転生悪役令嬢おじさん、街道で健康診断屋台を開く件
山あいを抜けた街道の途中、小さな宿場町が見えてきた。
旅人で賑わっているはずの町は、どこか疲れ切った空気に包まれていた。
荷を下ろす商人たちは咳き込み、兵士は脚をさすり、村娘たちは「肩がこる」と呻いている。
俺――エレナ=フォン=クラウス(中身はおじさん)は、タオルで額を拭いながら呟いた。
「……おーっほっほ。これは商機、いえ健康の危機ですわね」
ユリウスは荷車の横で腕を組み、筋肉をピクピクさせながら同意した。
「確かに! 旅人は筋肉を酷使している。休養とタンパク補給が足りていない!」
「いきなりプロテイン押し付けるのはやめなさい!」俺は即ツッコミ。
セレーネは宿場の広場を冷徹に見渡し、数字を口にした。
「……観測上、脱水症状の者が多数。日射病、腰痛、脚の疲労も確認。
このままでは街道の治安にも影響する」
俺はぱんと手を叩いた。
「決まりですわ! ここに臨時の《健康診断屋台》を開きましょう!」
ユリウス「いいぞ! 俺の筋肉チェックで旅人を救う!」
セレーネ「……冷徹な数値評価で、現実を突きつけるわ」
「おーっほっほ! 私がまとめ役ですわね!」
こうして、宿場町の広場に“奇妙な診断屋台”が立ち上がろうとしていた。
広場に布を敷き、次々と取り出される奇妙な機械の数々。
俺はドレスの袖から、血圧計をすっと出した。
「おーっほっほ! これぞ健康の基本、血圧測定ですわ!」
ユリウスは木箱を開け、体重計をドンと置く。
「体重は筋肉の証! 毎日チェックだ!」
「だから筋肉の話ばかりにするなと言っているでしょうに!」
セレーネは冷徹に小型の器具を並べた。
「体温計、脈拍計、パルスオキシメーター。数値は正直。虚飾は許さない」
旅人たちはごくりと息を呑む。
さらに俺はドレスの裾から握力計を取り出した。
「おーっほっほ! 握力は全身の健康の窓口ですわ!」
庶民「えっ、令嬢のドレスから握力計が!?」
そして極めつけ。
俺はタオルを翻し、怪しげな木製の筒を掲げた。
「こちらは最新式! “呼吸機能チェッカー”! 息を吹き込むだけで肺活量を測れる優れものですわ!」
庶民「な、なんでそんなハイテクがあるんだぁぁ!?」
旅人たちは半信半疑で列を作り始める。
「ちょっとやってみたい……」「俺の血圧、どうなってるんだ?」
最初にやってきた荷運びの男。
血圧計がピピッと鳴る。
「上190、下120。――ステージ2の高血圧ですわ!」
「ひぃぃ! もう死ぬんじゃねぇか俺!」
続いて旅芸人の青年。
握力計をガシッ。
「握力20kg……成人男性の平均値を大きく下回っておりますわ! タンパク質不足確定!」
「そんなぁぁ! ギターしか弾いてないから!」
広場は悲鳴と笑い声で大混乱。
子どもたちまで「ぼくも測る!」と列に加わり、宿場町は一気に縁日のような賑わいとなった。
診断屋台はもはや大盛況。
だが、その裏では――ユリウスとセレーネが火花を散らしていた。
ユリウスは旅人にスクワットを強要しながら叫ぶ。
「下半身こそ健康の基盤! 一日百回のスクワットで腰痛も治る!」
「ぎゃああ! 筋肉が爆発する!」と旅人が悲鳴。
セレーネは冷徹に測定器を操作し、数字を突きつける。
「……心拍数200。あなたはただのオーバーワーク。余計に寿命を縮めている」
「うそぉぉ!?」
俺はタオルで額を拭き、慌てて二人の間に割って入った。
「ちょっと! これは健康診断屋台であって拷問場ではありませんわ!」
だが二人は止まらない。
ユリウス「俺こそエレナを支えてる! 筋肉の知識で!」
セレーネ「数値で冷静に現実を突きつけるのは私。あなたより役立っている」
「なにぃ!?」「ほぉ……?」と互いににらみ合い、診断器具を手に取る。
ユリウスは握力計を俺に突きつけ、セレーネは心電図を差し出してきた。
「エレナ! 俺の筋肉診断を受けろ!」
「いいえ、私の冷徹な数値解析を優先すべきよ」
観衆はどよめき、すぐさま大喜びのギャラリーに変貌。
「おぉ! 三角関係だ!」「令嬢様、どっちを選ぶんだ!」
「これは診断じゃなくて婚活だろ!!」
俺は両手を振り上げ、絶叫した。
「やめなさーーい!! 健康診断に色恋を持ち込むなですわぁぁぁ!!」
しかし庶民たちは腹を抱えて笑い転げ、宿場町はまさに縁日のごとき盛り上がりとなった。
夜が更けるころ、宿場町はいつになく賑わっていた。
旅人も商人も次々と屋台で健康診断を受け、笑いと悲鳴が入り混じる。
「俺、明日から減塩する!」「体重オーバーだと指摘されちまった!」
「握力弱すぎて恋人にフラれるかも!」
悲喜こもごもだが、町の人々は笑顔を取り戻していた。
宿場の長老は俺の手をぎゅっと握り、感慨深げに言った。
「ありがとう、エレナ様。ここはただの通り道だったが……“健康診断の宿場町”として旅人を引き寄せられそうじゃ」
俺はタオルで額を拭き、にっこり微笑んだ。
「おーっほっほ! それは素晴らしいことですわ。
名物は食べ物だけにあらず。安心と健康を提供することこそ、最高のおもてなしなのですわ!」
ユリウスは腕を組み、力強く頷く。
「筋肉診断も好評だったな! 次は俺のスクワット教室を名物にしよう!」
「絶対に流行りませんわ!」俺は即座にツッコミ。
セレーネは帳簿を閉じて冷徹に言い放つ。
「……診断料を取れば、宿場の財政も潤う。健康と経済の両立、完璧ね」
「やっぱり数字しか見てませんわね!」
三人のやり取りに旅人たちは大爆笑。
「令嬢様たち、また来てくれよ!」「健康診断受けに待ってるぜ!」
俺たちは盛大な拍手と笑い声に見送られながら、再び街道を歩き出した。
タオルを肩に掛け直し、俺は高らかに叫ぶ。
「おーっほっほ! 次の街でも健康革命を広めますわ!」
だが隣ではユリウスとセレーネが、なおも俺をめぐって言い合っていた。
「次こそエレナには筋肉の偉大さを!」
「いいえ、数字の冷徹さを叩き込む」
「おーっほっほ! どっちも面倒くさいですわぁぁ!!」
笑い声を背に、旅は続く――。
おーっほっほ! 本日は《街道健康診断屋台》で大騒ぎでしたが、旅をする皆さまにとっても「移動中の体調管理」は死活問題。
ここでは 旅先で実践できる健康管理のポイント をお伝えいたしますわ!
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脱水予防
•長時間の移動や炎天下では、気づかぬうちに汗や呼吸で水分が失われます。
•水やお茶だけでなく、ナトリウム・カリウムなどの電解質補給 が大切。
•塩分を少し加えた水や果物も有効ですわ。
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歩行時の筋肉ケア
•長距離移動では、下半身の筋肉が酷使されます。
•ふくらはぎは“第二の心臓” と呼ばれ、血液循環を助ける働きがあります。
•こまめに立ち止まって アキレス腱伸ばしやスクワット数回 を取り入れると疲労軽減に。
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睡眠とリズム
•宿場や旅先では環境が変わり眠りが浅くなりがち。
•就寝前に温かいお茶やストレッチを行うと、副交感神経が優位になり安眠を促します。
•睡眠不足は免疫力低下や判断力の鈍化につながるため、旅では特に要注意。
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栄養補給
•移動食はどうしてもパンや干し肉に偏りがち。
•果物や発酵食品(味噌汁・漬物) を少量でも取り入れることで、腸内環境を整え疲労回復が早まります。
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結論
おーっほっほ! 旅路は楽しくとも、健康を損ねては景色を楽しむ余裕もありませんわ。
「水分・筋肉・睡眠・腸内環境」――この4つを意識するだけで、旅の快適さは大きく変わります。
どうぞ皆さまも、次なる旅の準備にお役立てくださいませ!




