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転生悪役令嬢おじさん、敗北寸前の王子をなぜか庇う件

社交界は健康派の大勝利で幕を閉じた。

だが――王子クラウディオの顔は青ざめ、視線は泳いでいた。


「な、なぜだ……! 魔力も甘味も……すべて通じぬ……」

その姿は、もはや王族の威厳ではなく、糖に依存して敗れた青年のものだった。



廷臣たちがざわめく。

「王子失墜か……」

「次代は健康派の悪役令嬢おじさんに……?」

そんな噂が広がり、王子の足元はガラガラと崩れ落ちていく。


リリアーナが必死に抱きしめる。

「殿下! 私がいますわ! でも……皆の目が……」

涙目で震える新ヒロイン。



その空気を、俺は見ていられなかった。


「――おい、やめろやめろ」

ドレスの裾を翻し、俺は堂々と前に出る。


「確かに王子は負けた。だがな……俺だって、前世で何度も健康診断で“要再検査”食らったぞ。

 弱さや失敗があってこそ、人は学ぶもんだろ」


観衆「……?」



俺は続ける。

「いいか諸君! 確かに婚約破棄された俺は今、健康令嬢として持ち上げられてる。

 だが王子は王子なりに必死に“自分の正義”を守ろうとした。

 それをただ笑って潰すのは違うだろう!」


セバス「お嬢様……珍しく正論を」



観衆のざわめきが変わる。

「……確かに」「王子も努力していたのだな」

「まあ血糖値は高かったけど」


王子は顔を上げる。

「な、なぜ……お前が俺を庇う……?」


俺はふっと笑った。

「簡単だ。俺はおじさんだからな。

 人がズッコケてると、つい“まあまあ”って声かけたくなるんだよ」



広場に沈黙が落ち――やがて拍手が湧き上がる。


「悪役令嬢おじさん、懐が深い!」

「王子もこれから健康修行だ!」

「学園史上初、婚約破棄から友情が芽生えた瞬間だ!」



だがリリアーナは泣き叫ぶ。

「いやですわぁぁ!! これでは私が完全に噛ませ犬ですのにぃぃ!!!」


観衆「ぎゃはははは!!」



こうして王子は完全敗北しつつも、かろうじて社会的立場を失わずに済んだ。

そして――婚約破棄劇は新たな局面へ。


王子はまだ信じられないという顔をしていた。

「……俺を庇うだと? 婚約破棄されたお前が?」


俺は肩をすくめて言った。

「庇うってよりな、“これ以上やられたら見てる側が気まずい”ってだけだ」


観衆「うわぁ……確かに……」

「悪役令嬢おじさん、妙にリアルな理由……」



だがここで一人、貴族の老人が立ち上がった。

「王子! このままでは体制が揺らぐ! もはや健康派に屈するしか……」


「ちょ、待て! そう簡単に屈してたまるか!」

王子は必死に叫ぶが、横でリリアーナが泣き崩れている。


「殿下ぁぁ……わたくしたち、甘味党はもう……支持者が……」


群衆は完全に“健康派 vs 伝統派”の対立モード。

握力派閥、ビタミン派閥、オートミール党……。

まるで国会がそのままフィットネスジムに転生したかのようだった。



セバスが耳打ちする。

「お嬢様、このままでは“政局”に発展しかねません」


「いやいやいや……俺そんなつもりじゃ……」

俺は額を押さえた。



だが観衆の流れは止まらない。


「悪役令嬢おじさんを新たな王に!」

「いや“健康大臣”にすべきだ!」

「むしろ学院長を超えて国家主席に!」


「やめろやめろ! 俺はただ婚約破棄されただけだっての!」



王子はついに観念したように肩を落とした。

「……お前は……俺を庇ったつもりかもしれないが……

 結果的に俺はさらに惨めになっただけだぞ」


俺「……あ、すまん」

観衆「ぎゃはははは!!」



こうして――

王子の威信はズタズタ、甘味党は風前の灯火。

だが“婚約破棄劇”は、ますます健康派の狂騒に呑まれていったのであった。


社交界での騒ぎは瞬く間に王都全体に広まった。


「聞いたか? 悪役令嬢おじさんが王子を庇ったらしいぞ!」

「だが結果的に王子の立場はさらにヤバくなったらしい!」

「むしろおじさんの株が爆上がり!」


市場では野菜や鶏胸肉が飛ぶように売れ、砂糖業者は青ざめていた。



王宮会議室。


重鎮たちが頭を抱える。

「……このままでは“健康党”が台頭し、王家の権威が揺らぐ」

「いっそ悪役令嬢おじさんを取り込むべきでは?」

「いや! 彼女を放置すれば王家を乗っ取られるぞ!」


その真ん中で王子はうなだれていた。

「……なぜだ……なぜ俺の婚約破棄が、国政の危機にまで発展しているんだ……」



一方その頃、俺は学院の中庭でストレッチ講座を開いていた。

「おーっほっほ! 呼吸を整え、肩甲骨を寄せるのですわ!」


生徒たち「はい先生ーー!!」


セバス「お嬢様、すでに“学院長”を超えております……」



その場に乱入してきたのは――ボロボロの王子だった。


「……おい……お前……」

「ん? なんだ王子。血圧計なら貸すぞ」


「違う! 俺は……もう後がないのだ!

 次の学園評議会で、お前を“健康専制独裁者”として弾劾してやる!!」


観衆「えぇぇぇぇぇ!!?」



俺は思わずため息をついた。

「……いやだから婚約破棄どこいったんだよ」


本日の社交界バトル、派手に見えても裏テーマは「ストレス管理」でしたわ!

ここで少し真面目に――ストレスの科学と対処法をまとめます。



ストレスとは?

•ストレスとは「体や心にかかる負荷」で、脳が自律神経やホルモンを通じて反応するものです。

•短期的には集中力や免疫力を高める役割もあるが、慢性的に続くと高血圧・糖尿病・うつ病などリスクを上げることが多数報告されています【McEwen, 1998, Annals of the NY Academy of Sciences】。



科学的に有効なストレス対処法

1.運動

•有酸素運動や軽い筋トレは、コルチゾール(ストレスホルモン)を下げ、抗うつ効果があると報告されています【Salmon, 2001, Clin Psychol Rev】。

2.睡眠の最適化

•睡眠不足はストレス反応を悪化させる一方、十分な睡眠はストレス耐性を高めることが知られています【Meerlo et al., 2008, Sleep Medicine Reviews】。

3.呼吸法・マインドフルネス

•ゆっくりとした呼吸や瞑想は交感神経を鎮め、副交感神経を優位にする=リラックス状態に導きます【Brown & Gerbarg, 2005, J Altern Complement Med】。

4.社会的つながり

•人との会話や支え合いはストレス緩和に強力。孤独は逆にストレス悪化因子になると多くの研究で示されています。



Wim Hof メソッド(WHM)の学術的知見


最近注目されているのが Wim Hof Method。

内容は「呼吸法・冷水浴・意志の集中」の3要素で構成されます。

•炎症の抑制

WHM実践者はアドレナリンの急増とともに抗炎症性サイトカインIL-10の増加を示し、内毒素に対する炎症反応を抑制できたという実験結果があります【Kox et al., 2014, PNAS】。

•自律神経のコントロール

呼吸法+冷水暴露で通常は自律的にしか働かない交感神経を意図的に刺激できる、と報告されています【Kox et al., 2012, PNAS】。


ただし、「万能薬」ではありません。

レビュー研究では、効果はある程度期待できるがまだ長期的な臨床エビデンスは不足しており、安全に配慮しつつ“補助的”に使うのが現実的とされています【Polizzi & D’Cruz, 2023, Frontiers in Physiology】。



まとめ

•ストレスは「短期的には役立つが、慢性化すると体を壊す」もの。

•対処の基本は 運動・睡眠・呼吸法・人とのつながり。

•Wim Hofメソッドはその一助になる可能性があり、炎症や自律神経への影響は論文で確認されている。


――つまり、王子の“糖スパイク”より大事なのは、毎日の呼吸と休養ですわ!

おーっほっほっほ!


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