悪役令嬢おじさん、社交界お茶会を健康討論会に変える件
煌びやかな大広間。
今日は名門貴族たちが集う社交界――その華やかな舞台に、決戦の場が整っていた。
「本日のお茶会では、健康派と伝統派の意見を公開討論していただきます」
司会役の大公が高らかに宣言する。
「ふふ……ようやく正面から叩き潰せますわ!」
リリアーナが気合たっぷりにティーカップを掲げる。
「殿下、今日こそ悪役令嬢おじさんを葬り去りましょう!」
王子も鼻息荒く頷く。
「うむ! 伝統の砂糖菓子とワインで、この社交界の正義を取り戻す!」
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俺はドレスを翻し、余裕の笑みを浮かべた。
「おーっほっほ! 健康国家顧問の名にかけて、受けて立ちますわ!」
卓上には――
・全粒粉の低GIケーキ
・ギリシャヨーグルトにベリーを添えた一皿
・そして大量のハーブティー。
観客(貴族たち)「……な、なんだこの“健康カフェ”みたいな品揃えは……?」
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リリアーナは勝ち誇ったように銀皿を示した。
「ご覧なさい! これこそ社交界の伝統、砂糖菓子の塔! 一口で気品と甘美を示す絶対の証ですわ!」
「しかもこちらは王家特製の濃厚ワイン! 百年の伝統を守る逸品!」
王子が誇らしげにワイングラスを掲げる。
貴族たち「おぉぉぉ!」
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俺はカップを掲げ、冷ややかに言い放った。
「……ですが、その砂糖。血糖値を急激に上げ――“血糖値スパイク”を招きますわ!」
観客「おぉっ……!?」
「しかもアルコールは睡眠の質を下げ、翌日の集中力を奪いますわ!」
「な、なんだと!?」
ざわめく廷臣たち。
リリアーナは顔を赤らめ、声を荒げた。
「う、うるさいですわ! これこそ王家の誇り! 砂糖とワインの輝きに勝てるものなどありませんわ!」
俺はにやりと笑って、スプーンをすくった。
「こちら、オートミールベースのレアチーズケーキ。低GIで腹持ちよし、しかも腸内環境改善の食物繊維つきですわ!」
観客「おぉぉぉ!!」
「さらにこちら、カモミールティー! 睡眠の質を高め、ストレスを和らげる効果が期待できますの!」
観客「健康第一ーー!!」
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会場は一気に健康派と伝統派に二分された。
「砂糖こそ気品!」「いや麦茶のほうが血圧にいい!」
「ワインだ!」「ノンアル発酵飲料を推せ!」
……大広間は、社交界のお茶会どころか健康討論会に。
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俺は王子を真っ直ぐに指差した。
「殿下、あなたの威信はもはや数値で暴かれましたわ! 握力28kg、体力測定は平民以下! ここで健康を学ばねば王国は滅びますわ!」
「だ、黙れぇぇぇ!!」
顔を真っ赤にした王子が砂糖菓子を振りかざす。
「砂糖タワーこそ正義だ!」
俺は堂々と立ち上がり、胸を張って宣告した。
「よろしい。ここにいる全員で――血糖値測定大会をいたしましょう!」
会場「うおぉぉぉ!!」
こうして王家主催のお茶会は、史上初の「公開健康診断」に変貌したのであった……。
血糖値測定の結果、王子もリリアーナも高い数値を叩き出して会場がざわめく。
観客「……殿下の血糖値が……」
観客「王家は民に健康を示すべき存在なのに……」
廷臣たちは顔を見合わせ、囁き合う。
「これは……王家の威信を揺るがしかねんぞ」
「健康国家派に主導権を奪われる……」
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王子は必死に声を張る。
「ま、待て! これは一時的な結果にすぎぬ! 伝統こそ我らの誇り!」
だが誰も頷かない。
むしろ「伝統より健康を」と叫ぶ声が大きくなる。
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その空気を裂いたのは――一人の重鎮。
「王子殿下。もはや民心は健康派に傾いておりますぞ」
会場が静まる。
彼は長年王家を支えてきた老侯爵で、保守派の象徴でもある人物。
「伝統を守るのは良い。しかし、伝統が民を苦しめるなら、それは害悪に過ぎぬ。殿下、今こそ己を変えるべき時ではありませぬか」
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リリアーナは涙目で叫ぶ。
「で、ですが……わたくしは殿下と共に歩むためにここに……!」
その姿を見ても、王子は答えられなかった。
拳を震わせ、俯く。
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俺は胸の奥で思う。
(……笑って騒いでいるけれど、この国の“伝統 vs 健康”の対立はもう引き返せない)
ギャグの裏に――確かな緊張が生まれていた。
会場中央に並べられた簡易測定器。
俺はにっこり笑って言い放った。
「では皆さま――公開血糖値測定大会、開幕ですわ!」
観客「うおぉぉぉぉ!!」
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最初に測ったのは王子。
「ふん、こんな遊戯に意味はない!」と強がって指を差し出す。
ピッ。
結果表示:185mg/dL
観客「…………」
「え、高っ」「もう糖代謝やばくない?」
王子「な、なに……!? これは誤作動だろう!」
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次はリリアーナ。
「わ、わたくしは……甘味で優雅さを示すのですわ!」
震える指を差し出す。
ピッ。
結果表示:172mg/dL
観客「…………」
「ヒロインなのに……!」「血糖値もヒロイン補正効かねぇ……」
リリアーナ「そ、そんなはずはありませんのに!」
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俺は落ち着いて自分の数値を示した。
ピッ。
結果表示:98mg/dL
観客「……正常値だ……!」
「悪役令嬢おじさん、まさかの健康エリート!」
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ざわめきはすぐに変質する。
「殿下の威信が……」「王家の体面が崩れる……」
「伝統を守るといいながら、この結果では……」
廷臣たちの目が冷たく王子に向く。
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王子は必死に叫ぶ。
「ま、待て! これはたまたまだ! 王家の伝統は永遠なのだ!」
だが、その言葉に頷く者はいなかった。
むしろ「健康派の方が未来を示している」とささやく声が強まっていく。
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その時、一人の老侯爵がゆっくりと立ち上がった。
「……殿下。余も長く王家を支えてきたが、民心は既に変わりつつある」
「な、何を……」
王子の声が震える。
侯爵は重く言い放った。
「伝統を守るのは良い。だが伝統が民を蝕むなら、それは害悪に過ぎぬ。
殿下、変わらねばならぬのは――あなた自身だ」
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会場は静まり返った。
王子は拳を握りしめ、唇を噛む。
隣でリリアーナが涙声で叫んだ。
「殿下! わたくしは殿下と共に……!」
だが王子は、何も言えなかった。
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俺は胸の奥でため息をつく。
(……茶番みたいに始まった討論会だけど、この国の“健康 vs 伝統”はもう引き返せない)
ギャグの仮面を被った社交界の夜。
だがそこに漂う緊張は――確かに本物だった。
「おーっほっほ! 本日も健康講義の時間ですわ!
テーマは―― マルチビタミン・ミネラル(MVM)とリアルフードの関係。
さあ椅子に腰掛けて、血圧を測りながらお聞きなさい!」
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まず、MVMの利点
•不足しやすい栄養を一気に補える:鉄、亜鉛、ビタミンDなど、現代人が食事で足りにくいものを即カバー。
•数値で管理できる:パッケージを見れば「鉄10mg」「ビタミンC100mg」と明確。
•携帯性と手軽さ:外食続きでも一粒飲めば最低限は安心。
「つまり“保険”ですわ。ちょうど王国の医療費控除みたいなものでしてよ!」
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では、MVMの不利な点
•相互作用がない:リアルフードにはポリフェノールや食物繊維などが同時に入っているけれど、サプリは分離された成分だけ。
•過剰摂取のリスク:ビタミンAや鉄は“摂りすぎると毒”になる。
•長期効果は不明:大規模研究でも「欠乏を防ぐ効果」はあっても、「寿命を延ばす」や「病気を減らす」は一貫して証明されていない。
「要するに、飲めば無敵ってわけじゃありませんのよ」
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一方、リアルフード(食事)の利点
•複合効果が働く:オレンジならビタミンC+食物繊維+フラボノイド。魚ならタンパク質+DHA+EPA。
•未解明の成分が多い:まだ科学で解明されていない“微量成分”も健康に効いていると考えられている。
•生活習慣と直結:食事そのものが腸内環境や代謝改善に関わる。
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リアルフードの不利な点
•不足しやすい栄養素がある:特にビタミンD(魚不足)、鉄(女性)、カルシウム(乳製品不足)、亜鉛(肉や魚不足)。
•完璧を目指すのが難しい:毎日バランス良く揃えるのは、現代生活では至難の業。
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総まとめ
•基本はリアルフード → バランスよく食べる。
•MVMは補助 → 不足しやすい栄養をカバー。
•両方を上手に組み合わせるのが正解。
「おーっほっほ! つまりですわね、食事は城の守備兵。MVMは援軍。
どちらかだけでは国を守れませんの!
健康国家を築くには――両方が必要ですわ!」




