伝統派の逆襲、だが転生悪役令嬢おじさんが血圧計ひとつで場を支配する件
王城の大広間――。
重厚なシャンデリアの光の下、伝統派貴族たちがずらりと並んでいた。空気は硬く、張り詰めた緊張が場を覆う。
「……本日こそ、我らの声を陛下に届けねばならぬ」
「このままでは王国は健康狂信国に堕ちる……」
老侯爵を筆頭に、伝統派の重鎮たちが険しい顔を揃える。
壇上には王子とリリアーナ。二人は強張った表情で民を見下ろしていた。
王子は拳を震わせ、リリアーナは唇を噛む。
「……今日こそ、悪役令嬢を終わらせる」
「殿下、私たちの誇りを取り戻しましょう!」
伝統派の視線が一点に集まる。次に狙うはただ一人――転生悪役令嬢おじさん。
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「――おーっほっほ! お集まりですわね!」
大広間の扉を突き破るように、ドレス姿の俺が登場した。
片手にはタオル。そして、もう片手には……
「ピッ、ピッ……はい! 本日の血圧測定器、準備万端ですわ!」
観客席「えぇぇぇぇぇぇ!!?」
「ここは伝統派の公開演説会! なぜ血圧計なんだ!!」
「正気か、あの悪役令嬢は!」
伝統派の怒号が飛ぶ。だが俺は泰然自若。
むしろ笑みを浮かべて、ステップを踏むように壇上へ。
「皆さま、まずは落ち着きましょう! 怒りで血圧が上がると、動脈硬化のリスクが増えますのよ!」
「黙れぇぇ!!」
「そんな健康知識で誤魔化されてたまるか!」
しかし次の瞬間――
俺が血圧計を取り出すや否や、最前列の貴族が思わず口をつぐんだ。
「……で、でもちょっと気になるな」
「俺も最近、頭痛が……」
「わ、私も測ってほしいかも……」
伝統派の列がざわつく。
「見なさい! 血圧計ひとつで場は支配される!
さあ、伝統も婚約破棄もいいですけれど――まずは測定タイムですわ!」
会場「おぉぉぉぉぉ!!」
こうして“公開演説会”は――
開幕から“血圧健康フェスティバル”に姿を変えていったのであった。
「……ま、待て! これは伝統派の反撃の場だぞ!」
王子が声を張り上げる。しかしその声は、血圧計の「ピッ」という電子音にかき消された。
「はい、次の方〜。上が145、下が92ですわ。これは……軽度高血圧ですわね!」
「ひ、ひぃっ!? わ、わしが!? 塩分控えろと言われておるのに!!」
老侯爵が膝をつき、顔面蒼白になる。
その姿を見て、観客席からどよめきが起こった。
「侯爵様が……!」
「伝統派の大黒柱が、血圧で公開処刑されたぞ……!」
⸻
「ふぉっふぉっふぉ、よろしいではないか!」
国王が玉座で笑い出す。
「皆の健康は余の喜び。続けよ、悪役令嬢おじさん!」
「ははっ! 承知いたしました、陛下!」
俺は高らかに宣言し、血圧計を掲げた。
「次の方どうぞ! 王子殿下!」
「な、なにぃぃ!? なぜ私が測られるのだ!」
「殿下、拒否は健康逃亡と同じですわよ!」
観客「そうだそうだ!」
「逃げるな王子!」
追い詰められた王子は、震える手でカフを腕に巻いた。
ピッ……。
「……28歳にして、この数値……」
俺は真顔で告げた。
「上が128、下が80。ぎりぎりセーフですわ!」
会場「おぉぉぉ!!」
王子「セーフなのになぜ拍手が!?」
⸻
続いて新ヒロイン・リリアーナが立ち上がる。
「わ、わたくしは測る必要などありませんわ! 乙女は常に健康ですのよ!」
「いいえ、女性こそ鉄分不足や冷え性のリスクが高い。放置すれば将来の健康に直結しますわ!」
「ぐぬぬぬ……」
観客「測れ! 測れ!」
結局、リリアーナも渋々カフを巻いた。
ピッ……。
「……上が99、下が61。低血圧気味ですわね」
「そ、そんなはずありませんわぁぁぁ!!」
リリアーナは絶叫し、観客から笑いと同情の入り混じった声が上がった。
「悪役令嬢おじさん、完全に場を支配してる……!」
「伝統派の逆襲どころか、健康診断大会じゃねぇか!」
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そのとき、伝統派の重鎮が再び声を張り上げた。
「ふざけるな! こんな茶番に屈してなるものか!」
だが俺はすかさずタオルを翻して指差した。
「タバコの吸いすぎ、酒の飲みすぎ、そして睡眠不足――すべてお見通しですわ! さあ、血圧計へ!」
観客「おぉぉぉぉ!!」
「次は誰だ!? 誰が倒れる!?」
大広間は熱狂の渦と化していった。
「……やめろぉぉぉ!! これ以上、伝統派の威信を傷つけるなぁぁ!!」
老侯爵が叫び、杖を床に叩きつけた。
だが俺は冷静に、にっこり微笑む。
「侯爵。威信よりもまず健康ですわ。動脈硬化と心筋梗塞のリスクは……」
「や、やめろーーー!!」
観客席から失笑が広がる。
「伝統派って、意外と健康ボロボロじゃね?」
「悪役令嬢おじさんに診てもらった方が国が安泰だろ」
空気は完全に逆転していた。
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そこで王子が立ち上がる。
「待て! このままでは本当に伝統が崩壊する! 聞け皆の者!」
一瞬、空気が静まる。王子は必死に声を張った。
「悪役令嬢おじさんは――健康で民心を掴んでいる!
だが、伝統こそがこの国の柱だ! 健康など一時の流行にすぎん!」
観客「おぉ……!」
王子の言葉に、一瞬だけ伝統派の空気が戻る。
しかし――
「ふふ……」
俺はゆっくりと立ち上がり、ドレスの袖から一枚の紙を取り出した。
「王子。これは昨日あなたが食べた“菓子パン記録”ですわ」
「なっ!? なぜそれを!!」
「チョココロネ3本、クロワッサン2個、カスタードパイ1個……糖質過多ですわ!」
観客「ぎゃはははは!!!」
「王子、菓子パンで討ち取られたぞ!」
王子は顔を真っ赤にし、拳を握りしめた。
「くっ……やはりお前は悪魔だ……!」
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リリアーナが慌ててフォローに入る。
「そ、そんなものただの嗜好ですわ! 殿下はお強いのです! ね、殿下!」
だが、俺は容赦しない。
「リリアーナ様。あなたは昨日、ケーキを3切れ召し上がったでしょう?」
「なっ……なぜそれを……!」
「血糖値スパイク! 肌荒れリスク! 女性の美容にも致命的ですわ!」
リリアーナ「ぎゃあああああ!!」
観客「おぉぉぉ!! また討ち取られたぞ!」
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会場は大爆笑と熱狂の渦。
もはや誰も伝統派の威信など気にしていなかった。
俺は血圧計を高く掲げ、堂々と宣言する。
「見なさい! 数値は嘘をつかない! 健康こそ、王国の未来ですわ!」
観客「悪役令嬢おじさん万歳ーーー!!」
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王子は膝をつき、リリアーナも肩を震わせる。
(なぜだ……なぜいつもこの女ばかり……!)
そして――伝統派の逆襲は、血圧計ひとつで完全に粉砕されつつあった。
「……伝統派の敗北……か」
老侯爵が肩を落とし、杖にすがりながら呟いた。
その姿を見て、俺は一歩進み出た。
「いいえ、侯爵。敗北ではありませんわ。健康とは、伝統を守るための“基盤”なのですわ」
「き、基盤だと……?」
「そう。いかに剣を振るおうと、いかに知識を誇ろうと――体が壊れれば何も残りませんわ。
伝統も、誇りも、健康あってこそ守られるものですわ!」
観客「おぉぉぉぉ!!!」
「悪役令嬢おじさん、正論すぎる……!」
「もうこの国の首相やってくれよ!」
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だがその時。
玉座の国王が立ち上がった。
「よい、皆の者! 本日の評議はこれまで!
余は決めた――伝統も健康も両立させる! それが新たな王国の方針じゃ!!」
会場「おぉぉぉぉぉ!!!!」
国王は満面の笑みを浮かべて俺の方を指差した。
「悪役令嬢おじさん、余の“健康顧問”として、伝統派とも手を取り合え!」
俺「……また仕事が増える……」
(……まぁでも、健康で国が回るなら悪くないか)
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一方その頃、王子とリリアーナは柱の陰で悔し涙を流していた。
「なぜだ……なぜ我らの伝統は、いつも数値に敗れるのだ……」
「殿下……わたくし達は、次こそ……次こそ勝ちますわ……!」
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こうして――伝統派の逆襲は血圧計ひとつで粉砕され、
王国は“健康国家”としてさらに歩みを進めることとなった。
……いやだから、婚約破棄どこいったんだよ。
おーっほっほ! 皆さま、婚約破棄よりも恐ろしいものをご存知ですか?
それは――寝不足ですわ!
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世間では「早起きは三文の徳」と申しますけれど、実際の研究でも 朝型の人は太陽光のリズムと体内時計が噛み合いやすく、睡眠の質や代謝が安定することがわかっておりますわ。
朝に光を浴びると体内時計がリセットされ、メラトニン(眠気ホルモン)の分泌も整い、夜の眠りが深まりやすいのです。
一方で夜型生活、これが「必ず悪」というわけではございません。
遺伝的に夜型が強い方もおり、夜型そのものは病気ではなく体質ですの。
ただし現代社会は朝型に寄せたスケジュールで回っておりますゆえ、夜型の人はどうしても睡眠不足になりがち……これが健康リスクを高める要因になりますわ。
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ではどうすればよいか?
•朝型を目指す方は「起床後すぐ日光を浴びる」「寝る前はスマホのブルーライトを避ける」ことが大切。
•夜型の方は「無理に朝型に変えず、自分のリズムに合った時間で生活を安定させる」方がむしろ有効ですわ。
結論!
「早寝早起きが偉い」のではなく、
**“自分の体質に合ったリズムで、十分な睡眠時間を確保すること”**こそが最強ですわ!
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つまり悪役令嬢おじさん流に申しますと――
「婚約破棄より、睡眠破棄の方が人生に響きますのよ!!」




