隣国使節団の来訪、国際交流を――転生転生悪役令嬢おじさん、健康外交に変える件
王都の大通りにざわめきが広がった。
鎧に身を包んだ兵士たち、異国の旗を掲げた馬車。隣国からの使節団がついに到着したのだ。
「おーっほっほ! 異国の賓客をお迎えですわね!」
俺――悪役令嬢おじさんは、ドレスの裾を翻しながら胸を張った。
だが城門前で目にしたのは、既に健康ブームに染まった王都の姿。
屋台は「高タンパク串焼き」や「低GIパン」ばかり。
広場では市民たちが朝からスクワット大会を開いている。
使節団の団長は目を剥いた。
「……な、なんだこれは!? 市民が兵士のように鍛えているだと!?」
「いや違う! あれはただの体力測定週間だ!」
俺は慌てて取り繕うが、もう遅い。
観衆の誰かが叫んだ。
「見ろ! 悪役令嬢おじさんだ! 今日も血圧安定してますわ!」
「おぉぉぉぉ!!!」
市民大喝采。
使節団の視線が一斉に俺に突き刺さる。
団長「……彼女が、この国を動かしているのか?」
王子(小声で)「ぐぬぬ……また目立ちやがって……!」
国際交流の場は、いきなり“健康外交ショー”の様相を呈していた。
王城の大広間。
豪奢なシャンデリアの下、歓迎の宴が始まった――はずだった。
「さあ、異国の賓客に王国の伝統料理を……」
執事が蓋を開けた瞬間、使節団の表情が固まった。
「……これは……?」
皿の上には、脂ギトギトのロースト肉ではなく、鮭のグリルにブロッコリーと玄米。
さらに副菜は「低脂肪チーズとオートミールのサラダ」。
「おーっほっほ! 陛下直々に監修した“健康御膳”ですわ!」
俺が胸を張ると、国王も嬉しそうに頷いた。
「うむ! 今の王国は健康国家。客人にも体に良い食事を楽しんでもらわねばな!」
使節団の兵士が恐る恐るひと口食べる。
「……う、うまい……だが、何か物足りん……!」
「塩分控えめですので!」
俺は即答。
団長はこめかみを押さえた。
「なぜだ……なぜ歓迎の宴で“減塩”がテーマなのだ……」
さらに追い討ちをかけるように、隣の席で王妃が言い放った。
「食後にはもちろん……ヨーグルトですわ!」
「「ヨーグルト!?」」
異国の使節団はざわめいた。
だが市民代表たちは拍手喝采。
「さすが王家! 乳酸菌バンザイ!」
宴はもはや国際交流ではなく――健康セミナーと化していた。
晩餐が終わり、余興の時間。
楽師たちが楽器を構える――はずだった。
「さあ皆様! 立ち上がってくださいまし!」
俺がドレス姿でホイッスルを鳴らす。
「おーっほっほ! 本日の余興は――“スクワット外交”ですわ!」
会場「スクワット外交ぉぉ!?」
王国の廷臣たちは慣れた様子で立ち上がり、一斉にフォームを構える。
「下げてー! 上げてー!」
「いーち、にー、さーん!」
会場は統率された集団トレーニングの場と化した。
使節団の団長は額に汗を浮かべる。
「こ、これは……拷問か……?」
隣の兵士が呻いた。
「い、いや……だが、なぜか参加したくなる……!」
気づけば異国の兵士たちも真似をし、スクワットに加わっていた。
「ぬおおおお! 太ももが燃える!」
「殿下ぁ! 我らの国にこんな儀礼は存在しませぬ!」
俺は笑顔で宣言した。
「筋肉は国境を越えますわ! ここに真の“健康外交”が成立しましたの!」
観衆「うおおおおおぉぉぉ!!!」
王子は顔を覆い、リリアーナは叫ぶ。
「なぜまた注目を奪うのですのーーー!!」
国王は拳を掲げ、誇らしげに叫んだ。
「これぞ我が国の新たな伝統、“スクワット条約”である!」
使節団の団長は頭を抱えた。
「……本気で世界史に載るつもりか、この国……」
スクワットで全員の太ももが悲鳴を上げたあと、ようやく椅子に戻った。
会場の空気はぐったりしつつも、妙な一体感に包まれている。
使節団団長は咳払いをして、ようやく本題に入ろうとした。
「……そ、それでは改めて。我々が来たのは貴国との交易と同盟について――」
「交易ですわね? ではまず交換しましょう!」
俺が勢いよく机に取り出したのは――プロテインバーの束。
「これぞ我が国の新名物、“高タンパク栄養バー”! 一日一本で40gタンパク質ですわ!」
使節団「……交易って、こういう意味じゃ……」
さらに王妃が胸を張った。
「婦人方には“発酵乳酸菌ヨーグルト”を推奨しますわ。お肌と腸内環境に良いですの」
「わ、我々は農産物や鉱石の……」
団長が食い下がるが、国王が立ち上がった。
「よい! まずは健康こそ友好の礎! 武器よりも麦茶! 戦略よりもスクワット!」
廷臣たち「うおおおおぉぉぉ!!」
王子はついに頭を抱えた。
「外交の場が……完全に健康セミナーに……」
リリアーナは涙目で叫ぶ。
「殿下ぁぁ! 伝統が……伝統が死んでしまいますわぁぁ!」
だが、使節団の兵士の一人が静かに呟いた。
「……だが、確かに悪くない。体が軽い……心も晴れる……」
団長「な、何を言う!?」
「団長、我々もこの“健康外交”を取り入れるべきかもしれません」
会場は爆笑と驚きの渦。
王国の“健康国家”化は、とうとう国境を越えてしまう兆しを見せていた。
「おーっほっほ! 本日のテーマは“芋類”――庶民の胃袋を支える大地の宝石ですわ!」
芋といえば炭水化物のイメージが強いですが、実は種類によって栄養特性が異なりますの。
◆ じゃがいも(Potato)
・炭水化物源ながら ビタミンCが豊富。しかもでんぷんに守られているため、加熱しても壊れにくいのが特徴ですわ。
・カリウムも多く、塩分を摂りすぎたときの血圧コントロールに役立ちますわ。
・ただし揚げすぎればカロリー爆弾。フライドポテトは庶民を虜にする“悪魔の料理”ですわね。
◆ さつまいも(Sweet Potato)
・ 食物繊維とヤラピン(腸の蠕動を助ける成分)のおかげで、便通改善に優秀。
・β-カロテンも豊富で抗酸化作用も期待できますの。
・低GI食品なので血糖値が急上昇しにくく、間食にも適していますわ。
◆ 里芋(Taro)
・ぬめり成分の ガラクタンやムチン が特徴。胃腸を保護し、消化を助けますわ。
・カリウムも多く、生活習慣病予防に有用。
・低カロリーなので主食を減らして取り入れればダイエットにも貢献できますわよ。
◆ 実用ポイント
・芋類は基本的に腹持ちが良いので、菓子パン代わりに取り入れるとエネルギー安定。
・ビタミンCや食物繊維などの“おまけ効果”も期待できるのが最大の強み。
・ただし糖質は糖質。夜にドカ食いすると、悪役令嬢おじさんでも太りますわ!
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「つまり芋類は――庶民から王族まで支える万能食材!
婚約破棄より恐ろしいのは、フライドポテトの食べすぎによる血糖値スパイクですわよ!」




