悪役令嬢おじさん、求婚ラッシュに筋肉で返す件
王都は――変わっていた。
街角では子供たちがスクワットを競い合い、
市場では「殿下ご愛用! 減塩味噌汁!」と書かれた怪しい商品が飛ぶように売れていた。
広場では「朝のラジオ体操」が公式行事として制定され、貴族も庶民も一緒になって腕を振っている。
「な、なんだこれはぁぁぁ!!」
王子が広場で絶叫する。
隣の新婚約者ヒロインも顔を真っ青にしていた。
「美を語るより……皆、汗を流しているではありませんか……!」
「違う! これは間違いだ! こんなの……!」
だが遅かった。
国全体がすでに“フィットネス王国”に変貌していたのだ。
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その中心にいるのが、俺――悪役令嬢おじさん。
なぜか「基礎代謝の女神」と呼ばれ、国民的人気者に祭り上げられていた。
「令嬢様! どうか私と結婚を!」
「いやいや、私の家に来てください! 一緒にデッドリフトを!」
「違う! 俺となら毎日プロテイン生活を送れる!」
広間に列をなす貴族たち。
俺の前には、宰相の息子から騎士団長、さらには商会の会頭まで――次々に求婚者が現れる地獄のような状況になっていた。
「やめろ! 俺はただ健康指導してただけだぞ!? 結婚とか求めてねぇ!」
「お嬢様、筋肉こそが愛です!」
「殿下より貴女を愛せますとも! ベンチプレスで証明します!」
お前ら正気か。
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王子が机を叩いて叫ぶ。
「やめろぉぉぉ!! 彼女は悪役令嬢なのだぞ!!」
しかし、貴族たちは口々に反論した。
「悪役? 違う! 改革者だ!」
「殿下よりも、彼女の方が国を導いている!」
「塩分を控えるようになってから体調が良くなった!」
「やめろぉぉぉぉ!!!」
ヒロインも涙目で叫んだ。
「わ、わたくしがヒロインなのに……なぜ誰も求婚してくださらないのですの!? 王子様ぁぁ!」
「俺だって人気が欲しいんだぁぁぁ!!」
二人の声は、国民の「スクワット! スクワット!」という掛け声にかき消されていった。
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俺は両手を挙げ、国民に向かって叫んだ。
「わかった! 結婚はしない! 俺は筋肉と共に生きる! だからみんな、今日もトレーニングを忘れるな!」
「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」
歓声と共に、王都全体が腕立てを始めた。
もはや誰も婚約破棄のことを覚えていない。
俺はただ――「筋肉令嬢」として崇められていた。
こうして王国は、国家フィットネス元年を迎えることになったのだ。
「結婚してください! 共に未来を!」
「いや、共に未来じゃなくて共にマッスルだ!」
「プロテインをあなたとシェイクしたい!」
……何だよそれ。
広間の床には、求婚者たちがずらりと正座していた。
中には筋肉をアピールするために服を脱ぎ始める奴までいる。
「見よ! これが俺の大胸筋だ!」
「お嬢様! この広背筋を抱きしめてくれ!」
「やめろやめろ! ドレス姿の俺に筋肉見せても意味ねぇだろ!」
「意味あります! 筋肉は世界共通の愛の言語!」
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王子が頭を抱えて絶叫した。
「なぜだ……! なぜ俺ではなく彼女がモテる!? 俺は王子だぞ!!」
宰相が冷静に答える。
「殿下、筋肉が足りません」
「な、何ぃぃぃ!?」
「まずは腕立てを100回。それから出直してこられよ」
「うわあああああ!!!」
王子は泣きながら腕立てを始めた。
……おい、本当にやるのかよ。
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一方ヒロインは泣き崩れていた。
「どうして……どうして誰もわたくしを見てくれないの……!?」
「お前なぁ……糖質取りすぎなんだよ」
「はぁ!?!?」
「お菓子ばっか食ってっからむくむんだよ。プロテインに変えろ。あと筋トレ」
「プロ……プロテイン……?」
ヒロインの瞳が揺れた。
周囲から「健康だ!」「プロテインは裏切らない!」と声が飛ぶ。
ついに彼女まで、プロテインシェイカーを手に取り始めていた。
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俺は天を仰いでため息をついた。
「……いや、なんで俺が婚約破棄されて、国ごとフィットネス宗教みたいになってんだよ……」
だが群衆は止まらない。
「筋肉こそ正義!」
「おじさん令嬢万歳!」
「基礎代謝の女神よ、どうか結婚を!」
……俺の“モテ期”は、まだ地獄のように続いていくのだった。
モテ期到来
「おーっほっほ! 本日のテーマは“睡眠”ですわ!」
筋肉を鍛え、減塩し、糖分を控えたとしても――睡眠を軽んじればすべては無に帰す。
睡眠こそ、王国を支える真の回復魔法ですのよ!
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◆ 睡眠の役割
・成長ホルモンの分泌 → 筋肉の修復と脂肪燃焼。
・記憶の整理 → 勉学も剣術も寝て定着!
・免疫強化 → 病にかかりにくくなりますわ。
◆ 良質な睡眠のコツ
・寝る前のブルーライトは控える(魔導ランプの光も要注意!)
・カフェインは夕方以降はNG。
・就寝前の軽いストレッチや温かい飲み物で副交感神経を整える。
◆ 理想の長さ
・成人で7時間前後が目安。
・短すぎても長すぎても死亡リスクが上がる――睡眠は万能薬にして劇薬ですわ!
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「つまり――婚約破棄より恐ろしいのは寝不足!
おーっほっほ! 悪役令嬢おじさん、次回は“水分補給こそ命のエリクサー”を語りますわ!」