恋のトライアングラー、だが転生悪役令嬢おじさんが街ごと巻き込まれる件
王都の街角。
俺――エレナ=フォン=クラウス(中身おじさん)は、今日もタオル片手に麦茶を配っていた。
「水分補給は大事ですわ! 塩分チャージも忘れずに!」
庶民たち「悪役令嬢おじさま万歳ーー!!」
……と、そこで。
「エレナ様……」
ひんやりした声に振り返ると、銀髪のセレーネが立っていた。
氷のような青い瞳でこちらを見つめ、わずかに頬を染める。
「わ、わたくし……今日も、心拍数が上昇してしまって……。これも、きっと有酸素運動のせいですわよね?」
……おいおい、恋心を生理現象にすり替えるんじゃねぇ。
庶民「キャー! セレーネ様までおじさん令嬢にアタックだぁ!」
俺「いや“アタック”って言うな、洗剤か!」
⸻
すると今度は、影から黒髪短髪のユリウスが現れる。
その手には、なぜか俺推奨のプロテインシェイク。
「エレナ殿! こ、これを……その……一緒に飲んでくれないか!」
会場ざわめき。
庶民「でたーー! 庶民派騎士ユリウスの直球アプローチだぁ!」
セレーネは青ざめた顔でユリウスを見やる。
「……エレナ様に無駄なタンパク質は必要ありませんわ。そ、それより、わたくしの薬草茶のほうが……!」
「ぐっ……しかし俺は……プロテインを信じている!」
「薬草茶ですわ!」
「プロテインだ!」
俺「……やめろお前ら、俺をめぐって“粉末 vs 葉っぱ”の抗争をするな!!」
庶民たち「きたーー!! トライアングラー勃発ーー!!!」
俺は頭を抱えた。
(……いやいや、婚約破棄どころか俺、異世界で三角関係の中心にされてんじゃねぇか!)
その瞬間、広場の空気は完全に二分された。
庶民A「俺は断然プロテイン派だ! 筋肉こそ正義!」
庶民B「はぁ? 体を癒やすのはハーブティーに決まってるでしょ!」
庶民C「いやいや、“おじさん令嬢様”は両方とってこそバランスだ!」
あっという間に広場は「粉末 vs 葉っぱ vs 両方」の三つ巴に。
ついさっきまで「血圧測定でワイワイ」してた庶民が、なぜか本気の討論会を始めていた。
「麦茶派はおらぬのかーー!!」
……なんか横から新しい派閥まで出てきたし。
俺「いやいやいや、なんで街ごと“健康飲料総選挙”やってんの!? しかも俺を真ん中に置いて!」
セレーネは凛とした声で広場を制した。
「エレナ様の安寧のためには――薬草茶ですわ! 香りと抗酸化作用、これこそが最善なのです!」
「ぐぬぬ……!」ユリウスが拳を握る。
「だが俺は知っている! エレナ殿がトレーニング後にプロテインを欠かさぬことを! 筋肉は裏切らない!」
会場「うぉぉぉぉぉぉーー!!」
庶民「おじさん令嬢様! どっちを選ぶんだ!!」
俺「だからなんで公開処刑みたいに選ばせようとしてんだよ!? 俺はただ水分補給しろって言ってるだけだろ!!」
……だが熱狂は止まらない。
「プロテインとハーブティーで国を分けろ!」とかいう意味不明なスローガンまで飛び出した。
俺は天を仰ぎ、タオルで顔を覆った。
(……婚約破棄? 伝統派? そんなのどこ行ったんだ……)
――だが。
この騒ぎを、陰から静かに観察する影があった。
「……ふふ。恋と健康、二つの火種。これほど世論を揺さぶる材料はない」
「大茶会では、この“混乱”ごと利用させてもらおう」
そう呟いたのは、伝統派の密偵であった。
嵐の前触れは、すでに始まっていた。
「プロテインだ!」「薬草茶だ!」「いや麦茶こそ正義だ!」
広場はついに屋台まで巻き込んだカオス状態に突入した。
「プロテインシェイク屋」が新フレーバーを無料配布しはじめ、向かいでは「薬草茶カフェ」が抗酸化成分の説明を大声で叫び、さらに「麦茶専門屋」が「血圧に優しい麦茶まんじゅう!」をばらまき始める。
庶民たち「うぉぉぉぉ!! どれを取るかで人生が決まるぞーー!!」
……なんでただの街角が、国を揺るがす健康見本市になってんだよ。
⸻
セレーネは毅然と手を広げた。
「エレナ様、今こそわたくしを選んでくださいまし! 薬草茶の香りと共に、わたくしの心もお捧げしますわ!」
頬を染めて、恥じらいながら視線を逸らす。
ユリウスは必死に声を張った。
「エレナ殿! いや、エレナ……! 俺はあなたと共に筋肉を鍛えたい! プロテインを分け合い、未来を築きたいんだ!」
赤面しながらシェイカーを差し出してくる。
庶民「おぉぉぉ! トライアングラーが加速したぁぁ!!」
庶民「薬草茶とプロテインが同じ空間にあるとか、爆発するんじゃねぇか!?」
俺「お前ら勝手に爆発させんな!!」
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しまいには、祭囃子の太鼓まで響きはじめる。
「はいはい健康祭りだよー! 本日の投票はこちらの箱にどうぞー!」
商人たちがなぜか「健康派総選挙」の投票所を設置。
庶民「俺はプロテイン!」「いやハーブティー!」
子ども「麦茶いっしょー!」
……おい、投票所に列作るな! 俺の恋愛模様を国民投票にすんな!!
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俺は両手を突き上げて叫んだ。
「やめろーー!! 俺はただの“婚約破棄おじさん”で、“健康派保健師”で、“血圧係”なんだ! 三角関係に街ごと巻き込むなぁぁ!!」
――しかし群衆の声は、熱狂でかき消されていった。
陰でそれを見ていた伝統派の密偵は、にやりと笑う。
「ふふ……この混乱。次の大茶会で、必ずや火種となろう」
笑いと熱気に包まれた広場のど真ん中で、俺は頭を抱えた。
(……これ絶対、次の大茶会で地獄絵図になるやつだろ……)
王城・伝統派会議室。
分厚いカーテンの下、老侯爵たちが顔を揃えていた。
「……見たか。街中で“健康総選挙”などという茶番をやっておったぞ」
「もはや婚約破棄どころの騒ぎではない……奴は王国を“筋トレ共和国”に変えようとしておる!」
「民の心を奪ったのは剣や魔法ではなく……水筒の麦茶……許されぬ!」
机の上には分厚い羊皮紙。
そこには――「公開糾弾計画」と書かれていた。
若い伯爵がにやりと笑う。
「次の大茶会でやつを裁く。だが直接“健康政策反対”など叫んでも、民は耳を貸さぬ。……だからこそ、“恋愛のスキャンダル”を利用するのだ」
「スキャンダル?」
伯爵は広げた羊皮紙を叩く。
「そうだ。ユリウス、セレーネ……あの二人の想いを煽り、恋愛劇にすり替えてしまえばいい。
“悪役令嬢おじさんは貴族の誇りを弄ぶ”――そう糾弾すれば、健康派の民も戸惑うだろう」
重苦しい沈黙の後、老侯爵が頷いた。
「なるほど……“婚約破棄”という伝統の舞台を利用するか。皮肉なものだな」
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その頃、俺は城下町の片隅で肩を落としていた。
「……なんで俺、恋愛総選挙の候補にされてんだよ」
タオルで額を拭いながら、しみじみ呟く。
セレーネは横で紅茶をそっと差し出し、頬を赤らめる。
「エレナ様……次の大茶会、わたくしが必ずお守りしますわ」
ユリウスは拳を握りしめ、隣で力強く言った。
「いや、俺が盾になる! プロテインの力を信じろ!」
庶民たち「キャー! 二人のアプローチが止まらない!」
庶民たち「おじさん令嬢様、どっちを選ぶんですかぁぁ!?」
俺「選ばねぇよ!? ていうか勝手に見守りバトルすんな!!」
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その背後で、伝統派の影が密かに笑った。
「……ふふ、盛り上がれば盛り上がるほど、次の大茶会での公開処刑が映える……」
俺は知らなかった。
次の舞台が「恋と健康と陰謀」の三重奏に化けつつあることを――。
おーっほっほ! 本日は「やってしまいがちな運動のNG行為」を解説して差し上げますわ!
健康の道は正しいフォームと知識から。間違えれば努力も無駄になるのですわよ。
① 形だけのチーティング(反動上げ)
本来のフォームを崩して、反動で重りを持ち上げることですわ。
たとえば二の腕を鍛えるダンベルカールで、腰を反らして勢いで上げてしまう……これが典型ですわね。
一見「重い重量を持てた!」と錯覚しますが、筋肉ではなく腰や関節に負担をかけているだけ。怪我のもとですわ!
② ネガティブのやりすぎ
「下ろす動作(エキセントリック局面)」は筋肉に大きな刺激を与えるので、とても効果的。
ですが、やりすぎると筋肉繊維をボロボロにしてしまい、強烈な筋肉痛(DOMS)や回復遅れの原因になりますの。
たまに取り入れるのはアリですが、常用は危険ですわ!
③ ストレッチorストレッチ種目を全くしない
柔軟性を軽視するのもNG。関節の可動域が狭くなり、フォームが崩れて怪我を招きますわ。
特にスクワットやデッドリフトのように大きな関節を使う動作では、柔軟性がそのまま安全性につながります。
準備運動と整理運動は必須ですわよ!
④ 毎日限界まで追い込む
これは今だに賛否両論ですわ。
ただ毎日ヘトヘトになるまで追い込むと、筋肉だけでなくホルモンバランスや免疫系まで壊してしまいますわ。
「休むのもトレーニング」。無理せず計画的にですわね!
⑤ 有酸素だけ延々とやる
脂肪は燃えますが、筋肉まで削れて基礎代謝が下がりますわ。
結果的に「痩せにくく、太りやすい体」に逆戻り……。
筋トレと組み合わせることでこそ、有酸素運動の効果は最大化されますの!
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つまり―― 正しい知識を持って、ほどほどに、継続してやること。
これこそが最強の健康習慣ですわ!




