社交界大茶会、伝統派が糾弾するも転生悪役令嬢おじさんが健康ブームで返り討ちにする件
王都全体に響いた鐘の音は、ただの時報ではなかった。
――社交界最大の行事、「大茶会」の開幕を告げるものだった。
「おーっほっほ……やれやれ、また俺の出番ですわね」
タオルを肩にかけたまま、俺――エレナ=フォン=クラウス(中身おじさん)は広場をあとにした。
庶民たちがわらわらと押し寄せてくる。
「悪役令嬢おじさま、がんばってください!」
「今度こそ“伝統派”を血圧で黙らせてください!」
「薬草茶もプロテインも、どっちも応援してます!」
……いや応援がカオスなんだよ。血圧で黙らせろってなんだ。
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王城へ向かう道すがら、銀髪のセレーネがひっそりと隣に歩み寄ってきた。
「……エレナ様。どうかお気をつけくださいませ」
その瞳は氷のように冷たくも、どこか揺れている。
少し遅れて、騎士のユリウスが追いつく。
「エレナ殿。……俺は護衛の任を外されたが、それでも影から支えるつもりだ」
……なんだこの、まるで俺がヒロインみたいな扱いは。
いや、外見的には確かに令嬢だけど、中身はおじさんなんだぞ?
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王城の門前に着くと、待っていたのは国王夫妻だった。
王妃は優雅に、国王はジャージ姿で。
「エレナ。わたくしたちは最後まであなたの味方ですわ」
「ふぉっふぉっふぉ! 今日も血圧は安定しておる! 余のスクワットも見せつけてやるのだ!」
国王がその場でドスンとスクワットを始め、衛兵たちがざわついた。
俺は額を押さえてため息をついた。
(……ほんとにこれ、婚約破棄から始まった物語だったよな?)
鐘の余韻はまだ王都に響き渡っている。
笑いと緊張の入り混じった空気の中、俺はついに――社交界の大茶会の場へ足を踏み入れることになった。
王城の大広間。
シャンデリアが煌めき、磨き上げられた床にドレスの裾が流れる。
華やかなはずの社交界は――なぜか開幕早々、奇妙な熱気に包まれていた。
「……エレナ様」
涼やかな声が響く。銀髪のセレーネが、扇を胸に当てて一歩進み出る。
「わたくし、ここに立つだけで心拍数が上昇して……きっとこれは“有酸素運動”に違いありませんわ」
会場「おぉぉぉぉーー!」
俺「いや違うからな!? 恋をエアロバイク扱いするんじゃねぇ!」
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その横からユリウスが現れる。黒髪を揺らし、手にはシェイカーを握りしめて。
「エレナ殿! 俺は……あなたを思うだけで筋肉が収縮し、タンパク合成が促されるのだ! まさに“恋の超回復”だ!!」
会場「でたぁーー! 庶民派騎士のポエム筋トレ比喩ーー!!」
俺「超回復を愛のメタファーに使うな!!」
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セレーネは怯まず、扇をピシリと閉じる。
「ユリウス殿……無駄な粉末では心は癒せません。エレナ様に必要なのは――リラックス。わたくしの薬草茶のように、穏やかに整えるものですわ!」
「違う! 必要なのは俺のプロテイン! 筋肉と未来を同時に支える万能の粉だ!」
「薬草茶ですわ!」
「プロテインだ!」
会場「きたぁぁーー!! 葉っぱ vs 粉末の第2ラウンドぉーー!!」
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俺は頭を抱えた。
(……いや、なんで大茶会が飲料バトルアリーナになってんだよ)
そのとき、後方から別の声が響く。
「ふぉっふぉっふぉ! なら余は“両方”派である!」
――国王が再び登場し、シェイカーとティーカップを両手に掲げてドヤ顔。
王妃は横でため息をつきつつも、なぜか誇らしげに微笑んでいた。
庶民&貴族「ぎゃはははは!!! 国王まで巻き込まれたぁぁーー!!」
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しかし笑いの渦の中――。
伝統派の重鎮たちは沈黙したまま、冷ややかな視線をこちらに向けていた。
(……やばい。これは確実に“糾弾ターン”に入る流れだな)
俺はタオルを握り直し、深く息を吐いた。
(……ま、どうせ俺は“悪役令嬢おじさん”。血圧と麦茶で乗り切るしかねぇか)
――決戦の舞台は、着々と整いつつあった。
王城大広間のざわめきが、急に冷え込んだ。
黒マントを翻し、壇上に上がったのは伝統派の老侯爵。
鋭い杖の先で床をコツンと叩くと、空気がピリリと張り詰めた。
「――静粛に!」
会場の笑いがすっと止まる。
続けて王子が立ち上がり、青ざめた顔に憤りを刻みながら叫んだ。
「民よ! 諸君は忘れたのか!? “悪役令嬢”とは、本来社交界から追放される者の名である!
にもかかわらず、この女はその名を掲げ、国王陛下や王妃陛下までも取り込み、挙げ句の果てには麦茶と血圧で国を支配している!」
リリアーナも扇を高々と掲げる。
「伝統こそ王国の誇り! だというのに、いまや大茶会の場で“薬草茶 vs プロテイン”などという茶番……っ!
これが堕落でなくてなんですの!」
会場「おぉぉ……」
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庶民派貴族たちは困惑の表情を浮かべた。
「……まぁ確かに、茶と粉の応援合戦はやりすぎでは……?」
「けれど健康になったのは事実だし……」
空気が揺れる。
伝統派の老侯爵は、その隙を逃さず声を張り上げた。
「そもそも! “悪役令嬢おじさん”という呼称そのものが不敬である!
中身がおじさんなどと――社交界の礼節を踏みにじるにもほどがある!」
「「「そうだーー!!!」」」
⸻
俺はタオルをぎゅっと握った。
(……ついに来やがったな。“悪役令嬢おじさん”ネタで潰しに来る流れ)
セレーネは俺の横で顔を真っ赤にしながら震えていた。
「……わ、わたくしは……おじさんだからこそ安心できると思って……」
ユリウスも拳を固める。
「俺だって……おじさん殿だからこそついていきたいと……!」
――お前ら、そのフォロー逆にダメージでかいからな!?
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王子が高らかに宣言する。
「ここに裁定を下す! “悪役令嬢おじさん”は王国の伝統と威信を汚す存在!
今日この場をもって――追放だ!!」
会場がざわつく。
「追放!?」「いやでも、庶民人気は……」「国王夫妻も健康になったし……」
俺は深く息を吸った。
タオルを肩にかけ直し、ゆっくりと一歩、壇上に進み出る。
「……おーっほっほ! なるほど。“悪役令嬢おじさん”という呼び名にケチをつけるわけですわね」
場が静まる。
俺はにやりと笑った。
「だが、真に恥ずべきは呼び名ではない――“不健康”そのものですわ!」
会場「おぉぉぉぉ!!!」
伝統派の顔が一斉に険しくなる。
嵐のような糾弾の中、俺は真正面から立ち向かう決意を固めた。
「健康が国を救うだと……!」
老侯爵が杖を振りかざす。
「剣と魔法こそが伝統! 民は強き魔力と血筋に従ってきた! 麦茶と血圧で王国を導けるものか!」
「おーっほっほ!」
俺は堂々と扇子を広げて笑い返す。
「剣で血を流すより、塩分を控えて血圧を下げるほうが平和的ですわ!
さあ皆さま、ここで血圧測定タイムと参りましょう!」
ざわつく会場。
「え、今!?」「大茶会の場で!?」「カフ巻いてる!?」
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俺は手際よく一人の若い貴族にカフを巻いた。
「ほら、上が……168。はい不合格!」
会場「ぎゃははははは!!!」
老侯爵が顔を真っ赤にする。
「ば、馬鹿な……!」
次々と測定される貴族たち。
「178!」「156!」
会場がどよめき、笑いと恐怖が入り混じる。
「ほらご覧なさい! 伝統派は“高血圧派”! そのままでは脳卒中で国を治める前に倒れますわ!」
庶民寄りの貴族たち「確かに……!」「言い返せん……」
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そのとき、王妃がすっと立ち上がった。
「わたくしも証言いたしますわ。砂糖を控え、薬草茶に切り替えてから頭痛もなくなりました」
セレーネが胸を張る。
「ですわ! エレナ様の提案でわたくしも体調が改善しましたの!」
ユリウスも負けじと拳を握る。
「俺だって! プロテインを飲み、筋トレを学んでから腰痛が治った! 健康は剣にも勝る!」
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そして国王がドヤ顔で立ち上がった。
「ふぉっふぉっふぉ! 余も毎朝のスクワットで腹囲が5センチ減ったのじゃ!」
「おぉぉぉぉ!!!」会場大歓声。
王子「父上ぇぇぇ!! 今は味方する場面では……!」
リリアーナ「こ、これでは完全に健康派の勝利ですわぁぁ!!」
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俺はタオルを翻して高らかに叫んだ。
「聞きましたか! 健康は誰にでも利益をもたらす! 伝統にしがみつくよりも、新しい生活習慣を受け入れるべきですわ!」
会場の熱狂は最高潮。
「悪役令嬢おじさま万歳ーーー!!!」
だが、伝統派の目はまだ死んでいなかった。
老侯爵は血管を浮かせて吠える。
「黙れ……! このまま引き下がると思うなよ!
次の一手で貴様を必ず――追放してくれる!!」
大広間の空気は、笑いと緊張が入り混じったまま凍りついた。
老侯爵の号令とともに、背後の扉が重々しく開いた。
現れたのは、豪奢な衣装に身を包んだ伝統派の筆頭魔導士たち。
彼らの手には杖でも剣でもなく――分厚い羊皮紙の束が抱えられていた。
「……なにそれ。まさか“魔導書”じゃなくて“書類”か?」
俺は眉をひそめた。
老侯爵は勝ち誇ったように顎を上げる。
「そうだ。ここに記されているのは“礼法典”! 代々の社交界の規範をまとめたものだ!
そこには――“悪役令嬢”を名乗ることは、王家と伝統への冒涜と記されている!」
会場「な、なんだってーー!?」
王子は拳を握りしめ、前へ進み出た。
「そうだ! エレナ=フォン=クラウス! そもそも貴様が“悪役令嬢おじさん”などと名乗るから王国は乱れた!
健康? 麦茶? そんなものは余興にすぎん!
伝統こそ正義! 悪役を誇示するなど許されぬ!」
リリアーナも涙ながらに続く。
「そうですわ! わたくしたちが糾弾しているのは、あなたの健康布教ではなく……“悪役令嬢”という在り方そのものなのです!」
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一瞬で会場の空気が張り詰める。
ざわざわとさざ波のように広がる動揺。
「……たしかに」「礼法典に逆らうのはまずいのでは……」と囁く貴族たち。
俺はタオルを握りしめ、顔をしかめた。
(……なるほどな。健康布教を正面から否定するんじゃなく、“悪役令嬢”の肩書きを攻めてきたか)
セレーネが青ざめて袖をつかむ。
「エレナ様……! これは……」
ユリウスも唇を噛む。
「狡猾すぎる……これでは庶民に説明しても伝統派に軍配が上がってしまう……!」
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老侯爵は高らかに叫ぶ。
「聞け! “悪役令嬢”を名乗ることは、王国の伝統に対する最大の侮辱!
今日この場で――悪役令嬢おじさんを追放する!!」
会場「おぉぉぉぉぉ!!!?」
熱狂と困惑が入り混じる声の中、俺は額を押さえた。
「……おいおい。婚約破棄からここまで引っ張られて、今さら“肩書き”で裁かれるのかよ」
だが、その笑みは少しだけ苦々しい。
(……いや、確かに俺も一回は思ったんだよ。“悪役令嬢おじさん”って呼び方おかしくね? って)
王城の大広間。
健康 vs 伝統――笑いと緊張のせめぎ合いは、次なる局面を迎えようとしていた。
会場を覆うざわめき。
「悪役令嬢は伝統への侮辱だ!」
「礼法典に背いてはならぬ!」
重鎮たちの声が木霊するたび、揺れる貴族たちの表情。
セレーネが青ざめて囁いた。
「エレナ様……もう、この流れは……」
ユリウスも苦悩をにじませる。
「このままでは……どれほど健康の実績があろうと、名だけで裁かれてしまう……!」
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俺は深く息を吸い、タオルで額を拭った。
(……はぁ。そう来るか。肩書きで潰そうってわけだな)
静かに前に出る。
視線が一斉に俺に注がれる。
「……なるほど。“悪役令嬢おじさん”という肩書きが問題だと。確かに俺自身も一度は思ったことがある。――この呼び方、おかしくね? ってな」
ざわ……と小さな笑いが広がった。
俺は口元をゆるめ、わざと胸を張った。
「だが! 思い出してほしい! “悪役”とは、本来は物語の中で嫌われる役目だ!
それを引き受けて、なお堂々と生きる――だからこそ人は安心して笑えるんですわ!」
庶民たち「おぉぉぉぉ!!!」
俺は続けた。
「“令嬢”――これは俺が転生して与えられた姿。仕方ねぇだろ? これが今の俺なんだから!」
「“おじさん”――これは前世からの経験と知識! 健康や数値にうるさいのは、年を重ねた証拠ですわ!」
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拳を握り、俺は高らかに叫んだ。
「そう! “悪役令嬢おじさん”は侮辱じゃない! これは――経験と役割を全部抱えて、それでも前を向く称号なんですわ!」
会場が一気にざわめき、庶民たちが立ち上がる。
「悪役令嬢おじさまバンザーイ!!」
「経験を誇るのが悪いわけない!」
「悪役だからこそ正直で信じられるんだ!」
老侯爵たちは顔を歪める。
「馬鹿な……! 肩書きを逆に利用するだと……!?」
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その瞬間、国王が立ち上がった。
「ふぉっふぉっふぉ! 余もそう思うぞ! 悪役令嬢おじさんで何が悪い! 余の血圧を救ったのはこの肩書きを持つ者だ!」
王妃も微笑みながら続く。
「そうですわ。悪役令嬢であることも、おじさんであることも……恥ではなく、力なのです」
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俺はため息混じりに笑った。
「……なぁ、もういいだろ。“悪役令嬢おじさん”って呼び方おかしいとか悩んでたけどよ……。
結局、みんなにとっては“健康を広める変なやつ”って意味で浸透してんだから。――なら、それでいいじゃねぇか」
庶民「うぉぉぉぉぉ!!!」
――窮地を、逆に開き直って武器にする。
会場の空気は一転し、伝統派の思惑は崩れかけていた。
ざわめく会場を、老侯爵の怒声が切り裂いた。
「黙れ小娘! どれほど言葉を飾ろうとも、悪役は悪役! 伝統を穢す異端であることに変わりはない!」
伝統派の重鎮たちが一斉に立ち上がり、杖を突き、扇を広げ、威圧感を放つ。
「今この場で、悪役令嬢おじさんを糾弾する!」
「王国に健全なる秩序を取り戻すのだ!」
空気が張り詰め、広間の灯火が揺れる。
⸻
その時。
「やめてくださいまし!」
澄んだ声が響き、セレーネが一歩前へ。
「悪役令嬢おじさんは……わたくしの心を救ってくださったのです! 冷え切っていた体も心も、彼女の薬草茶指導と励ましで温まったのですわ!」
ユリウスも剣を握りしめて進み出る。
「俺もだ! 無理な訓練で腰を壊したとき、助けてくれたのはエレナ殿だ! あの方こそ民に必要な存在!」
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さらに庶民たちが次々と叫ぶ。
「俺、血圧が下がったんだ!」
「私、朝の散歩を始めて偏頭痛が消えました!」
「子どもが野菜を食べるようになったんです!」
広間の後方からは商人が大声を張り上げる。
「新作“減塩せんべい”は悪役令嬢おじさんの教えのおかげで爆売れだぁ!」
会場「おぉぉぉぉぉ!!!」
⸻
国王が両手を広げ、王妃と並んで壇上に立つ。
「余は証人だ! 悪役令嬢おじさんは余をメタボから救った! 腰痛も軽くなった! もう王家の健康は彼女なしでは語れぬ!」
王妃も優雅に頷く。
「彼女の知恵と導きが、わたくしたちを新たな道へと導いたのです。――この事実を、誰が否定できますの?」
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重鎮たちの顔が歪む。
「ば、馬鹿な……民まで、王まで……!」
「どれほどの影響力だというのだ……!」
俺はタオルを肩にかけ直し、ニヤリと笑った。
「……ほら見ろ。血圧計ひとつでここまで国を動かせるんだ。これを“伝統への反逆”と呼ぶか、“新しい国の礎”と呼ぶか……選ぶのはあんたらだ」
庶民たち「悪役令嬢おじさま万歳ーー!!!」
会場の熱狂は最高潮。
伝統派の糾弾は、もはや完全にかき消されつつあった。
伝統派の重鎮たちは顔を真っ赤にし、震える手で扇を握りしめていた。
だが――庶民の大歓声、国王夫妻の宣言、そしてセレーネやユリウスの告白めいた言葉。
もはや流れは変えられなかった。
「くっ……これ以上は、無理だ……」
老侯爵が絞り出すように声を漏らす。
隣の貴族が唇を噛んだ。
「民があれほど熱狂している。今、強引に排除すれば暴動必至……」
「……だが我らの威信は……」
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そのとき。
王妃が一歩進み出て、扇を閉じる音が静寂を呼んだ。
「伝統派の方々。わたくしたちも伝統を否定するつもりはございません。
けれど伝統は、健康あってこそ受け継がれるもの。病に倒れ、早世しては何も残せませんわ」
その言葉に、多くの貴族たちがハッとした表情を浮かべる。
国王も胸を張って宣言した。
「伝統も健康も、どちらも必要だ! ならば両輪とすればよい。異端と呼ぶならば余も異端でかまわん!」
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俺はゆっくりと前に出た。
「おーっほっほ。確かに俺は“悪役令嬢おじさん”。
だが! 健康を守ることは悪役じゃありませんわ。民が笑顔で長生きできるなら、それが真の“主役”ですわ!」
庶民「おぉぉぉーー!!!」
会場全体が割れんばかりの拍手に包まれる。
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伝統派の重鎮たちは、ついに椅子へ崩れ落ちた。
「……負けた……この熱狂の前には……」
王子もまた、拳を震わせながら呟く。
「なぜだ……なぜいつもお前ばかり……!」
リリアーナは殿下の袖を握りしめ、涙をこぼした。
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だが群衆の視線はもう彼らではなく、俺に注がれていた。
「悪役令嬢おじさまーー! 健康国家万歳ーー!」
「次はどんな運動を教えてくれるんですか!?」
俺はタオルで汗を拭い、苦笑した。
(……婚約破棄から始まったはずが、ここまで来ちまったか。まさか“国を動かす健康アイドル”になるとはな……)
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王妃が優雅に手を差し伸べる。
「エレナ=フォン=クラウス。あなたを正式に――王国の“健康顧問”として認めますわ」
国王も豪快に頷く。
「余と共に、健康国家を築こうではないか!」
――こうして俺は、王国における新たな立場を完全に確立した。
悪役でも、令嬢でも、おじさんでもいい。
血圧計ひとつで国を救う存在として――。
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会場を埋め尽くす拍手と笑いの中。
俺はふと遠くを見やり、そっと呟いた。
「……ただ、恋愛関係まで巻き込むのはやめてほしいんですけどね」
セレーネとユリウスが同時に振り向く。
「「それだけは譲れませんわ/譲れん!」」
――次なる“恋と健康のトライアングラー戦争”の幕が、静かに上がろうとしていた。
おーっほっほ! 皆さま、今日は「にんにく」についてのお話ですわよ!
焼き肉のタレから異世界のポーションまで、あらゆる場面で登場するにんにくですが、実際のところ――栄養学的にどう役立つのか、解説して差し上げますわ!
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1. 主成分「アリシン」と抗菌作用
にんにくを切ったり潰したりすると、アリインという物質が酵素反応でアリシンに変わります。
このアリシン、強い 抗菌・抗ウイルス作用 を持ち、昔から「天然の抗生物質」と呼ばれてきました。
風邪予防や免疫サポートに期待できるのはこの働きですわね。
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2. 血管拡張と心血管系のサポート
アリシンは体内で分解されると 硫黄化合物 になり、血管を拡張する作用が確認されています。
その結果、血圧低下作用 や 血流改善 が見込まれ、動脈硬化リスクの軽減にもつながるとされておりますわ。
(異世界の国王陛下にも、ぜひ毎日の健康食として……あ、におい問題が出ますわね)
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3. 抗酸化と疲労回復
にんにくには S-アリルシステイン という抗酸化物質も含まれています。
これは細胞の酸化ストレスを抑える働きがあり、老化や慢性疾患予防に寄与すると言われていますの。
さらに、ビタミンB1と結合して「アリチアミン」になり、エネルギー代謝を活性化 → 疲労回復を助ける効果も。
現代で栄養ドリンクによく入っているのも、この組み合わせですわ。
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4. 摂取方法と注意点
•加熱でアリシンは壊れやすい → なので、生で刻んで少量、あるいは加熱でも“短時間”がポイント。
•匂い対策 → 食後に牛乳を飲むと揮発性成分が抑えられるという研究も。
•摂りすぎ注意 → 胃腸刺激が強いので、一度に大量はNG。特に空腹時の生にんにくは荒れますわよ!
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まとめ
にんにくは「免疫サポート」「血流改善」「疲労回復」と万能感たっぷり。
ただし――摂りすぎは逆効果。量と調理法を工夫すれば、異世界でも現実世界でも“頼れる健康の味方”になるわけですわ!




