伝統派の陰謀、だが転生悪役令嬢おじさんが血圧と麦茶で庶民を味方につける件
王城の奥深く――重厚な扉の向こうで、伝統派の重鎮たちがひそやかに集まっていた。
燭台の炎がゆらめき、会議室の空気は重苦しく張り詰めている。
「……もはや看過できぬ」
老侯爵が口火を切った。
「“健康国家”なる戯言で、国王陛下までもがジム建設に血道を上げるとは。王国の威信は地に堕ちた」
「悪役令嬢おじさん……奴を放置すれば、やがて王国の伝統は消える」
「結婚破棄どころか、血圧と筋肉で政治を動かされてはかなわん!」
次々と声が上がり、机を叩く音が響く。
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王子は椅子の背に深くもたれ、黙って拳を握り締めていた。
(そうだ……そうだとも。なぜ、いつもあの女――いや、“おじさん”ばかりが注目される……)
リリアーナが隣でそっと囁く。
「殿下……いまこそ、王家の正義を示す時ですわ」
「……正義、か」
王子の瞳に憎悪と焦燥が交錯する。
「伝統派諸侯よ。次の王国評議会で――奴を断罪する」
会議室に低いざわめきが走り、やがて全員の視線が一つに集まった。
「殿下を旗印に、我らは結集する」
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だが同じ時刻――
城下の広場では、悪役令嬢おじさんが庶民相手に笑顔で健康講座を開いていた。
「おーっほっほ! 本日のテーマは“減塩生活”ですわ! 麦茶を持っている者は手を挙げなさい!」
「はい先生!」「はい!」「おじさん令嬢最高ーー!」
……その光景を、遠巻きに見つめる伝統派の密偵の影。
(――笑うがよい。だが次の評議会で、その笑みを奪い取ってやる)
嵐の前触れは、確実に迫っていた。
王子の私室。
分厚いカーテンが閉め切られ、灯されたランプの下に伝統派の面々が集まっていた。
「殿下。次の王国評議会では“公開討論”の形を取るのがよろしいでしょう」
「討論……?」王子は眉をひそめる。
老侯爵がうなずいた。
「健康国家などという妄言を、民の前で論破するのです。王家の威信を示す好機となりましょう」
リリアーナが目を輝かせた。
「素晴らしいですわ! 殿下が討論で勝利なされば、あの悪役令嬢おじさんは完全に失脚します!」
「ふ、ふはは……! そうだ! 公開の場で奴を叩き潰すのだ!」
王子は拳を握りしめ、勝利を確信するかのように笑った。
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だが、その頃。
城下の広場では――
「はい次〜! 塩分を控えるために味噌汁をどう薄める? 正解は“出汁を効かせる”ですわぁぁぁ!」
「「おじさん令嬢万歳ーー!!」」
大歓声が響き渡っていた。
子供から老人まで列をなし、悪役令嬢おじさんの健康講座に夢中になっている。
「殿下より頼りになる!」「おじさん先生の麦茶は奇跡だ!」
庶民たちの声援が波となって広がっていく。
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窓からその様子を見下ろしていた伝統派の密偵は、歯ぎしりした。
「……くっ、あれほどの人気……だが評議会で討ち滅ぼせば、民心も一気に揺らぐはず」
彼の瞳に宿るのは、燃えるような決意だった。
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王子の声が、再び部屋を震わせる。
「よいか! 次の評議会で必ずあの者を断罪し、王家の伝統を取り戻す!」
集まった貴族たちの声が一斉に重なった。
「「伝統派に栄光あれ!!」」
嵐の夜明けは、もうそこに迫っていた。
王城・玉座の間。
国王は豪奢な椅子に腰かけ、深いため息をついた。
「……うむ。最近、朝のスクワットで腰の調子は良い。だが……」
横で王妃が厳しい表情を浮かべる。
「陛下。“健康国家”などと軽々しく宣言して、本当に大丈夫ですの? 伝統派の動きが活発化していると聞いております」
国王は笑ってごまかそうとしたが、王妃は冷ややかに睨んだ。
「……余の腹囲は確かに減った。だが国の威信まで削れては本末転倒じゃな」
そのやり取りを、背後で控える近侍が耳打ちする。
「陛下。伝統派が次の評議会で“公開討論”を仕掛けるとの噂です」
「なに……討論会だと?」
王妃は眉をひそめた。
「健康など庶民の話題にすぎぬ、と突きつけたいのでしょう。ですが、陛下に代わって火の粉をかぶるのは――」
扉が勢いよく開かれた。
「おーっほっほ! 陛下〜、今日も血圧は測りましたかぁ〜?」
国王「……来たか」
王妃「……来てしまいましたわ」
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俺――転生悪役令嬢おじさんは、健康チェック票をひらひらさせながら玉座の間に入った。
「おーっほっほ! ストレス度合いと睡眠時間、ちゃんと記録してますわよね?」
「……うむ。だが今は少々取り込み中でな」
国王が困ったように笑う。
王妃がすかさず切り込んだ。
「あなた。伝統派が討論を仕掛けてきます。……それでもこの“おじさん令嬢”に任せるおつもり?」
場の空気が凍りつく。
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だが俺はにっこり笑って、麦茶の入った水筒を差し出した。
「ふむ……討論? おーっほっほ! ならば一杯の麦茶で勝負して差し上げましょう」
「な、何を言っているのだ……!」
王妃が目を丸くする中、国王は思わず吹き出した。
「ふぉっふぉっふぉ……やはり余にはお前しかおらぬな」
その瞬間、俺の耳にも確かに届いた。
――伝統派が評議会で待ち構えている、という噂を。
「……ふむ、とうとう来ましたか」
俺は肩を回しながらつぶやいた。
「おーっほっほ! この悪役令嬢おじさん、討論会でも全力で健康推しをいたしますわ!」
嵐の中心へ――俺は歩み出そうとしていた。
王都の中央議事堂。
普段は重苦しい議論の場だが、この日は異様な熱気に包まれていた。
「これより――公開討論会を開始する!」
学院長を兼ねる評議会長の声が響く。
片側には、王子とリリアーナ、そして伝統派の重鎮たち。
反対側には、ドレスの袖に血圧計をぶら下げ、堂々と立つ俺――転生悪役令嬢おじさん。
観客席は庶民と貴族でぎっしり埋まり、ざわめきが止まらない。
「今日は決着の日だ……」
「どちらが王国を導くのか……」
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最初に立ち上がったのは王子だった。
「民よ! 聞け! 王家の伝統こそが国家の礎! 健康など枝葉末節にすぎぬ!」
会場はどよめく。
リリアーナがすかさず続ける。
「わたくしは信じています! 正しき血統と魔力の強さだけが、この国を守るのですわ!」
「おぉぉぉ!」と伝統派の支持者が拍手を送る。
会場の空気が一瞬、彼らに傾いた。
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だが俺はすっと前に出て、にっこりと笑った。
「おーっほっほ! ではまず、この場にいる皆様……血圧は正常ですの?」
「……え?」
会場の空気が固まる。
俺は袖から血圧計を取り出し、堂々と掲げた。
「王家の伝統も結構。だが血管が詰まれば、王も民も同じように倒れるのですわ! 健康を軽んじる者に未来はございません!」
観客「「おぉぉぉぉぉ!!!」」
庶民たちの熱狂が一気に爆発する。
「やっぱりおじさん令嬢だ!」
「我らの保健師さまー!」
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伝統派の顔色が一斉に変わった。
だが王子は必死に叫ぶ。
「ぐっ……騙されるな! 健康など一過性の流行だ!」
その声は、麦茶を片手に盛り上がる観客の歓声にかき消されていく。
俺は血圧計を掲げ、宣告した。
「おーっほっほ! 本日の討論会――勝負の行方を決めるのは、“伝統”でも“魔力”でもない。“健康数値”ですわぁぁぁ!」
観客総立ち。
「「健康第一ーーー!!!」」
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こうして、公開討論会は嵐の幕開けを迎えた。
伝統と健康――その決着は、いよいよ目前に迫っていた。
皆さまごきげんよう、転生悪役令嬢おじさんですわ!
本日の講義テーマは――「マルチビタミン・ミネラルに潜む“キレート加工”の正体」。
◆キレートとは?
カニのはさみの「chele」が語源。ミネラル(金属イオン)をアミノ酸や有機酸が“がっちり挟んで”体内で安定させ、吸収されやすくする加工のことですわ。
◆代表的なタイプ
•酸化物/硫酸塩:一番安い。吸収率は低めだけど便通改善に効くケースも。
•クエン酸塩:胃に優しく、吸収もそこそこ。カルシウムやマグネシウムでよく使われます。
•グリシン酸キレート:高品質。吸収率が高く、消化器の負担も少ない。価格もそれなり。
•ピコリン酸塩:特に亜鉛で有名。吸収安定、研究報告も多い。
•アスパラギン酸/オロチン酸キレート:やや特殊。筋肉・エネルギー代謝をうたう製品で見かける。
◆まとめ
つまり――
「コスパ重視なら酸化物やクエン酸塩でもOK。
本気で“数値”を狙うならグリシン酸キレートやピコリン酸塩をチェック!」
おーっほっほ!
悪役令嬢おじさん的に言えば――
「婚約破棄より大事なのは、サプリの“裏ラベル”ですわ!」




