表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/183

国王と王妃、だが転生悪役令嬢おじさんの全面的な味方にまわる件

王城の朝はいつになく爽やかだった。

中庭に響くのは──なんと国王陛下の掛け声。


「いち、に、さん、しっ! 余についてまいれ!」


臣下たち「うおおお!? 陛下がラジオ体操をぉぉ!!」



かつては玉座でどっかりと腰を下ろし、夜中に三度もトイレに起きるとぼやいていた国王が、今では堂々と両腕を振り、深呼吸まできっちりこなしていた。

血圧? 安定。

腹囲? 確実に数センチ減少。

夜間頻尿? 改善傾向。


「ふぉっふぉっふぉ! 悪役令嬢おじさんのおかげで、余は10歳若返った気分じゃ!」


「おーっほっほ! わたくしの指導に従えば当然ですわ!」

俺──転生悪役令嬢おじさんは胸を張り、血圧計を片手に高笑いした。



一方、城下町では噂が広がっていた。

「陛下、最近顔色がいいぞ」

「夜もぐっすり眠れるようになったらしい」

「やっぱり悪役令嬢おじさんの健康政策は本物だ!」


人々は目を輝かせ、健康国家への期待をさらに高めていった。



その様子を、王子とリリアーナは窓越しに見ていた。

「なぜだ……! なぜ父上まで……」

王子の握り拳は震え、顔は怒りと焦燥で赤く染まっていた。


王妃は庭園に立ち、朝日を浴びていた。

肌は透き通るように明るく、目元の疲れも消えている。


侍女たち「お、美しい……! 本当に若返られましたわ!」

侍女たち「ここ最近で一番艶やかです!」


王妃は扇で口元を隠しながら、微笑んだ。

「ふふ……悪役令嬢おじさんのすすめで始めた“毎朝のストレッチと発酵食品”。まさかこれほど効果が出るとは思いませんでしたわ」


「おーっほっほ! ヨーグルトと納豆を馬鹿にしてはなりませんわ!」

俺は得意げに指を突きつけた。


「腸内環境の改善は、美肌と精神の安定に直結しますのよ! 淑女の嗜みはまず腸からですわ!」


「腸から!?」「そんな説得力ある言い方初めて聞いた!」

廷臣たちがざわつき、若い貴婦人たちは真剣にメモを取り始める。



王妃は胸に手を当てて小さく頷いた。

「私は、王国の女性たちに伝えたい……伝統も大事だけれど、健康がなければ気品も保てないと」


その言葉は、まっすぐに大広間へ響いた。

空気が揺れる。伝統派の貴族たちが顔をしかめ、だが庶民と若い貴族は喝采をあげた。



王子は奥歯を噛み締めた。

「なぜだ……なぜ母上まで……!」

リリアーナも震える声で付け加える。

「殿下、これは危険です……このままでは“健康派”が完全に主導権を……!」


だが彼らの焦燥をよそに、国王と王妃は確実におじさんの側へと歩み寄っていくのだった。


王城の大広間。

そこに集まったのは、重鎮貴族と新進の若き貴族たち、そして庶民代表の商人や学者まで。

かつてない規模の“健康政策討論会”が始まろうとしていた。


壇上に立った国王は、深く息を吸い込んだ。

「……余は、かつて自らの身体を顧みず、ただ伝統に縋ってきた。だが――それでは王国を導くことはできぬ」


ざわめく観衆。

王子の顔色は蒼白に変わる。


王妃は一歩前に進み出て、扇を広げた。

「わたくしも長らく“王家の誇り”を口にしてまいりました。ですが、誇りは健康な身体と心の上にしか築けないのです」


廷臣たち「な、なんと……!」

若い貴族や侍女たち「その通りだ!」



俺は高笑いしながら、血圧計を掲げた。

「おーっほっほ! 見ましたか皆さま! 王と王妃が自ら体現してくださったのです!

 健康習慣こそが未来を拓くのだと!」


庶民「悪役令嬢おじさん万歳ーー!」

「陛下も変わった! なら俺たちも頑張れる!」


その声は瞬く間に広がり、場を支配していった。



王子は震える声で叫んだ。

「父上! 母上! なぜそこまで……なぜあのおじさんを……!」


国王は鋭い眼差しを向けた。

「理由など単純だ。悪役令嬢おじさんの助言で、余は再び“王”として立てる身体を得た。それだけのことよ」


王妃も頷き、毅然と告げる。

「殿下、あなたもまずは血圧を測ることから始めなさい」


「ぐぬぬぬぬ……!」

王子はついに言葉を失い、拳を震わせるしかなかった。


嵐のような討論会が終わった後の王城。

庶民も若い貴族も、口々に「健康こそ未来だ!」と叫び、まるで祭りのような熱気に包まれていた。


一方、会議室の奥。

伝統派の老侯爵は、顔を蒼白にしながらも低く唸った。

「……このままでは、王国は“ジム国家”と化す。我らの誇りはどこへ行くのだ」


王子も拳を握りしめ、椅子を蹴り飛ばす。

「必ずや反撃する! あいつをこの国から追放してやる……!」

リリアーナが涙目で頷く。

「殿下、今こそ挽回の時ですわ!」


彼らの胸には、まだ火種が残っていた。



一方その頃。

俺――エレナ=フォン=クラウス(中身はおじさん)は、人気のない回廊を歩きながら深いため息をついていた。


「……なあ。なんで俺、ずっと“悪役令嬢おじさん”って呼ばれてんの?」


近くにいた侍女がキョトンとする。

「えっ、だって……そうじゃないですか?」


「いやそうなんだけどさ。俺、ちゃんと名前あるし。エレナ=フォン=クラウスって立派な令嬢なんだぜ?

 それなのに誰も名前で呼ばねぇ。王も王妃も、庶民まで“おじさん”って……」


「……エレナ様」

試しに侍女がそう呼ぶと、俺は一瞬だけ赤面した。


「……おお、普通に可憐な響きだな! けど中身がオッサンだと脳内変換が追いつかねぇ!!」


頭を抱えてしゃがみ込む俺。

だが結局すぐにタオルを首にかけ、また歩き出した。


「ま、いいや。どうせ“悪役令嬢おじさん”で定着してんだろ。……でもせめて今度は血圧じゃなく、名前で呼ばれたいよなぁ」


その呟きは、王城の廊下に虚しく反響した。



だが、背後では確かに暗雲が渦巻いていた。

伝統派と王子の反撃の気配――次なる嵐の前触れである。



おーっほっほ! 悪役令嬢おじさんことエレナ=フォン=クラウスですわ!


今日は「睡眠と栄養の関係」について少しだけ真面目に語っておきますの。

結論から言えば、睡眠は栄養摂取と双方向に関わっておりますわよ。

1.マグネシウムと睡眠の質

 マグネシウムは神経伝達物質の調整に関わっていて、不足すると不眠や中途覚醒が増えるとされていますの。特に豆類やナッツ、葉物野菜に多いから、日々の食事で意識して摂取したいところですわ。

2.トリプトファン → セロトニン → メラトニン

 眠気を誘うホルモン「メラトニン」は、必須アミノ酸のトリプトファンから合成されますの。豆類、乳製品、卵に豊富。寝る前に温かい牛乳が推奨されるのは、科学的にも理にかなってますのよ。

3.ビタミンB群の役割

 B6はトリプトファンからセロトニン合成に必須、B12は概日リズムの調整に寄与。欠けると「寝てもスッキリしない」につながりますわ。魚、肉、卵をバランスよく。

4.カフェインとアルコールの落とし穴

 カフェインは覚醒効果が6時間以上持続する場合があり、午後遅くの摂取は避けたほうが吉。アルコールは入眠を助けるようで、実は深い睡眠を削りますの。悪役令嬢おじさん的には「寝酒」禁止を強く推奨しますわ!

5.睡眠負債と血糖値

 慢性的な睡眠不足は糖代謝を乱し、インスリン抵抗性を高める。つまり「睡眠不足は太る」につながりますの。夜更かしゲーマー貴族の皆さま、耳が痛いでしょう?



要するに、睡眠は「休むこと」であると同時に、「栄養を活かして体を修復する時間」でもありますの。

婚約破棄より深刻なのは……そう、不眠と栄養不足! これ、覚えておきなさいまし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ