転生悪役令嬢おじさん、王妃の美容健康審問に巻き込まれる件
王城の奥、きらびやかな「王妃専用サロン」。
磨き上げられた大理石の床、薔薇の香り漂う空間に、俺はなぜか正座させられていた。
「……さて、悪役令嬢おじさん」
王妃が優雅にティーカップを傾けながら、しかし瞳はまるで尋問官。
「あなたが陛下に“健康国家ごっこ”を吹き込んだと聞きましたわ」
「ごっこじゃないですわ! 健康は国政の柱ですわ!」
俺は必死に胸を張る。
だが王妃はふわりと笑い、すぐさま冷たい声に切り替えた。
「では問います。美容と健康、両立の秘訣とは何ですの?」
(うわ、これ完全にテストじゃん……!)
サロンの隅では国王が背中を小さく丸めて座っている。
「わ、我も同席させられておるのじゃ……」
彼の額には冷や汗。どうやら俺以上に恐れているらしい。
「さぁ、お答えなさい。肌に良い食材、髪を保つ栄養素、老化を防ぐ生活習慣……全部答えていただきますわ」
王妃がパチンと扇子を鳴らすと、侍女たちが一斉にメモ帳を取り出した。
(……マジか。これ、社交界の美容セミナーかよ……!?)
俺はごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「おーっほっほ! もちろんですわ! 美容の基本は“食・運動・睡眠”! そして――」
俺の「健康審問」講義が、いま始まろうとしていた。
「ではまず――お肌のハリを保つには?」
王妃がすかさず問いを投げてきた。
俺は指を立てて答える。
「コラーゲンだけに頼るのは間違いですわ! ビタミンCで合成を助け、タンパク質で土台を作り、睡眠で修復……これが正解ですの!」
侍女たち「おぉぉ……!」
国王「そ、そうだったのか……余はコラーゲンサプリだけで済ませておった……」
王妃「静かになさい陛下」
(なんで俺が講師で国王が生徒なんだよ……)
王妃は間髪入れず次の質問を投げる。
「では髪の艶には?」
「タンパク質はもちろん、鉄分と亜鉛ですわ!」
俺は胸を張って言い切る。
「髪はケラチンでできております。亜鉛不足は抜け毛の原因ですわ! ……あ、陛下、そこの前髪、ちょっと薄――」
「やめんかぁぁぁぁ!!」
国王が泣きそうな声を上げ、王妃の扇子がピシャリと机を叩いた。
「次!」
質問は止まらない。
「冷え性対策は?」
「血行改善、鉄分摂取、ストレッチと入浴ですわ!」
「便秘には?」
「食物繊維と発酵食品、そして水分ですわ!」
「アンチエイジングには?」
「適度な有酸素運動! 活性酸素を溜め込まない生活ですわ!」
侍女たち「メモが追いつかない……!」
王妃「ふむ……悪くありませんわね」
だが――王妃の目は、さらに鋭さを増していた。
「最後の問いです。美容と健康、そして――淑女の気品を両立させる方法とは?」
俺「……え?」
(え、それって……おじさんに一番向いてないやつじゃん!?)
「さぁ、お答えなさい。美容も健康も大事ですが――“淑女の気品”を失えばただの筋肉娘。
それでは悪役令嬢とは呼べませんわ」
王妃の目が細く光った。完全に「最終試験」の空気だ。
「気品……? いや、俺にそんなもの――」
思わず素が出そうになった瞬間。
「お嬢様ぁぁぁ!!」
唐突に割り込んできたのは、執事セバス。
「ですわ口調を忘れておりますぞ! ここは“気品ある悪役令嬢”らしく振る舞うのです!」
「そ、そうでしたわね! おーっほっほ!」
慌てて姿勢を正す俺。
王妃はさらに追い詰めるように微笑む。
「では淑女らしい所作で、健康指南を披露なさい」
「こ、こうですわ!」
俺はドレスの裾を摘み上げ、優雅ぶってお辞儀。
「淑女は……水分補給も上品に。ストローでちゅーっと、こまめに参りましょう……!」
会場(侍女たち)「ちゅーっと!? 全然気品ない!!」
王妃「ふふ……まだまだですわね」
鋭い一言に背筋が凍る。
国王は横で吹き出していた。
「ぷはっ! 悪役令嬢おじさんよ、気品よりも芸人の才があるぞ!」
「黙らっしゃい陛下!」
王妃の扇子が王の額をピシャリ。
その音が、処刑の鐘のように重く響いた。
(やばい……これ完全に、王妃様の“美容健康裁判”じゃねぇか……!)
だがこの緊張感の中、俺の中に妙な闘志が芽生えていた。
(気品……健康……なら両方まとめて証明してやる!)
「ならば――見せていただきましょう」
王妃は扇子を閉じ、鋭い眼差しで俺を見据えた。
「淑女の気品と健康の両立、その真髄を」
(……出た、ラスボス級の要求!)
俺は深呼吸し、ドレスの裾を整える。
「おーっほっほ! わたくしが示しますのは、“気品あるスクワット”ですわ!」
王妃「……は?」
侍女たち「えぇぇぇぇぇ!?!?」
俺はしとやかに背筋を伸ばし、膝を滑らかに曲げ――
まるで舞踏会の一礼のように腰を落とした。
「見てくださいまし! これはただの筋トレにあらず! 美しい姿勢を保ちながら体幹を鍛え、淑女の品格と健康を同時に得られる“ロイヤル・スクワット”ですの!」
侍女たち「おぉぉぉぉ!!」
国王「わ、我も真似するぞ!」
(ガクッ)→膝から崩れる
「陛下はまだ浅めで! はい、太ももを意識して〜」
完全に俺はトレーナー。王妃は額に青筋を立てている。
だが――。
「……確かに姿勢は美しい。筋力だけでなく、淑女の所作を融合させるとは……」
王妃の声がわずかに和らいだ。
俺は勝ち誇るように笑う。
「おーっほっほ! つまり、美と健康は両立可能! 悪役令嬢おじさんに不可能はありませんわ!」
観衆(侍女たち)「万歳ーー!!」
国王はヘロヘロになりながらも拍手。
「ふぉっふぉっふぉ! これぞ王国の未来じゃ!」
王妃はため息をつき、肩をすくめた。
「……仕方ありませんわね。とりあえず、合格です」
(やった……! 王妃チェックを突破した!!)
――だが俺は気づいていなかった。
王妃の背後で、王子とリリアーナが怒りに燃える目をしていたことに。
(……次の戦場は、社交界かもしれん……!)
こうしてまた一つ、俺の伝説が積み上がったのであった。
おーっほっほ! 本日の講義は「キノコ類」ですわ!
「しいたけ」「舞茸」「しめじ」「えのき」……庶民の台所に並ぶあの子たち、実は侮れませんの。
まず注目すべきは ビタミンD。
しいたけや舞茸は、日光に当たるとエルゴステロールがビタミンDに変換されます。これが骨や免疫の健康を支えるのですわ。特に冬は日照不足でビタミンDが足りなくなりやすいので、干ししいたけは最高の保存食&栄養補給源ですわよ。
次に βグルカン。
舞茸やしいたけの細胞壁に多く含まれる食物繊維で、免疫細胞を活性化し、腸内環境の改善や感染防御に役立つと研究で示されておりますわ。おーっほっほ! つまり「風邪の季節こそキノコ」なのですの。
さらに グルタミン酸やイノシン酸といった 旨味成分。
これは「美味しさ」だけでなく、減塩食を続けるときの強い味方です。旨味で満足感が得られるので、塩分を控えても「物足りない感」が薄れるのですわ。血圧対策にも有効!
そして忘れてはならないのが 低カロリー高栄養。
ほとんどが水分ですが、食物繊維とミネラルを含むので、ダイエット中のボリューム調整にも最適。まさに「ヘルシー界の縁の下の力持ち」ですわ!
――まとめると、
・ビタミンDで骨と免疫を守る
・βグルカンで腸と抵抗力を強化
・旨味成分で減塩生活をサポート
・低カロリーで腹持ち◎
……ということで、悪役令嬢おじさんからの健康宣言。
「キノコ食べて、華麗にアンチエイジング!」
おーっほっほ!




