転生悪役令嬢おじさん、酒盛り都市を禁酒させる件
朝。
《バッカリア》の広場には、まるで戦場のように酔いつぶれた人々が転がっていた。
倒れている者、頭を抱えて呻く者、酒樽を抱いて寝ている者……。
俺――エレナ＝フォン＝クラウス（中身はおじさん）は、タオルで額を拭いながら仁王立ちした。
「おーっほっほ！ これは“宴”ではなく“集団入院”ですわね！」
さっそくドレスの袖から診断器具を次々に取り出す。
血圧計、血糖測定器、パルスオキシメーター、体温計、携帯型心電図……さらには体組成計まで。
庶民たちは怯えながら呻いた。
「な、なんだその装備は……」
「お医者より重装備だぞ……！」
俺は近くで転がっていた兵士の指にパルスオキシメーターを装着。
ピピッ。
「SpO₂……88％。酸素不足。――呼吸抑制ですわ！」
「ひぃぃ！」兵士は泡を吹きながら転がった。
さらに別の商人に心電図パッドをペタリ。
「QRS波が乱れてますわ！ ――アルコール不整脈！」
「やめろぉぉ！」商人は涙目でジョッキを放り投げた。
ユリウスが横で腕を組み、筋肉を誇示する。
「ならば筋肉更生！ まずは全員スクワット1000回だ！」
「できるかぁぁ！」庶民総ツッコミ。
一方セレーネは冷徹に体組成計を持ち出し、次々と庶民を乗せては記録を取っていた。
「体脂肪率……35％。内臓脂肪レベル……危険域。飲酒習慣と相関します」
「やめてくれぇぇ！ 数字でトドメ刺すなぁ！」
俺は血圧計を掲げ、広場中に響き渡る声で叫ぶ。
「診断結果！ ――上は軒並み180超、下は110超！ 高血圧祭り開催中ですわぁぁぁ！！」
庶民「うわぁぁぁ！！」
「宴の翌朝じゃなくて“循環器内科の外来”だぞこれぇぇぇ！！」
笑いと悲鳴が入り混じる混乱の中、俺はドレスの袖から最後の切り札――携帯型血液分析器を取り出した。
「肝機能数値も出して差し上げますわ！」
庶民「やめろぉぉぉ！！」
⸻こうして朝の広場は、健康診断という名の“第二の大宴会”と化したのだった。
「おーっほっほ！ 数値は嘘をつきませんわ！」
俺――エレナ＝フォン＝クラウスはタオルを翻し、広場に転がる酔いどもを見渡した。
「あなた方は皆、“アルコール性高血糖＋高血圧コンボ”ですわ。早死にしたいのならご自由に、ですが――都市を支える労働力が壊滅しますわよ！」
庶民たちは青ざめて顔を見合わせた。
「は、早死に……」「いやだ……」「飲まないなんて無理だ！」
そこで俺は堂々と提案した。
「よろしいですわ。では“節度ある乾杯プラン”を導入いたしましょう！」
広場にざわめきが広がる。
俺は指を立て、声を張る。
「朝は水と軽食！ 昼は薄めのワインを少々！ 夜は一杯だけ！ それ以上は不可！」
庶民「そ、そんなの拷問だ！」「飲まねぇと働けねぇ！」
すかさずユリウスが胸を張った。
「ならば筋肉で我慢だ！ 飲みたいと思ったら、スクワット100回で気を紛らわせろ！」
「無理無理無理！」庶民が一斉に転倒。
セレーネが冷徹に書類を広げた。
「我慢ではなく代替です。こちらの“薬草茶導入計画”を見なさい」
庶民「うわぁ数字とグラフで責められるぅ！」
⸻そんな時、野次馬の一人がニヤリと叫んだ。
「おい！ 結婚するならどっちだ！？ 筋肉男か冷徹美女か！」
「俺だ！」ユリウスが即答。
「私です」セレーネが一歩前に出る。
「違いますわぁぁぁ！！！」俺は顔を真っ赤にしてタオルを振り回す。
庶民「ぎゃはは！ 三角関係だぁ！」
「賭けようぜ！ どっちが勝つか！」
「私は数字で勝つ」「俺は筋肉で勝つ！」
「どっちでも負けですわぁぁぁ！！！」
広場は禁酒改革どころか恋愛修羅場で大盛り上がり。
俺はタオルを頭からかぶり、深くため息をついた。
「……これでは心拍数が上がるばかりですわ」
「筋肉が勝つ！」「数字が勝つ！」
ユリウスとセレーネが広場の真ん中で睨み合う。
庶民たちは酒を持つ手を震わせながら囃し立てていた。
「おい、どっちに賭ける？」
「俺は筋肉男に一票！」
「私は冷徹美女だな！ 計算強そうだし！」
「おーっほっほ！ 勝手に賭け事にするなぁぁ！！」俺は慌てて割って入った。
しかし、二人はまったく止まらない。
ユリウスは樽を持ち上げ、片手でスクワットを始める。
「俺の筋肉はエレナを守る！ どんな誘惑にも負けん！」
セレーネはペンを走らせ、次々と禁酒プランのリストを読み上げる。
「……一日目、朝に水500ml。二日目、薬草茶導入。三日目、甘味制限。数値で勝負は決まりです」
庶民「ぎゃはは！ 筋肉VS数字だぁ！」
「いや、どっちもやらされるんだろ俺ら！」
「スクワットして薬草茶飲んで……死ぬぅ！」
俺はタオルを翻し、声を張った。
「おーっほっほ！ 改革とは二者択一ではなく、バランスですわ！」
俺は庶民たちに代替プランを披露した。
「昼は薬草茶にして、夜に筋肉を動かした後の一杯だけ許可！ これで“飲む楽しみ”と“健康”の両立が可能です！」
庶民は顔を見合わせた。
「……なるほど、飲めるなら……」「筋肉もつくし……」「数字で記録されるのは嫌だけど……」
やがて広場のあちこちで、薬草茶を片手にスクワットする光景が生まれた。
「……うぅ、酒じゃないけど……悪くないかも」
「頭がちょっと冴えてきたぞ！」
「息切れするけど、なんかスッキリする！」
ユリウスはドヤ顔で胸を張り、セレーネは冷徹にグラフを描き、俺はタオルで笑顔を隠した。
「……少しずつですが、都市が変わり始めましたわね」
⸻だが、その背後で一人の商人がこっそり砂糖壺を抱えて走り去る影を、俺は見逃さなかった。
数日後。
《バッカリア》の広場は、かつての酒臭さが嘘のように晴れやかだった。
朝から酔っ払いが転がる代わりに、庶民たちは薬草茶をすする。
「頭が冴える！」「喧嘩が減った！」「朝起きられる！」と声が飛び交い、
街角には“朝食屋台”が並び始めていた。
俺――エレナ＝フォン＝クラウスはタオルを翻し、誇らしげに微笑んだ。
「おーっほっほ！ ようやく“健康都市”の芽が出ましたわね！」
ユリウスは胸を張り、スクワット姿勢で庶民に呼びかける。
「筋肉を動かせ！ 飲むより鍛えろ！ 筋肉は裏切らん！」
庶民「おぉー！」（でも息切れ）
セレーネは冷徹に帳簿を閉じた。
「データは改善傾向。平均血圧も、飲酒量も減少。……改革は成功です」
⸻そして、都市の人々が門に集まり、俺たち三人を見送った。
王や王妃までもが駆けつけ、感慨深げに言葉を贈る。
王妃「……あなた方が去るのは寂しいですが、きっとまた戻ってきてくださいませ」
俺は胸に手を当てて深々と一礼した。
「おーっほっほ！ 必ず帰ってまいりますわ！」
庶民の子どもたちは元気いっぱいに叫ぶ。
「ありがとー！」「また健康診断してー！」
「三角関係どうなるのー！」
「それは聞くなぁぁぁ！！」俺は顔を真っ赤にしてタオルをぶんぶん振った。
⸻街道を進む三人。
ユリウスは「次こそ俺がエレナを守る！」と拳を握り、
セレーネは「非効率。守るのは私」と冷たく言い放つ。
またしても両腕を引っ張られ、俺は盛大にため息をついた。
「……心拍数が乱れる旅ですわ」
そのとき――山岳の彼方に黒い旗が翻った。
砂糖壺の紋章。
そして横には“香辛料”と刻まれた碑文。
「…… ペッパリア王国の影が、また一歩先に」
俺はタオルを握りしめ、前を見据えた。
⸻こうして酒盛り都市の改革は幕を閉じ、
三人の旅は新たな健康診断へと続いていく。
おーっほっほ！ 本日は《酒盛り都市》を禁酒させましたが、皆さまの日常ではもっと身近に健康を支えてくれるものがありますわ。
それが―― 副菜！ 特に日本の食卓でおなじみのものを紹介いたしますわね。
冷奴（豆腐）
•植物性タンパク質が豊富で、筋肉合成にも一役買いますわ。
•イソフラボンはホルモンバランスを整え、骨粗しょう症予防にも。
•薬味（ネギ・生姜・かつお節）をのせれば抗酸化作用まで追加。
簡単で低カロリー、まさに“筋肉と血管の味方”ですわ！
漬物（白菜漬け・たくあんなど）
•発酵による乳酸菌が腸内環境を改善。
•食物繊維とビタミンKも含み、便通と血液の健康に寄与します。
•ただし塩分が多いので、食べすぎは高血圧のもと。
“少量を添えて消化を助ける”のが副菜としての真骨頂ですわ！
きんぴらごぼう
•ごぼうの不溶性食物繊維で腸の蠕動運動を促進。
•血糖値の上昇をゆるやかにし、食後高血糖を防ぐ効果も。
•唐辛子を加えれば香辛料効果で食欲増進。
噛みごたえが満腹感を高め、食べすぎ防止にも最適ですわ！
⸻
結論
おーっほっほ！ 副菜とは単なる“脇役”ではなく、 消化・代謝・腸内環境を整える影の主役。
冷奴の一皿、漬物の一切れ、きんぴらのひと口――それだけで食卓の健康度はぐっと上がりますわ。
どうぞ皆さま、今日の夕食には「副菜をもう一品」。
健康診断で涙するかどうかは、その小鉢一つで変わりますのよ！
