婚約破棄転生悪役令嬢おじさん、お茶会でライバル令嬢に減塩指導する件
「まあまあ、ようこそお越しくださいましたわ、皆さま」
薔薇が咲き乱れる庭園。白いテーブルの上にはティーセットと焼き菓子。
今日は貴族令嬢たちが集う、華やかなお茶会だ。
普通なら、この場で悪役令嬢が優雅にふるまい、他の令嬢をいびり倒すのが定番……
だが、俺はすでに砂糖の量を見て頭を抱えていた。
「おいおいおいおい。角砂糖三つ!? お前それ一日の推奨摂取量超えるぞ!」
「……は?」
令嬢Aがカップを持ったまま固まる。
「甘いもんはたまにだから美味いんだよ。毎日やってたら血糖値クラッシュすっぞ。インスリンなめんな」
「い、インス……何を言ってらして?」
令嬢Bが青ざめる。
俺は椅子にもたれて腕を組み、紅茶をぐびりと飲み干した。
「まあまあ落ち着け。砂糖を減らす代わりにハチミツにするとか、あと運動もしろ。散歩でもいい」
「な、何故この場で健康指導を受けているのかしら……!」
「悪役令嬢に説教されるのは覚悟してきたのに、まさか生活習慣病のリスクを突きつけられるなんて……!」
庭園に集まった令嬢たちがざわつく。
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そこへ、王子の隣に座る新しい婚約者候補――華やかなドレスの少女が、挑発的に笑った。
「フフ……やはり“悪役令嬢”はお下品ですこと。健康? 減塩? そんな庶民の話題、社交界には不要ですわ」
お、来たな。
本来ならここからマウント合戦だろう。だが俺の返答はひとつ。
「庶民とか関係ねぇ! お前、今すぐ健康診断受けろ! その生活じゃ将来ガタが来るぞ!!」
「な、なによそれぇぇぇぇぇ!?」
令嬢たち「草」
「庶民だの貴族だの関係ねぇ! 生活習慣病は誰にでも平等に来るんだよ!!」
俺のドスの効いた説教に、庭園が凍りつく。
普通なら「婚約者を侮辱したわね!」とか剣呑な展開になるはずが……
「……生活習慣病……?」
「減塩……糖分……運動不足……」
令嬢たちは妙に真剣にメモを取り始めていた。
「な、何をしているのあなたたち!」
王子の新しい婚約者候補が声を張り上げる。
「健康談義なんて無意味ですわ! 美しさは生まれつき、血筋で決まるのです!」
「違ぇよ」
俺は堂々と立ち上がり、指を突きつけた。
「美は血筋じゃねぇ! 内臓から来るんだよ!!」
「な、内臓!?!?」
「ビタミン不足の肌は荒れる! 寝不足の目はくまになる! 甘いもん食い過ぎればニキビ一直線だ! お前ら貴族だろうがなんだろうが同じだ!」
「ぐ、ぐぬぬ……!」
新婚約者候補のドレス姿がわなわな震える。
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令嬢Cが震える声で手を挙げた。
「あ、あの……ウォーキングは一日何分くらいがよろしいのでしょう……?」
「いい質問だ! 20分でいい! できれば朝にやれ! 代謝が変わる!」
「わ、わかりましたわ!」
パチパチパチパチ――
気づけば会場は拍手喝采。
お茶会は完全に「健康講習会」に化けていた。
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「ふざけるなぁぁぁ!!」
新婚約者候補が涙目で叫ぶ。
「悪役令嬢のくせに、なぜ皆から慕われているのですか!?」
「慕われてるんじゃねぇ。健康に目覚めただけだ」
「クソぉぉぉぉぉ!!」
彼女の悲鳴を背に、俺は涼しい顔で紅茶を一口。
「……この紅茶、減塩クッキーが欲しくなるな」
庭園は爆笑に包まれた。
「おーっほっほ! 本日のテーマは“砂糖”ですわ!」
お茶会の角砂糖三つに驚いた方も多いでしょう。
砂糖は甘美な誘惑ですが、摂りすぎれば生活習慣病のリスクを高める魔物。
悪役令嬢おじさん、ここでもう少し詳しくご説明いたしますわ!
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◆ 摂取目安
・WHOの推奨は 一日の総エネルギーの5%未満。
(成人なら角砂糖にして約6個が上限ですの!)
・清涼飲料水やお菓子を合わせると、すぐにオーバーしてしまいますわ。
◆ 過剰摂取のリスク
・血糖値の急上昇と下降 → 倦怠感や集中力低下につながりますの。
・インスリン過剰分泌 → 内臓脂肪の増加、糖尿病リスクアップ。
・虫歯の原因にも直結!
◆ 上手な付き合い方
・甘味は 果物や蜂蜜など、自然の甘さで代替。
・お茶請けは ナッツやドライフルーツで満足感アップ。
・運動と組み合わせれば、糖の利用効率が向上しますわ。
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「つまり――砂糖は“悪役”にも“ヒロイン”にもなりうる両刃の剣。
おーっほっほ! 悪役令嬢おじさん、次回は“朝食こそ一日の運命を決める”を語りますわ!」