははは!」「フライパンより滑る!」


そして最後にリリアーナ。

「砂糖水美肌論」とやらを唱える彼女に、俺は血糖計を取り出した。

「お指をちょっと失礼いたしますわ」

チクリ、ピピッ――血糖値:210mg/dL。

俺は高らかに宣言した。

「おーっほっほ! これは美肌ではなく“糖化街道まっしぐら”! シワとシミの直行便ですわ!」

会場「ぎゃははは!」「伝統より糖尿だー!」


リリアーナは真っ赤になって叫ぶ。

「こ、これは高貴な血の証ですわ! 王子様、そうでしょう!?」

しかし王子は後ろで青ざめ、腹を押さえていた。

「……さっき砂糖水を飲みすぎて……胃が……」


会場は爆笑と悲鳴の渦に包まれた。


場内が笑いに包まれたところで、王妃が静かに立ち上がった。

彼女のドレスの裾がさらりと揺れ、サロン全体に張り詰めていた空気が落ち着く。


「……皆さま。本日の学びは明らかです。

 美容も健康も、偏りや極端な習慣では決して手に入りません。

 “日々の食事・睡眠・運動、その調和こそが美の基盤”。

 わたくし自身も、塩分を抑えたスープや適度な散歩を習慣にして、ようやく体調が安定いたしました」


淑女たちがうなずき、ざわざわと「なるほど……」「やっぱりバランス……」と囁きあう。

セレーネは冷静に手帳へ「啓蒙効果:高」と書き込み、ユリウスは筋肉を誇示しながら「バランススクワット!」と叫んでいた。


俺――エレナ=フォン=クラウスは扇子を広げて高らかに笑った。

「おーっほっほ! 化粧も筋肉も栄養も、“基礎”があってこそ映えるのですわ!

 砂糖水や油田顔で崩れる美など、わたくしのタオル一枚で拭い飛ばして差し上げますわ!」


「おーっほっほっほっほ!」

場内は拍手喝采、笑いと喝采が混ざり合う。


……だがその中で、ただ一人リリアーナだけが頬を紅潮させて立ち上がった。

「ち、違いますわ! 伝統の砂糖こそ、わたくしの誇り! 例え血糖値が二百を超えようと、美と気品は甘味に宿るのです!」


その瞬間、会場の空気が一拍止まり――

次の瞬間、王都中に響き渡るほどの大爆笑が起こった。


王妃は微笑みながら彼女の肩に手を置き、やさしく諭す。

「……リリアーナ。伝統は大切。ですがそれを守るために命を削っては本末転倒ですわ」


リリアーナは唇を噛み、視線をそらした。

その後ろで王子は、胃薬を握りしめてぐったりと椅子に座っていた。


こうして「淑女の健康サロン」は、笑いと学びをもって幕を閉じたのだった。

おーっほっほ! 本日のサロンでは角砂糖パックだの油田顔だのと滑稽な話ばかりでしたが――

せっかくですから“実際に美容業界で語られる有効成分”を、学術的に正しくご紹介いたしますわ!



ナイアシンアミド(ビタミンB3誘導体)

•効果:皮膚のバリア機能を高め、水分保持・シワ軽減・色素沈着の抑制に有効。

•注意:高濃度(10%以上)では刺激が出る人も。

•「おーっほっほ! 低濃度から始めるのが貴族のたしなみですわ!」


※注釈1:ナイアシンアミドは世界的に安全性が高く、多くの臨床試験で抗炎症・美白効果が支持されております。



レチノイントレチノイン

•効果:ビタミンA誘導体。ターンオーバー促進、コラーゲン合成↑、しわ改善に効果。

•注意:強力な反面、赤み・皮むけ・光感受性↑。妊娠中は禁忌。必ず医師の指導下で。

•「おーっほっほ! 勝手に塗りたくるのは“シワ改善”ではなく“火傷令嬢”一直線ですわ!」


※注釈2:市販の“レチノール”は穏やかで比較的安全だが、医薬品のレチノイン酸は別物。



ダーマローラー(マイクロニードル)

•効果:極細針で皮膚に微小損傷 → コラーゲン生成を促し、薬剤浸透を高める。

•注意:感染リスク大。自宅で消毒不十分だと逆効果。赤みや色素沈着の危険も。

•「おーっほっほ! “ローラーで美肌”どころか“ローラーで細菌培養”になっては洒落になりませんわ!」


※注釈3:施術はクリニックでプロが管理するのが基本。



グリコール酸(AHAの一種)

•効果:角質剥離ピーリング、ニキビ跡やくすみ改善。

•注意:濃度やpH管理が重要。強すぎれば刺激・炎症・色素沈着。紫外線対策は必須。

•「おーっほっほ! グリコール酸は“シミ改善”にも“シミ増産”にもなりえる諸刃の剣ですわ!」


※注釈4:市販は低濃度(5〜10%)で夜使用。高濃度は医療機関専用。



結論


美容も健康も――極端は毒。

ナイアシンアミドの穏やかな積み重ね、レチノールの徐々の導入、日焼け止めの徹底……これこそが正統派の美の処方箋。


おーっほっほ! 砂糖水で美肌になれるなら、王都はすでに全員女神ですわ!

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