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第44話 転生悪役令嬢おじさん、王都を健康博覧会に変える件

王都の大通り。

そこには、かつて見たこともない熱気が渦巻いていた。


「さあ寄ってらっしゃい! 新作プロテインバーだよ! 一本で肉十キロ分のタンパク質! 異世界初の“筋肉補給食品”だ!」


「いやそんなに入ってたら腎臓壊れるだろ……」

俺は屋台を素通りしつつツッコミを入れた。



見渡せば、通り中に並ぶのは屋台、屋台、また屋台。

だがどれも普通の食べ物ではない。


「オートミール団子、食物繊維たっぷり〜!」

「海藻チップス! 塩分控えめでカルシウム豊富だよ!」

「焼きそばパン? あぁ、低GI仕様に改良した健康版だ!」


子どもたちが「シャトルランごっこ!」と叫びながら往復ダッシュ。

商人たちが筋肉を誇示するかのように鍋を振るい、令嬢たちまで「まぁ! これでダイエットが捗りますわ!」と目を輝かせている。


「……なんだこれ。王都が丸ごと健康フェスになってるじゃねぇか」

俺は思わず頭を抱えた。



「おじさん令嬢様〜! プロテインシェイク飲んでって!」

元気な少年がカップを差し出してきた。中身は……カラフルな液体。


「何味だこれ」

「ブルーベリー&ほうれん草味!」

「……いや、組み合わせの暴力だろ」



そこへ庶民の母親がやってきて、俺に深々と頭を下げた。

「悪役令嬢おじさん様のおかげで、みんな健康を気にするようになりました。

 旦那も酒やめて、今じゃ早朝ジョギングに……」


「……いやいや、そこまで流行らすつもりじゃなかったんだが」

俺はため息をつきつつ、次の屋台の列に押し流されていった。


午後になると、王都の通りはさらにカオスを極めていた。


「見ろ! この“スクワット占い”! しゃがむ深さで未来がわかるぞ!」

「えっ!? 僕、浅めしかできない……」

「残念! お前の未来はヒラメ筋不足!」


「おい誰だそんな占い考えたのは!」

俺は遠くから全力でツッコんだ。



さらに広場の中央では――。

「プロテイン早飲み大会〜!」

「水分補給はこまめにね!」

「次はインターバル走チャレンジ!」


子どもも大人も貴族も商人も入り乱れ、王都全体が謎のスポーツフェス状態。

なぜか「握力計測コーナー」まで設置され、測った人々が真顔で数値を比べ合っていた。


「おいそこの商人、握力50とか言ってるけど、測り方間違ってるぞ」

「いや違うんだ、本当に出たんだ!」

「ならもう鍛錬兵に志願しろよ……」



と、そのとき。

「……一体これは何の騒ぎですの!?」

豪奢な馬車から降り立ったのは――王妃陛下だった。


群衆がどよめく。

「王妃様が……!」

「もしかして、この“健康博覧会”に興味を!?」


だが王妃の顔は険しい。

「健康、健康と浮かれて……ここは本来、王国の都! 由緒ある伝統の場でしょう!」


空気が凍りつく。

……と思いきや、誰かがぽつりと呟いた。

「でも、王妃様も血圧測った方がいいのでは……?」


群衆「そうだそうだ!」「健康は万人に必要!」



王妃の眉がピクリと動く。

「なっ……わ、わたくしの血圧など……!」


俺はすかさず血圧計を差し出した。

「さあ、どうぞ王妃様。学園も城も市場も、健康チェックの時代ですわ!」


王妃「……だ、誰がこんな時代にしたのですの!!」


視線が一点に集中する。

――そう、俺に。


「おーっほっほ! 婚約破棄より深刻なのは未病予防ですわ!!」

俺の高笑いが、王都に響き渡った。


「……やむを得ませんわね」

王妃は観衆の視線に押され、ついに袖をまくった。


「測るだけですわ。測れば、この愚かな流行も落ち着くでしょう」


俺はにっこり微笑んでカフを腕に巻く。

「リラックスして深呼吸を……さあ、いきますわ」


ピッ、ピッ、ピッ――。


表示された数値を見て、周囲がどよめいた。

「上が……145……」

「高い! 王妃様も実は隠れ高血圧!?」


王妃「なっ……!? そんなはずは……!」


庶民の母親がすかさず声を上げる。

「王妃様も! 塩分控えめ生活にご一緒しましょう!」

「まずは麦茶です! それから野菜スープを!」

「ほら! 低脂肪ヨーグルトどうぞ!」


次々に差し出される健康食品。

王妃は顔を真っ赤にして叫んだ。

「こ、これは健康の押し売りではなくて!?」



だが観衆の熱は止まらなかった。

「王妃様も健康ブームの仲間だ!」

「一緒にスクワットを!」

「いえ、まずはウォーキングからですわ!」


広場が大歓声に包まれ、まるで王妃歓迎セレモニー。

王都全体が「健康国家万歳!」の熱狂に支配されていた。



俺はタオルで汗を拭きながら、ぼそりと呟いた。

「……いや、俺はただ庶民の健康診断してただけなんだが」


その横で、王子とリリアーナが蒼白になっていた。

「父上に続き……母上まで……」

「王家の威信が……完全に健康測定で塗り替えられてしまいますわ!」


二人の嘆きをよそに、王妃はついに根負けして叫んだ。

「こ、こうなれば……余もスクワットに挑みますわ!」


観衆「おぉぉぉぉぉっ!!!」


……王妃まで参戦し、健康博覧会はさらなる混沌を極めていった。


王妃がスクワットを始めた瞬間、王都は爆発した。


「王妃様がしゃがんだーー!!」

「フォームが綺麗すぎる!」

「悪役令嬢おじさん直伝の動きだ!」


観衆は総立ち。貴族も庶民も入り混じり、広場は即席スクワット会場と化す。



「う、膝が……!」

「腰が悲鳴を……!」

「だが今やめたら王妃様に失礼だ!」


全員が汗だくで上下運動を繰り返し、もはや宗教的な熱狂。

市場の魚屋まで「サーモンはEPA・DHA豊富!」と叫びながらバーベル代わりに魚箱を持ち上げている始末。


俺は額を押さえて絶句した。

「……これ、もう健康ブームじゃなくて健康カルトじゃねぇか」



そこへ学院長が駆けつけ、顔を真っ青にして叫ぶ。

「や、やめろぉぉ! このままでは王都全体が筋肉痛で動けなくなるぅぅ!!」


だが遅かった。

「DOMS(遅発性筋肉痛)上等だ!」

「超回復こそ未来!」

群衆は意味不明の合唱を始め、広場は阿鼻叫喚と笑い声の渦。



その最中、王妃がふらりと立ち上がり、堂々と宣言した。

「余も今日から、毎朝スクワットを欠かさぬ!」


会場「おぉぉぉぉぉ!!!」


王子とリリアーナは肩を震わせ、涙目で叫んだ。

「なぜだ……! どうしていつもお前ばかり……!」

「わたくしたちの存在感が、どんどん消えていきますのにぃぃ!」



こうして王都は一日限りの「健康博覧会」で完全に狂乱した。

……いやほんと、婚約破棄どこいったんだよ。


俺は遠い目をしながら、麦茶を一口すすった。

「おーっほっほ! 婚約破棄より深刻なのは――寝不足とカフェインの摂りすぎですわ!」


コーヒーはただの嗜好品ではなく、実は健康と深く関わる飲み物。ここでポイントを解説いたしますわ。


覚醒作用


カフェインは脳のアデノシン受容体をブロックし、眠気を抑えて集中力を高めますの。朝の一杯は学業や剣術訓練前にぴったり! さらに運動パフォーマンスを高める研究報告もありますわ。


抗酸化作用


コーヒーに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールは強力な抗酸化作用を持ちます。血管や細胞を酸化ストレスから守る働きがあり、まさに“お茶会で飲む健康の盾”ですわ。


摂取量の目安


健康な成人なら、一日あたりカフェイン 400mg未満 が推奨されておりますの。マグカップのコーヒーなら3〜4杯程度。ただし体質や体重によって影響は違うので、自分の体と相談するのが肝心ですわ。


飲むタイミング


午後遅く(15時以降)は避けた方が無難。カフェインの半減期は5〜7時間(もしくはもっと)と言われ、夜まで残って眠りの質を下げる恐れがありますの。結局は翌日の体調に跳ね返りますわよ。


デカフェ&アレンジ


寝る前でもコーヒーを楽しみたい? そんな方にはカフェインレス(デカフェ)が便利ですわ! さらにシナモンや豆乳を加えると血糖値の急上昇を抑える効果も期待できますの。異世界ブレンドで王妃様にも大好評!



まとめると――「コーヒーは飲み方次第で味方にも敵にもなる」。

おーっほっほ! 婚約破棄は回避できませんが、不眠と胃もたれは回避できますわ!

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