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王都健康博覧会、転生悪役令嬢おじさんに市民が群がる件

王都の中心広場。

いつもなら露店と大道芸でにぎわうこの場所が、今日は異様な空気に包まれていた。


「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 本日限りの――健康博覧会ですわぁぁぁ!!」


ドレス姿のまま拡声用の魔導具を握りしめ、広場に立つのはもちろん私、転生悪役令嬢おじさんである。



広場の両脇にはズラリと屋台。

片方には「高タンパク・低糖質おやつ」の屋台が並び、プロテインシェイク(バナナ味、チョコ味、謎の異世界ベリー味)が行列を作っていた。


「このバナナ味……もはや聖餐だ……!」

「いやチョコ派だろ! しかもWPIホエイプロテインアイソレートだぞ!」

「異世界ベリー味は……効く! 効いてる気がする!!」


市民たちは大騒ぎ。なんでこんなにプロテインで盛り上がれるんだ。



さらに広場中央には「握力測定台」が設置されている。

小さな子どもから老人まで列を作り、結果が魔導スクリーンに大きく映し出される仕組みだ。


「わ、わしは……32kgじゃと!? まだまだ若い者には負けんぞ!」

「やった! 平均超えだ!」

「……殿下が28kgだったって本当?」


最後の声で王子の顔がみるみる赤くなる。



別の一角では「シャトルラン大会」が始まっていた。

魔導具がピッピッと音を鳴らし、広場を駆ける子供たちの姿に、観客席は大盛り上がりだ。


「ドレス姿で走ってもいいんですの?」

「もちろん! 心肺機能は階級に勝る!!」


おーっほっほ! と笑いながら、私はついに王都を丸ごと「体力測定会場」に変えてしまったのだった。



観客席の一角。

王子とリリアーナは汗をかきながら必死に低い声で囁きあっていた。


「……なぜだ……なぜ王都までもが……」

「殿下、ここは……公開処刑ですわぁぁ……」


二人の嘆きは、熱狂する市民たちの声にかき消されていった。


「次の挑戦者! 王子殿下ーー!!」


司会役の学院生が声を張り上げると、会場中から大歓声が起こった。

だが王子本人は顔を引きつらせ、震える手で握力計を受け取る。


「お、俺は……王家の威信を見せる……!」

ギリギリギリ……


ピッ。


「……29kg」



シーン。


一瞬の静寂のあと、どっと笑いが広場を覆った。

「また平均以下だー!」「俺の方が強い!」

「殿下より祖母のほうが握力あるぞ!!」


王子「や、やめろぉぉぉ!!」



続いて、新ヒロイン・リリアーナが登場。

スカートを必死に押さえながら前屈台に立つ。


「こ、これも伝統派の威信を……!」

前屈するが――


ピッ。


「……マイナス4cm」


観客「床に届いてない!」「背伸びするどころか屈伸もできてない!」

「悪役令嬢おじさんの方が柔軟だぞ!!」


リリアーナ「ぐぬぬぬぬ……!」



さらに「シャトルラン部門」。

王子とリリアーナは並んで走り出すが、すぐに息が切れる。


「ぜぇ……ぜぇ……な、なんだこの地獄は……」

「ドレスが……重くて……」


ピッ。終了。

結果:王子21回、リリアーナ18回。


司会「平均未満ですーー!!」


広場は爆笑の渦。


「王家の権威が走りで沈んだぞ!」

「悪役令嬢おじさんに勝てる貴族などおらぬ!」



その頃、私は人混みの中央でドヤ顔を浮かべていた。

「おーっほっほ! 数値は嘘をつきませんわ! これぞ健康第一の証明ですわ!」


観客「悪役令嬢おじさん万歳ーー!!」


……いやいや、俺ほんとにいつの間にこんなカルト的人気キャラになったんだ?



壇上で顔を真っ赤にした王子とリリアーナは、唇を噛んで悔しそうに震えていた。

「なぜだ……なぜいつも……奴ばかり……!」


だが市民の視線は完全に「健康第一」の嵐。

もう二人を見ている者はいなかった。


「次の挑戦者……国王陛下!!」


司会の声に、広場は一瞬静まり――次の瞬間、割れんばかりの大歓声に包まれた。


「えぇぇ!? 父上ぇぇぇ!?」

王子の絶叫もむなしく、玉座からわざわざ降りてきた国王は、満面の笑みでステージに上がる。


「ふぉっふぉっふぉ! 余も“健康国家”の象徴として参加せねばなるまい!」



まずは腹囲測定。

助手が巻尺を当てると――


「……94cm!」


会場「メタボだーー!!!」

国王「むむむ、仕方ない……! 余は大食漢ゆえな!」

私「はい、今日から夜食はオートミールにチェンジですわ!」



続いてスクワット測定。

「余はまだまだ現役じゃあ!」と叫んで腰を落とした瞬間――


グキッ。

「ぬおおぉ!? こ、腰がぁぁぁ!!!」


会場「陛下ぁぁぁ!?」「スクワットで討ち死に!?」

私「おーっほっほ! 深く沈む必要はありませんわ! 浅めで太ももを意識して――はい、よくできましたわ!」


観客「悪役令嬢おじさん、完全にパーソナルトレーナーだぁぁ!!」



そのとき――。

「……ちょっと待ったぁぁ!!」


広場に鋭い声が響いた。

現れたのは王妃だ。


「国王陛下が鼻の下を伸ばして令嬢に指導されている姿を、民にさらすなど前代未聞!!」

「……す、すまぬ妻よ……ちょっと胸が当たって……」

「言い訳無用ぉぉぉ!!!」


会場「ぎゃははははは!!!」



私は思わず天を仰いだ。

(……いやこれ完全に、家庭内ドタバタを王都中に生中継してるだけじゃねぇか……)


だが、民衆はすでに熱狂の渦。

「健康国家万歳!」「王妃様も参加をー!」と叫び、会場の空気はますます燃え上がっていった。


「……もうこうなったら仕方ありませんわ!」

王妃がドレスの裾を翻し、壇上に立つ。


「わたくしも参加いたします! 余も国母として恥じぬ体力を示さねば!」


会場「おぉぉぉぉぉ!!!」



王妃が挑んだのは――まさかの反復横跳び。

ホイッスルが鳴ると、驚くほどキレのある動きで左右へ飛び始めた。


「いち! に! さん!」

観客「すごい! 王妃様が王子より敏捷だ!!」


王子「ま、待てぇぇ!? 母上が俺を超えるだとぉぉ!?」

リリアーナ「殿下ぁぁ、あああ……わたくしたちが霞んでいきますわぁぁ!!」



その瞬間、群衆の熱狂が最高潮に達した。

「悪役令嬢おじさん! 王妃様! 国王陛下! みんなで健康だぁぁ!!」

「スクワット! 握力! シャトルラン!」


まるで国歌斉唱のように、広場全体で合唱が始まった。

「握力は裏切らないー!」

「血圧は毎日測るー!」

「悪役令嬢おじさーん!!」



私はタオルで額の汗を拭いながら、頭を抱えた。

「……完全にお祭り騒ぎだな、これ。もはや婚約破棄とか誰も覚えてねぇだろ……」


だが――。


広場の喧騒の影で、黒衣の老人たちが密かに集まっていた。

「……伝統派は屈しぬ」

「次こそ、あの悪役令嬢おじさんを――葬る」


冷たい視線が、熱狂の渦を静かに貫いた。

「おーっほっほ! 本日のテーマは“塩”ですわ!」


さて皆さま、伝統料理といえば漬物、干物、塩漬け肉……古来より“保存”と“味付け”に欠かせぬのが塩ですわね。ですが――摂りすぎは血圧を直撃する、まさに伝統派の隠れた落とし穴でもありますの。

•食塩の基本

 塩1gには約0.4gのナトリウム。WHOの推奨は1日5g未満ですが、日本人の平均は約9〜10g。つまり皆さま、知らぬ間に“しょっぱい国民”ですの!

•塩の種類

 精製塩は99%以上が塩化ナトリウムで安価ですが、ミネラルは少なめ。

 海塩や天然塩はカリウムやマグネシウムを含み、味がまろやか。

 岩塩には鉄分やカリウムが含まれる場合もありますが、色がピンクだからといって全部天然ではないので要注意ですわ。

•減塩の工夫

 「減塩=味気ない」と思ったら大間違い! だし、酢、香辛料で旨味を補えば満足感は落ちません。

 加工食品には意外と塩分が潜んでいますので、ラーメンのスープを残す、漬物の量を減らす、そうした小さな工夫が大きな健康につながりますわ。

 さらに、カリウムを多く含む野菜や果物を一緒に摂ると、ナトリウム排出を助けるのでバランス調整も完璧。

•塩分と健康のバランス

 摂りすぎれば高血圧・脳卒中のリスク、不足すれば筋肉のけいれんや熱中症のリスク。つまり「少なすぎず、多すぎず」。

 伝統を尊びながらも、現代の知恵で量と質を見極める――これぞ真の淑女の嗜み、ですわ!


「おーっほっほ! 塩ひとつで国も人も揺らぐ……健康第一の悪役令嬢おじさんが保証いたしますわ!」

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