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転生悪役令嬢おじさん、王都をウォーキング大会に変える件

王都の朝。

石畳の通りに、信じられないほどの人だかりができていた。


「さぁ皆さま! 本日は記念すべき――王都ウォーキング大会の日ですわ!」


王妃が壇上で宣言し、拍手喝采が起きる。

横には国王も立っていて、なぜかジャージ姿で準備体操中だ。


「ふぉっふぉっふぉ! 健康国家の象徴として、余が先頭を歩くのじゃ!」


……いや、いやいやいや。

俺――エレナ=フォン=クラウス(中身おじさん)は、その隣でタオルを持たされて立たされていた。


「ちょっと待って!? なんで俺まで先頭コースなんだよ!?」

「おーっほっほ! 健康顧問たるあなたが歩かねば誰が歩くのです!」

王妃の返しは容赦なかった。



列は果てしない。

商人がパンを売りながら参加し、兵士が鎧を着て参加し、貴族たちまでも「礼儀作法として歩くべきだ」と背筋を伸ばして並んでいる。

子どもたちも「おじさん令嬢さまぁー!」と手を振っていた。


俺は思わず叫んだ。

「……これ、もうただのマラソン大会じゃねぇか!? 婚約破棄どこいったんだよ!」


その叫びに合わせて観客が盛大に笑った。



「……くっ」

遠くから王子がその光景を見て歯ぎしりしていた。

隣のリリアーナは涙目で扇を握りしめる。

「殿下……なぜ国全体が“ウォーキング部”に……!」


だが庶民たちの声は一層高まり、王都の空気は完全に「健康派」に染まっていった。


ウォーキング大会、スタートの号砲が鳴り響いた。


「位置について――歩けぇぇぇ!」


なぜか号令をかけたのは俺だった。

ドレス姿で笛を持たされる悪役令嬢おじさん……絵面として完全におかしい。



国王「ふぉっふぉっふぉ! まずは余が先頭を切る!」

王妃「陛下、ペースを守って! 心拍数を見なさい!」


……王と王妃の掛け合いから始まるウォーキング大会。

庶民も貴族も入り乱れて、王都の大通りをぞろぞろ歩く姿は、もはや祭りの行列と変わらない。


屋台まで参戦していた。

「プロテインシェイク! 今なら3種類のフレーバー!」

「低GIおにぎりだよ! 歩きながら食べても血糖値安心!」

「水分補給に塩分チャージタブレットどうだい!」


……いや、完全にスポーツ大会仕様じゃねぇか。



俺は先頭を歩きつつ、振り返って注意を飛ばした。

「はいそこの貴族! ドレスの裾を踏むと転倒リスク高いですわよ! 少し摘んで歩きなさい!」

「そこの兵士! 鎧で歩くな、熱中症で倒れるぞ! ほら、水分取れ水分!」


庶民たち「おじさん令嬢様ぁぁ! 注意がありがたいぃぃ!」



一方その頃――王子とリリアーナは丘の上から見下ろしていた。


「くっ……なぜだ! なぜ奴が歩くだけであんなにも民が盛り上がるのだ!」

「殿下……まるで国全体が“歩くクラブ活動”になっていますわ!」


王子の拳が震える。

「このままでは伝統派の立場が……!」


だが、その叫びをかき消すように、王都のあちこちから声が上がった。


「歩数記録はどこで見れるんだ!?」

「次はハーフマラソンにしようぜ!」

「おじさん令嬢万歳ーー!!」


完全にスポーツフェス化していた。


「うわぁぁっ!」


先頭から少し離れた場所で、転倒した悲鳴が響いた。

群衆がざわつき、道が自然と割れる。


地面に倒れていたのは、立派な髭を蓄えた老侯爵――伝統派の重鎮のひとりだった。

「はぁ、はぁ……だ、駄目だ……足がつって……!」


会場ざわめき。

「侯爵さまが!?」「これは大事件だ!」

「やっぱりウォーキングなんて危険じゃないか!」


王子とリリアーナが遠くからにやりと笑った。

「ふふ……これで“健康派”の信用は失墜しますわ!」

「そうだ……民は健康被害に敏感……これで奴の影響力も終わる!」



俺はすぐさま駆け寄った。

ドレスの裾をたくし上げ、タオル片手に侯爵の足を確認する。


「こりゃただのこむら返りですわね! 安心なさい!」


「な、何ぃ……?」

ざわめく群衆。


俺は侯爵の足をそっと伸ばし、ふくらはぎをゆっくり押しながら解説した。

「歩き慣れていない方が急に長距離を歩くと、筋肉が疲労して収縮しすぎるんですわ。

水分とミネラル不足も原因。――はい、塩分チャージタブレット!」


侯爵に渡すと、周囲の庶民から拍手が湧いた。

「すげぇ!」「医者より頼りになる!」

「悪役令嬢おじさんの救護タイムだ!」


侯爵は汗をぬぐいながら、しぶしぶつぶやいた。

「む……見事だ。歩けるようになった……」


俺はドヤ顔で立ち上がり、声を張った。

「諸君! 怪我や不調は“健康派”のせいではなく、正しい知識と準備不足のせい!

――だからこそ日々の習慣が大事なのですわ!」



会場「おぉぉぉぉ!!」

群衆は大歓声。


一方の王子とリリアーナは、顔面蒼白。

「な……逆に評価が上がっただと……!?」

「おじさん令嬢め……失敗を成功に変えるなんて……!」


――ウォーキング大会は、いつのまにか“健康啓発フェスティバル”に姿を変えていた。


ゴールが近づくにつれ、会場の熱気は最高潮に達していた。

群衆は応援の声を張り上げ、子どもたちは小旗を振り、商人たちは「ゴール地点限定プロテインシェイク!」と商魂を燃やしていた。


「殿下! 我らの勝利を見せつけましょう!」

リリアーナは必死の形相で王子の腕を引っ張りながら走る。

だが王子の顔は青ざめ、呼吸は荒く、すでに脚はもつれ気味。


「はぁっ、はぁっ……なぜだ……なぜこんな運動ごときで……!」


一方、俺――エレナ=フォン=クラウス(中身おじさん)は、ドレス姿で涼しい顔。

「おーっほっほ! インターバル呼吸法を活用すれば楽勝ですわよ〜!」

軽くリズムを刻みながら走る俺に、観衆はさらに盛り上がる。


「見ろ! 悪役令嬢おじさんは全然疲れてない!」

「やっぱり普段からウォーキングとスクワットをしているからだ!」

「健康布教に説得力ありすぎる!」



そこへ――ひときわ大きな歓声。

「陛下ーーー!!」


振り返ると、ジャージ姿の国王と王妃が参加者をかき分けて現れた。

「ふぉっふぉっふぉ! 余も最後は共に走らねばなるまい!」

「ええ、夫婦で完走するのが一番の見本ですわ!」


……なんで国王と王妃まで競技者になってんだよ!?


しかも国王、スタートの勢いで派手に前傾して走り、ズボンがまたブチッと裂けた。

「ぬおおお!? だが余は止まらんぞぉぉ!」

王妃「だからストレッチをしろとあれほど……!」



だが、観客の視線は熱狂に変わる。

「国王夫妻が一緒に走ってる!」

「なんて健康的な光景だ!」

「これが“健康国家”の象徴だぁぁ!」


やがて全員が肩を並べてゴールに飛び込んだ。

王子はへたり込み、リリアーナは涙目で王子を支え、国王夫妻は手を取り合って微笑む。


俺はゴールラインで腕を広げ、タオルを翻して宣言した。

「――勝者は剣でも魔法でもなく、健康習慣ですわ!!」


観衆「おぉぉぉぉぉ!!! 健康国家万歳ーー!!」



こうしてウォーキング大会は、大混乱を経て“国民総参加の健康祭”へと変貌した。

だが俺は心の中で小さくため息をついた。

(……いや俺、やっぱり“婚約破棄された令嬢”じゃなかったっけ? なんで毎回スポーツ大会仕切ってんだよ)


――次なる“公開糾弾の大茶会”を前にして、健康派の熱狂はますます拡大していくのだった。

おーっほっほ! 今回は「鶏むね肉とささみ」について、わたくし……いや、おじさん令嬢が解説いたしますわ!


まず基本情報。

どちらも 高タンパク低脂肪 の王道。100gあたり20g以上のタンパク質を含み、しかも脂質はごくわずか。むね肉には イミダペプチド(疲労回復・持久力アップ効果が期待される成分)が豊富、ささみはさらに脂質が少なくて胃に優しいので、減量期や消化器が弱い人でも食べやすいのですわ。


ビタミンB群(特にナイアシン)はエネルギー代謝に必須。さらにタウリンやカルノシンといった抗酸化成分も含まれております。つまり「安い・優秀・万能」――庶民も貴族も取り入れるべき健康食材というわけですわ!


ただし欠点もあります。赤身肉に比べて鉄分や亜鉛が少なめ。しかも火を通すと パッサパサ問題 が勃発しがち……。ここをどう調理するかがカギですの。


★ おすすめの調理テクニックはこちら!

•ブライン液漬け(塩+砂糖+水に30分浸す) → しっとりジューシー

•低温調理(60〜65℃) → 驚くほど柔らかく仕上がる

•片栗粉でコーティングして茹でる → 水分保持でぷるぷる

•酒蒸し・レンチン時は必ずラップ → 水分を逃がさない


使い分けも重要。

•むね肉は蒸して裂けば「サラダチキン」や作り置きに最適。

•ささみは片栗粉で茹でてポン酢和えや梅しそ巻きにすると最高。

•ダイエット勢はスープに入れてかさ増し、筋トレ勢は冷蔵庫に常備して「プロテインバー代わり」に!


――以上! 鶏むね肉とささみは “低コストで続けられる健康の味方”。

わたくしからの提言はただひとつ。


「プロテインシェイクばかりに頼らず、鶏肉でリアルタンパクを摂取なさい!」


おーっほっほっほ!


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