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転生悪役令嬢おじさん、酒盛り都市で乾杯を止める件

北方の山岳地帯を越えた先に広がるのは、酒と饗宴の都市バッカリア

城門をくぐった瞬間、俺――エレナ=フォン=クラウス(中身はおじさん)はタオルで額を拭き、思わず声を失った。


「……朝の九時から乾杯してますわね」


門前広場には巨大な酒樽が積み上げられ、兵士たちまでジョッキを掲げている。

酔っ払いが街路に転がり、商人はワインを柄杓でばら撒き、子どもですら水筒に酒を入れられている始末。


「酒こそ神の血!」「飲めば叡智!」「二日酔いは祝福!」

あちこちの垂れ幕にそんな標語が躍っていた。


ユリウスがむんずと腕を組み、憤慨する。

「馬鹿な……筋肉が水分を欲しているのに、全員アルコールとは!」

「合理性ゼロ。肝機能が崩壊していますわ」セレーネは冷徹に呟き、街角で倒れている男の脈を取りながら数値を記録した。

「……血圧は上180/下115。心拍不整。……数日以内に倒れる確率、高いです」


俺はタオルを翻し、街路に掲げられた看板を指さした。

「“乾杯せぬ者は異端”……。おーっほっほ! 都市ぐるみでアルコール依存を推奨するとは……肝臓どころか脳も溶けてますわ!」


庶民がふらふら近づいてきて、ジョッキを差し出す。

「お嬢様方も一杯どうだ! 歓迎の証だぜ!」

ユリウスが真顔で受け取ろうとした瞬間、俺はバシッと叩き落とした。

「ユリウス殿! 筋肉にアルコールを流し込んだら、一晩で合成阻害ですわ!」

「な、なんだと……!?」


セレーネは溜息を吐き、俺の肩にタオルをかけ直した。

「……油断すると、すぐ筋肉に裏切られますわね」

「裏切ってませんわ!?」


街の奥からは笛と太鼓の音、そして「飲め飲め!」の合唱。

どうやら都市全体が終わらぬ宴に呑み込まれているようだ。


俺はタオルを翻し、改めて高らかに宣言した。

「おーっほっほ! 本日の診断テーマは決まりましたわ! ――“アルコール文化”の健康診断です!」


都市バッカリアの大通りを抜けると、どこもかしこも酒場兼宿屋だった。

看板には「一泊一乾杯無料!」「二日酔い保証付き!」といった胡乱な文字が並ぶ。


俺――エレナ=フォン=クラウスはタオルを翻し、額を押さえた。

「……おーっほっほ。保証するのは胃薬でしょうに」


宿屋の主人がにやりと笑い、こちらに声をかけてきた。

「ようこそ! お三方は……恋の三角関係ですな?」


「なっ……!?」

俺はむせかえり、セレーネは眉一つ動かさず、ユリウスだけが力強く頷いた。

「そうだ! 俺がエレナを守る! だから同室だ!」


「はぁ!? 同室など不潔極まりません。監視役として私が隣で寝るのが理に適ってます」セレーネが冷徹に言い切り、俺の荷物を奪うように抱え込む。

「ちょ、ちょっと! 俺の同意なしで話を進めるのはやめてくださいませ!」


主人は腹を抱えて笑う。

「いやぁ若いっていいねぇ! どっちが旦那でどっちが奥方かね!」

「違いますわぁぁ!!!」俺は両手を振って否定する。


街の庶民まで野次馬のように集まり、酔いに任せて囃し立てる。

「おーい! 三角関係だー!」

「賭けるか? 筋肉男に一票!」

「いや、冷徹美女が勝つ!」


「やめろぉぉぉぉ!!!」


ユリウスは悔し紛れに腕立て伏せを始め、セレーネは冷静に俺の髪を撫でて整えようとする。

「ちょ、ちょっと! 物理的に近い近い!」

「……不潔を直しているだけです」

「俺だって世話できる! 筋肉流しだ!」

「流さないでくださいませぇぇぇ!」


結局、主人の一声で三人部屋にまとめられることになった。

「仲良く一室! 夜は修羅場だな!」

「修羅場じゃありませんわぁぁぁ!!」


⸻こうして、健康診断以上に心拍数を乱す“宿泊戦争”が幕を開けた。


夜。

《バッカリア》中央広場に設けられた大広間では、巨大な酒樽が十数個並び、肉の山とパンの籠が積み上がっていた。

「乾杯! 乾杯! 飲め飲め!」

街全体が合唱し、ジョッキのぶつかる音で地響きのようだった。


俺――エレナ=フォン=クラウスはドレスの袖を押さえ、タオルで額を拭う。

「……おーっほっほ。乾杯する前にまず水分とビタミンを摂りなさいませ……」


酔っ払いの男がふらふらと寄ってきて、ジョッキを差し出した。

「お嬢様ぁ! 飲め飲め! 飲まねぇ奴は敵だぁ!」

俺はそっと血中アルコール濃度計を袖から取り出す。

「ちょっと手を拝借」

チクリと測定。

「BAC(血中アルコール濃度)0.25%。――昏睡一歩手前ですわ!」

「ひぃぃぃ!」

男は真っ青になって転がり、周囲の庶民がどよめいた。


「な、なんだ今のは!?」

「酒が毒ってことか!?」

「ぎゃはは! 数値で酔いをバラされてやんの!」


ユリウスは腕を組み、真剣に叫ぶ。

「エレナ! 俺は強い! どれだけ飲んでも筋肉で耐える!」

「筋肉では分解できませんわ!」即座にツッコミ。


一方セレーネは、目の前で寝落ちした商人を冷静に観察し、脈を取りながら呟いた。

「……不整脈。γ-GTP値は三桁超えでしょうね」

「数字で肝臓を斬り伏せるなぁぁぁ!」俺は思わず叫ぶ。


そこへ壇上の男――都市の酒宴長が現れた。

「黙れ小娘! 酒は神の血! 飲まずに生きる者は存在せぬ!」

そしてジョッキを掲げ、高らかに叫んだ。

「今宵も“無限乾杯の儀”を始める!」


庶民たちは熱狂し、巨大な酒樽の栓が次々に抜かれる。

泡立つ酒が大広間を洪水のように満たし始めた。


「わぁぁ! 床が飲み物だー!」

「泳げるぞー!」


俺はタオルを翻し、呆れ果てて叫んだ。

「おーっほっほ! これが文化ではなく“肝臓の自殺”ですわ!」


「乾杯! 乾杯!」

大広間は酔狂の熱気に包まれ、酒の洪水が床を流れていた。

庶民が笑いながら飛び込み、兵士まで泳ぐように杯を掲げる。


だが――異変はすぐに起きた。


「……あれ、胸が……苦しい……」

「目が、回る……」


次々と人々が顔を真っ赤にして倒れ始めた。

泡立つ酒樽の表面に浮いていたのは――溶け残った白い粒。


セレーネが指先ですくい、冷徹に告げる。

「……砂糖です。しかも大量に」


俺は即座に血糖測定器を取り出し、倒れた兵士の指先をチクリ。

「……血糖値……320。――高血糖クライシスですわ!」


会場に衝撃が走る。

「酒だけじゃなく砂糖まで!?」「二重の毒だ!」

「ぎゃはは! 飲んで倒れるパターンが増えただけだぁ!」


酒宴長は顔を歪め、怒鳴り散らした。

「ば、馬鹿な! これは“神の加護”だ! 酒と甘味を混ぜた神の宴!」


俺はタオルを翻し、声を張り上げる。

「おーっほっほ! それは“肝臓と膵臓の同時クラッシュ”ですわ!

アルコールで肝臓が疲弊し、砂糖で血糖が暴走する。――二重の毒以外の何物でもありません!」


庶民がざわめき、兵士まで動揺する。

「俺たちは……毒を神と信じていたのか……?」

「酒と甘味が合わされば、命を削るだけ……」


そのとき、会場の片隅で黒衣の影が動いた。

「フフ……ようやく気づいたか。だが遅い。甘味の影は次なる都市へ……」

砂糖壺の紋章を袖に刻んだ隠密は煙を残して消えた。


俺はタオルを握りしめ、唇を引き結ぶ。

「……やはり、背後にはサクロ王国の神殿が」


セレーネが冷徹に頷き、ユリウスは拳を震わせる。

「ならば……筋肉で止める! 俺が必ず守る!」

「……私が理論で正す」

「ちょ、ちょっと! ここでまた三角関係の火花を散らさないでくださいませ!」


⸻こうして酒と饗宴の都市は混乱に包まれ、

三人は“二重の毒”を断ち切るため、さらなる追跡を誓うのだった。



おーっほっほ! 本日は《酒と饗宴の都市》で「アルコール+砂糖」の二重の毒を診断いたしましたが、ここで改めて学術的に解説して差し上げますわ。


• 栄養学的視点

•アルコール(1g=7kcal)と砂糖(1g=4kcal)は、どちらも 高カロリーなのに栄養素が乏しい。

•カクテルや甘いリキュールではこの二つが重なり、あっという間に過剰エネルギー摂取。

•結果として肥満、脂肪肝、糖尿病リスクを跳ね上げますわ。


• 生理学的視点

•アルコールは肝臓で優先的に代謝されるため、その間は 糖質や脂質の代謝がストップ。

•砂糖を同時に摂取すると、ブドウ糖は血液中に滞留し、高血糖スパイクを引き起こします。

•長期的にはインスリン抵抗性を悪化させ、糖尿病・メタボリックシンドロームの温床に。


• 筋肉・代謝学的視点

•アルコールは筋肉合成を阻害し、砂糖過剰はインスリン分泌を乱す。

•両者を同時に摂れば「筋肉は減り、脂肪だけ増える」という最悪の組み合わせ。

•ユリウス殿、カクテルを一気飲みしたら、スクワット千回しても帳消しですわ!


• 睡眠学的視点

•アルコールで眠りが浅くなり、砂糖で血糖が乱高下すれば、夜中に目覚めやすくなります。

•結果、翌日は倦怠感と集中力低下。宴どころか仕事も学問も手につきませんわ。



• 結論


おーっほっほ! つまり 「甘いお酒」や「砂糖漬けのカクテル」は“楽しい毒薬”。

楽しむならほんの少量、できれば砂糖を含まないワインや蒸留酒を薄めて飲む方が肝臓にも優しいのですわ。


宴はほどほどに――

“乾杯は絆、二日酔いと高血糖は罰”。

どうぞ皆さまも、節度ある杯を心がけてくださいませ!

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