転生悪役令嬢おじさん、辛味信仰で汗だくになる件
山岳を越えた先に現れたのは、赤と黄色に染まる奇妙な都市だった。
市場の通りは唐辛子と胡椒で埋め尽くされ、空気中に粉末が舞い、歩くだけで目と鼻がツーンとする。
俺――エレナ=フォン=クラウスは、タオルで鼻を押さえながら呻いた。
「おーっほっほ……空気まで辛味調味料とは、罰ゲームですの?」
門前には巨大な石碑が立っていた。
『汗を流せ、涙を流せ、舌を焼け。これ即ち純潔の証』
庶民たちは汗だくになりながら笑っている。
「見よ! 汗こそ浄化! 涙こそ誠実! 辛さに耐えてこそ人間だ!」
ユリウスは腕を組み、目を輝かせる。
「いいぞ! 筋肉を燃やすには辛さが必要だ!」
「バカなのですか!?」俺は即ツッコミ。
セレーネは冷徹に観察しながらメモを取る。
「……幼児にも唐辛子水を与えている。胃腸の損傷は深刻でしょうね」
⸻そして、いざ入国儀式。
兵士がバケツを抱えて近づいてきた。
中身は――赤黒い唐辛子水。
「旅人よ、この“火の洗礼”を受けなければ入国は許されぬ!」
兵士は真剣そのものの顔で差し出す。
俺はタオルを翻し、銀のカップを受け取った。
「おーっほっほ! 外交儀礼とはいえ、ただの拷問ですわ!」
庶民「飲めー! 飲めー!」
ユリウス「俺が先だ!」と一気飲みし、汗だくで仁王立ち。
「辛い! だが筋肉が喜んでいる!」
庶民「おぉぉぉ! 筋肉信者だ!」
セレーネは小さく溜息をつき、少量を口に含んだだけで冷静に分析。
「……pH4.5、カプサイシン濃度過剰。発汗は止まらないでしょう」
庶民「ひぇぇ! 数字で辛さを斬った!」
そして俺の番が来た。
「……おーっほっほ。外交のため、仕方ありませんわね」
一口、ぐい。
舌が焼ける。目から汗ではなく涙が噴き出す。
「辛っっっっっっ!!!!!」
タオルで顔を拭きながら叫んだ。
「おーっほっほ! これは信仰ではなく、味覚のテロですわ!!」
庶民たちは大歓声。
「認められた! 汗を流したぞ!」
「涙を見せた! 純潔だ!」
俺はタオルを振り回し、絶叫した。
「ちがぁぁぁう!! これは高血圧まっしぐらの激辛罰ゲームですわぁぁ!!!」
ペッパリア王国の大通りを歩けば、どこもかしこも赤と黄。
唐辛子の房が軒先からぶら下がり、胡椒の粉が風に舞い、道行く人々は汗をダラダラ流していた。
「見よ! 汗こそ邪を祓う清き証!」
「涙は誠実の雫! 辛さは魂の炎!」
庶民は真顔で叫びながら激辛スープをすすっている。
市場の屋台では「燃える朝粥」「唐辛子百本カレー」「火炎パンケーキ」が並び、
通りすがりの赤ん坊にまで「さぁ辛さデビューだ!」と唐辛子水を与えていた。
俺はタオルで額を拭き、思わず絶叫。
「おーっほっほ! これは“文化”ではなく“虐待”ですわ!!」
ユリウスは横で胸を張り、スプーンをわし掴みにしていた。
「いや、これは鍛錬だ! 舌を鍛えれば精神も筋肉も強くなる!」
庶民「おぉぉ! 筋肉の兄ちゃんが正しい!」
「騙されるなぁぁぁ!!!」俺は即座に突っ込む。
セレーネは冷徹に屋台を観察し、帳簿に書き込みながら呟いた。
「……摂取カプサイシン量、推定一日200mg以上。胃潰瘍・食道炎・肝機能障害のリスクが高い。子どもには致命的」
庶民「ひぃぃ! 数字で辛さが毒になった!」
広場の中央では、“辛さ修行場”なる施設があった。
大釜に煮えたぎる真っ赤なスープ。
子どもたちが列を成し、一杯飲み干すごとに鐘を鳴らされている。
「飲めば一人前! 飲めば誠実! 飲めばペッパリア人!」
幼い子どもが震えながらスープを口に運ぶ姿に、俺はドレスの袖をぎゅっと握りしめた。
「……おーっほっほ! これは許せませんわ!」
タオルを翻し、俺は広場の壇上へと駆け上がった。
「聞きなさいペッパリアの民よ! 辛さは適量なら薬、しかし過剰なら毒!
汗と涙は美徳ではなく、ただの生理反応ですわぁぁぁ!!」
庶民「なんだと!?」「信仰への冒涜だ!」
「だが……確かに腹が痛い……」「昨日から下痢が止まらん……」
会場がざわめき始める。
そのとき、鐘が鳴り響き、広場に重々しい声が響いた。
「辛さを否定する者が現れたか……!」
香辛料の煙をまとった僧兵たちが姿を現し、唐辛子の槍を突き立てた。
「我らこそ神の辛味を守る“カプサイシン兵団”!」
庶民「おぉぉぉ!」「出たぞ! 聖なる辛味の守護者!」
俺はタオルを握りしめ、深く息を吐いた。
「……また健康診断の出番ですわね」
荘厳な王宮の大広間。
真紅の旗が揺れる中、中央には巨大な大鍋が据えられていた。
ぐつぐつと煮え立つ真っ赤なスープ――その中には唐辛子が何百本も浮かび、もはや具材というより“凶器”だった。
胡椒大僧正が杖を突き、声を張り上げる。
「異国の令嬢よ! この“火炎スープ”を完食せねば外交は成立せぬ! 辛さこそ誠実の証なり!」
庶民「おぉぉぉ!!」「舌を焼けぇぇ!」
ユリウス「筋肉のために俺が!」と身を乗り出すが、セレーネが冷徹に制した。
「あなたが飲んだら即、救急搬送です」
俺はタオルを翻し、銀のスプーンを握った。
「おーっほっほ! 外交儀礼、受けて立ちますわ!」
ひと口。
舌が焼ける。胃が悲鳴を上げ、目から涙が溢れる。
「辛っっっ!!! これは料理ではなく、火炎放射器ですわぁぁ!!」
庶民「おぉぉ! 汗だ! 涙だ! 純潔だ!」
「違いますわぁぁぁぁ!!」
⸻俺は袖から血圧計を取り出し、隣の僧兵の腕に巻き付けた。
ギュウゥゥ……ピピッ。
「上200、下130。――激辛高血圧確定ですわ!」
庶民「ひぃぃ! 辛味は血管ブレイカーだった!」
さらにパルスオキシメーターを子どもの指に装着。
「SpO₂……90%。辛さで過呼吸ですわ!」
「し、信仰のせいで息ができない……!?」
俺は続けざまに携帯心電図を僧正にペタリ。
モニターが荒れ狂う。
「心拍数180! 危険域! 辛さは神ではなく“循環器の敵”ですわ!!」
会場「ぎゃあああ!!!」
庶民は一斉にスプーンを投げ捨て、冷水を求めて走り出した。
胡椒大僧正は顔を真っ赤にして杖を振り上げる。
「黙れ小娘ぇ! 辛さを否定するは神を否定するに等しい! ならば見せてやろう、“香辛料爆弾”の洗礼を!!」
僧兵たちが袋を破り、空中に唐辛子粉を撒き散らす。
会場中が真っ赤な霧に覆われ、くしゃみと涙が止まらない地獄と化した。
俺はタオルで顔を覆い、きっぱりと言い放った。
「……おーっほっほ! これは信仰ではなく、大量摂取による毒ガス兵器ですわ!!」
大広間は赤い霧に覆われた。
唐辛子粉が舞い、庶民も兵も貴族も、一斉にくしゃみと涙でのたうち回る。
「はっくしょん!」「目がぁぁ!」「鼻が燃えるぅぅ!!」
胡椒大僧正はその混乱の中で高らかに叫んだ。
「見よ! 涙は誠実の証、汗は純潔の証! 辛味こそ神の絶対真理なり!!」
俺――エレナ=フォン=クラウスは、タオルで口と鼻を覆いながら血圧計を片手に突進した。
「おーっほっほ! その涙は誠実ではなく、刺激物による生理反応ですわ!!」
俺は僧兵の腕にカフを巻き付け、ギュウゥゥ……ピピッ。
「上210、下140! 循環器崩壊ですわ!」
庶民「うわぁぁぁ! 辛さで血管が死ぬぅ!」
ユリウスが咳き込みながらも拳を突き上げる。
「筋肉は! 汗ではなくトレーニングで流すんだぁぁ!」
庶民「筋肉ォォ!」
セレーネは冷徹に粉の濃度を測り、即座に結論を叩きつけた。
「空気中カプサイシン濃度、致死域寸前。これは信仰ではなくテロ行為です」
庶民「ひぃぃぃ! 数字で殺された!」
胡椒大僧正は絶叫した。
「辛さは力! 辛さは命! 辛さこそ世界を清める火!」
俺はタオルを振り払い、堂々と宣言した。
「辛さは確かに“薬”となることもありますわ。
発汗を促し、食欲を増進し、血流を良くする効果もある。
ですが! ――過剰に摂れば、胃腸を壊し、血管を焼き、命を縮める“毒”となる!」
庶民「おぉぉ……!」
涙と汗にまみれた観衆の視線が、一斉にこちらに向いた。
「甘さも辛さも、結局は“適度”こそ真理!
健康を守るのは、舌を焼く炎ではなく――日々のバランスですわぁぁ!!」
ドォォォン!
俺の宣言に呼応するように、香辛料爆弾の炎がしゅんと鎮まり、赤い霧は徐々に薄れていった。
庶民たちは次々に唐辛子スープを捨て、水や薬草茶に手を伸ばす。
「……水が……こんなに美味いとは……!」
「胃が痛くない……!」
「涙が止まった……」
ユリウスは涙目で叫ぶ。
「健康こそ筋肉! 筋肉こそ真理!」
セレーネは淡々とまとめる。
「……辛味依存、終息傾向。改革は進みます」
俺はタオルを肩にかけ直し、胡椒大僧正を睨みつけた。
「おーっほっほ。辛味の独占はここまでですわ。
これからは“適度な辛さ”として、健康的に楽しませてもらいますの」
庶民「おぉぉぉぉ!!!」
こうしてペッパリア王国の激辛信仰は崩れ、
都市には新しい風が吹き始めた。
おーっほっほ! 本日は《ペッパリア王国》の激辛地獄を鎮めましたが、皆さまの食卓にも“うっかり辛すぎた!”という瞬間はありますでしょう?
そこで―― 辛さ軽減と胃のケア方法 を伝授いたしますわ!
⸻
• 辛味の正体
辛さは「味覚」ではなく 痛覚。
唐辛子のカプサイシンは舌や粘膜の TRPV1受容体 を刺激し、熱や痛みとして脳に伝わります。
だから「辛い!」と感じるのですわ。
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• 辛さを和らげる方法
1.乳製品を摂る(牛乳・ヨーグルトなど)
•カゼインというタンパク質がカプサイシンを包み込み、粘膜から引き離します。
•牛乳を飲むのが最も効果的ですわ!
2.油分を含むものを口にする
•カプサイシンは脂溶性。
•オリーブオイルやチーズを含む料理は、辛さを中和します。
3.でんぷん質(ご飯・パン)で吸着
•ご飯やパンがカプサイシンを吸い取って、粘膜刺激を和らげます。
•激辛カレーに「ライス」が合うのは理にかなってますの。
※水はNG!
カプサイシンは水に溶けにくいため、ただ広がって余計に辛さを感じます。
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• 胃痛や食べすぎの対処
•温かい牛乳:胃粘膜を保護。
•キャベツやブロッコリー:ビタミンUで胃のダメージを修復。
•はちみつ入りハーブティー:粘膜をコーティングし、炎症を鎮めます。
•休養と水分補給:唐辛子による発汗で脱水しやすいため必須。
⸻
• 結論
おーっほっほ! 辛さは適度ならば食欲増進・代謝促進の薬、
しかし過剰ならば「胃腸を焼く毒」。
食べすぎてしまったときは、 乳製品・油・でんぷん質 で緩和、
その後は 胃を守る食材+休養 をお忘れなく!
辛味もまた、“適度なバランス”が命なのですわ!✨




